怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・後編――『二十面相の娘』フジテレビ山本Pインタビュー

怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・後編『二十面相の娘』フジテレビ山本Pインタビュー

戦前から戦後にかけて推理小説の世界をリードし、今もなお多くのクリエイター達に影響を与え続けている小説家・江戸川乱歩(えどがわらんぽ)。その作品世界を、斬新な解釈で現代に甦らせた快作冒険活劇コミック『二十面相の娘』(メディアファクトリー/全8巻)が、この春、フジテレビ系でアニメ化されます。

4月12日からの放送スタートを直前にしたインタビュー前後編、原作者の小原愼司さんに引き続いて、後編ではフジテレビのプロデューサー・山本幸治さんと、アニメ版キャラクターデザインを手がけたボンズの堀川耕一さんに、それぞれお話を伺います。「ノイタミナ」を筆頭に深夜枠で意欲的な作品を発表しつづけるフジテレビ、その局プロデューサーが目指すものとは? アニメ企画はどうやってスタートするのか? さらにアニメキャラクターデザインがどのようにまとめられるかといった、企画の裏側にせまります!!

⇒インタビュー前編・原作者:小原愼司先生はこちら

■アニメ『二十面相の娘』は如何にして誕生したか 山本幸治P(フジテレビ)

――『二十面相の娘』という作品をアニメ化しようと思われた経緯はどんなところから?

今から数年前になるのですが、僕と、先輩の伊藤幸弘というノイタミナ枠の立ち上げから関わっていた2人で、土曜日に新しいアニメの放送枠を立ち上げることになったんですね。それで、その枠でやる作品を探していた中で、かなり直感的に発見した作品だったんです。最近では、いろいろな角度から分析を加えて企画を立てたりするんですけど、その当時は枠を立ち上げた直後ということもあって、ひらめいた勢いで企画を決めていました。

――作品との出会い方はどのような形だったのでしょう?

本屋でジャケ買いした本の中の一冊でした。土曜深夜のフジテレビアニメのテーマは「ヒロイン」なんです。小原先生の描かれるヒロインの、美しいんだけれど、けして「こびた美しさ」ではないところに惹かれました。つまり、まずは絵の中でヒロインとしてキャラが立っていた、というのが購入の決め手だったんです。それで、伊藤と2人で読んでみたら、お話も面白かった。何度も読み込んで、すぐメディアファクトリーさんに連絡をとりました。

――マンガとして、特に魅力を感じたポイントはどんなところだったんでしょう?

簡単にいえば、作品として宮崎アニメのようなポテンシャルを持っていたということですかね。

――古き良き「漫画映画」的な匂いがしますよね。

二十面相の娘

そうです。その雰囲気を残しつつ現代的な味わいも持たせたいということで、気鋭のスタジオであるボンズにお願いし、ボンズから老舗のテレコムとタッグを組みたいという提案を受けました。ボンズさんにデザインをお願いしたのは、以前『獣王星』という樹なつみさんの作品をやったときに、樹なつみさんの10年以上前のデザインをボンズが綺麗にリファインしてくれて、おかげさまでヒットしたんですね。ボンズさんの手でシャープになったデザインを、テレコムが動かすことで懐かしい味わいも残る。そんな「いいとこどり」が今回の狙いです。やはり、昔からのアニメファンの方は「テレコム」という名前には特別な感慨があると思うんですよね。

――小原先生のインタビューでも話題に上がったのですが、『ルパン三世 カリオストロの城』に『名探偵ホームズ』のスタジオということで、怪盗や名探偵が登場する冒険活劇ではテレコムの本領発揮という感じですよね。

実際、1話でパトカーが大量に登場するシーンがあるのですが、見た瞬間に「『カリ城』だー!!」と思いました(笑)。ボンズの南(雅彦)Pも、「怪盗もの」だということで、テレコムさんとタッグを組もうと思ったんでしょうね。

――企画が動き始める段階で、アニメとしてアレンジされる方向性もイメージされていたのでしょうか。

原作の雰囲気はとても魅力的なんですけど、テレビでそのまま放送するには、少し描写が深すぎてしまうんですね。たとえば、原作で「二十面相」という存在は、戦中・戦後の混乱の時代だからこそ「誰もが二十面相でありえた」みたいな形で描かれているんですね。それはすごく深いテーマなんですけど、今の時代にその感覚は、すんなりとはわかってもらえないと思うんです。そこを少しだけ、わかりやすくしようと思いました。雰囲気の良さは何とか残しつつも、「二十面相」という存在の像は明確に描こう、と。

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©小原愼司・メディアファクトリー/「二十面相の娘」製作委員会





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