怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・後編――『二十面相の娘』フジテレビ山本Pインタビュー

怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・後編『二十面相の娘』フジテレビ山本Pインタビュー 二十面相の娘

――シリーズ後半ではオリジナルのストーリー展開もあると伺っています。

後半の展開はかなり驚かれると思います。ただ、小原先生と担当編集さんにその構想をお話ししたら、「これは、自分たちがやろうとして選ばなかった、もう一つの道です」という言葉をいただいたんですね。つまり、確かに原作とは異なっているけれど、それが、キャラクターの本質や作品のテーマ性を変えることではない、と。原作ものをいじるというのは一般的にいろいろと大変だと言われているんですけど、今回はそういったことが全然なかったです。

――完全なオリジナル展開というよりは、オルタナティブなものだという。

そうですね。精神性は全く一緒です。原作の終盤で登場する「二十面相の遺産」を巡って描かれている原作の精神的な壮大さを、アニメ版ではビジュアルとしても具体的に大きなものとして描かせてもらった、という感じですかね。それは、原作では科学的でもあり神秘的でもあるかっこいい言葉で表現されているのですが、そのかっこよさを原作とは違った角度から描いているのが、アニメ版『二十面相の娘』です。

――なるほど。

あと、『二十面相の娘』では「NEO萌え」というキーワードを提唱したいんですよ! 最近の、細かい要素に細分化し過ぎた「萌え」に対して、「何となくいいなぁ」とか「キュンとくる」とか「歯を食いしばっている女の子がいたら助けてあげたい」とかいうような、一周まわって辿り着いたとてもベーシックでシンプルな感覚をアピールしたい。「NEO萌え」については、その感覚をスタッフ間で共有するための「NEO萌えカット集」というファイルも作るくらい力を入れています。

二十面相の娘

――具体的にはどんなものでしょう?

『二十面相の娘』の原作から厳選したコマはもちろん、映画や写真集から集めてきた素材もたくさんあります。たとえば、ナタリー・ポートマンが膝を抱えている写真とか、「NEO萌え」感覚があると思うんです。ぺろーんとパンツが丸見えになるとか、絶対嫌なんですよ。パンツよりもチラッと見えるスカートの裏地のほうにドキッとする、そんな原点の感覚に戻りたい。

――それが『二十面相の娘』の裏テーマだと。

そもそも、小原さんの絵が、直接的ないやらしさは全然ないのに、薫るような色気のある絵なんですよね。それをきちんとアニメでやれたらいいと思っています。

――言葉の端々から力の入り具合が伝わってきます(笑)。

アニメのオリジナル要素として、ポール・エリュアールというフランスの詩人が書いた詩の一篇を使っているんですが、その詩を小原先生に見せたら、「『二十面相の娘』の全てがこの中に入っている!」と、自分とまったく同じ感想をいただいたので、これはもう使うしかない!と。公式サイトのトレーラーでは少しづつその詩を見せています。トレーラーを暗号っぽく何度も更新しているので、こまめにチェックしていただきたいですね。ちなみに、アニメ本編でも、詩が暗号文として登場します。江戸川乱歩作品といえば「暗号」ですから(笑)。

――なるほど。プロデューサーの仕事というのはそこまでするものなんですね。

東京国際アニメフェアにて山本P

そうですね。企画によって関わりかたの大小はありますが、作品の本質を理解することがプロデューサーという職業にとって大切だと思うので、その中では今回のような形もありうるということです。アニメ化の企画を立ち上げるとき、よく「原作者を口説く」という言い回しをしますよね。でも、「口説く」というのは特別な何かをすることじゃないと思うんですよ。自分がどういう趣味を持っていて、その趣味から見て、原作のどういうところに魅力を感じているのかをきちんと語るだけなんです。作り手のみなさんって素敵なひとが多いので、そういう方ときちんと話すというのは大変だけど楽しいことですね。特にマンガ家さんって大好きですよ、僕は。

――なるほど。では、これから『二十面相の娘』という作品に触れられる皆さんに一言お願いいたします。

公式サイトでは、さきほどのトレーラー以外にも、各分野で活躍するクリエイターや、過去に二十面相を演じた役者の皆さんなど、多方面から続々と寄せられる応援コメントを掲載したり、スタッフのblogも公開されているので、是非こまめに足を運んでチェックしていただきたいです。そしてなによりもアニメ『二十面相の娘』をよろしくお願いします!

(2008年3月29日、東京国際アニメフェア2008会場にて収録)

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©小原愼司・メディアファクトリー/「二十面相の娘」製作委員会





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