『電脳コイル THE COMICS』久世みずきインタビュー

『電脳コイル THE COMICS』久世みずきインタビュー

■久世みずきの、マンガの作り方

――少しマンガの技術的な話をしていくと、久世さんの描かれるマンガは、構成がしっかりしていて、絵柄も安定感がある、正統派の少女マンガですね。そういったものはどのように身に着けてこられたのでしょう?

ストーリーの構成は、担当編集さんに鍛えられました。特に『電脳コイル』から大きく変わりましたね。私、今まではずっと、ストーリーを先に考えて、それにキャラクターを当てはめるようにして作品を作っていたんです。今回はそれとは逆に、最初にキャラクターがあって、そのキャラクターはどう動くのか? を考えながら作品を作りました、今度の読みきり((「ちゃおDX」2008年1月20日号掲載)も同じように描いています。

――以前はストーリー先行で作品を作っていたんですね。

はい。何か「起承転結」みたいな感じで考えてました。

――それはなぜですか?

マンガって起承転結があるものかな、という意識が漠然とあったんです(笑)。途中でハラハラするところを入れなきゃいけないから、「転」の部分は絶対いるのかな、というくらいの感覚で。

――なるほど。逆に、そうしたプロットの意識が強かったからキャラクターが動き出すようになったんでしょうね。プロットの作り方はどのようにされているのでしょう?

登場人物の名前を書いて、「この二人の関係はこうだ」と説明を書いて、そこから人物関係の矢印を伸ばしていって、どんどんその矢印を繋げていきます。そうすると、最終的に樹みたいな図ができるんです。

――チャートを書かれるんですね。

はい。あれを作るのが私は好きです。作るとマンガの構成がしっかりする気がします。

――それは自分なりに考えてその方法に辿り着かれたのでしょうか。

テレビ番組で「考えごとをするときに、そうやってどんどん要素を繋げていくといい」みたいなことをやっているのをたまたま観まして。「あぁ、これいいな」と思って。

――『電脳コイル』のときはどのようなチャートを?

大体、ヤサコとイサコの二人の関係で進む物語なんだな、と思っていたので、その二人がどうつながっていくのかを軸にして考えていきました。

――「ちゃお」の読者の目線というのを常に意識して描かれていると思いますが、20代前半の作家さんだと、環境的にも世代的にも、11歳くらいの小学生の女の子とはかなり距離があるのではないでしょうか。

たしかに11歳くらいの子はわからないですね(笑)。私たちの時代より大人っぽいのかな、とも感じますし。ただ、『電脳コイル』はもともとキャラクターが出来ていて、そのキャラクターたちが昔の少年少女のような雰囲気だったんですね。だから、あまり今の子供たちを意識しないで、「友情」をきちんと描けば届くだろう、と考えました。

――「友情」を描こうとしたことで、これまで『ちゃお』で描かれてきた読みきりとの違いは生まれませんでしたか?

もともと「仲間」を描いた作品が好きなんですね。『爆走兄弟レッツ&ゴー』とか。だから、そんなに意識の違いはありませんでした。あと、ツンデレキャラを描くことも大好きなので、イサコやフミエも楽しかったですし(笑)。

――ツンデレがお好きですか(笑)。『ちゃお』の読者にも、いまどきは強い女の子の方が人気があるのでは。

強いというよりは、「一生懸命頑張っているところがかわいい」という感じの女の子主人公が人気があるみたいですね。担当さんからも「受身の子よりは、動く積極的な子のほうが読者に受けやすい」という話はよくされます。

――その意味では、久世版『電脳コイル』ではヤサコが原作よりも少し活発な感じになってますよね。

そうですね。それと、最初に磯監督が描いていた企画書のヤサコがすごい気が強そうな感じだったので、その影響もあると思います(笑)。

■メガネの子供たちへ

――最後に、『電脳コイル』のファンへのメッセージと、先輩として、マンガ家を目指す人に向けたメッセージをそれぞれいただけますか?

『電脳コイル』はとても面白い作品です。アニメをまだ観たことがない方は、ぜひDVDや、今やっている再放送でチェックしてください! 私の描いた『電脳コイル THE COMICS』は、アニメとは絵柄もストーリーも違っていますが、違うようで同じ『電脳コイル』になるように工夫をしているので、そんなところを探して楽しんでいただけたらと思います。

――あとは、マンガ家を目指す後輩達に、先輩のお姉さんとして一言(笑)。

マンガ家になる可能性は誰にでも開かれていると思います。だから、諦めずにがんばってほしいですね。

(2007年12月18日・小学館会議室にて収録)

インタビュー:伊藤剛(マンガ評論家・AMG講師)
構成:前田久 平岩真輔

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アニメ『電脳コイル』SP特番と再放送も要チェック!

アニメ『電脳コイル』は、毎週土曜日6時30分からNHK教育テレビで再放送中!『電脳コイル』の世界をまだ知らない人も、すでにどっぷり浸かっている人も、ますます電脳世界に夢中になってください!! 2008年1月1日には90分の『電脳コイル スペシャル』特番も放送予定。詳しくは電脳コイル公式サイトをご覧ください。

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©磯光雄/徳間書店・電脳コイル製作委員会






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