魅惑のアニメ、そのレシピ――ノイタミナ『西洋骨董洋菓子店~アンティーク~』奥村よしあき監督インタビュー

魅惑のアニメ、そのレシピ――ノイタミナ『西洋骨董洋菓子店~アンティーク~』奥村よしあき監督インタビュー

■「ノイタミナ」作品としての拘り

――OPはまた本編と違った魅力のできばえですね。

白組さんがミニチュアセットを実際に作って、撮影されたんですよね。ケーキなんか小指の先くらい、直径数ミリくらいしかないのにすごく精巧な出来で。凝りすぎてるから、思わず「これミニチュアに見えないですよ」って言ってしまいましたよ(笑)。

――知らないで観るとあれもCGだと思ってしまいかねないですよね(笑)。

DVDの特典映像か何かでメイキングを作ろうとか白組の社長はおっしゃってましたね。エンディングも、実写の方にお願いしてやってもらって、中のアニメはこちらから提供させていただいたんですけど。ラストカットにはその話数で使ったケーキを実際に映してる。OP・EDだけ観ると実写ドラマみたいなのに、中はアニメというちょっと変わったスタイルになっているのが面白いところだと思っています。

影

――ノイタミナならではのスタイルですよね。深夜帯のアニメが多い中、他の枠ではやれないようなことがやれる。

そうですね。よしなが先生の作品もノイタミナだからできたんだと思いますから。アニメーションを好きなひとだけへのメッセージじゃなくて、もっと広いひとたちに向けてのメッセージにできるような作品だなぁ、と思っています。ちょびっと変わったところもありますけど、それは観ていくうちに自然と受け入れていただけるものだと思いますし。

――逆にアニメファン以外の方にも向けて作品を作る上で留意される部分はどこに?

これまで挙げてきた、原作の雰囲気を残すような部分を除くと、まずは洋服ですね。メインキャラクターのパティシエやギャルソンの格好は同じですけれど、私服姿やサブキャラたちの服装は今の流行の服を着せています。

――ノイタミナ枠ならではの感覚ですよね。アニメのお約束である着た切り雀のキャラクター描写に視聴者さんが違和感を覚えられることを前提に制作を進められる。(⇒【ぷらちな】アニメを変えるキャラクターのファッション・ノイタミナ『働きマン』の挑戦:参照)

そうなんですよね。特に小野はゲイなので、ゲイの方の間での流行もきちんと意識しようと思いましたし。橘も、ちょいワルオヤジ(笑)みたいなところを出さないといけませんし。あと、重要なのが靴ですね。特に女性キャラクターの靴はかなり気を遣ってやってますね。難しいところなんですけどね。写真や実物で見ると良いものでも、絵にすると皺の感じがうまく出なかったりして、いまいち雰囲気がでなかったりもするので。次に、この作品ならではの要素としてやはり重要なものと考えているのはケーキですね。やはりよしなが先生もこだわって描かれていた部分なんですよ。好きで研究してないと原作のあの描写はできない。そこをアニメでも大事にしたかった。鎧塚俊彦(Toshi Yoroizuka )さんにケーキの監修をお願いしたことには、先生の意見も反映されているんです。原作は七年前の作品ですけれど、今アニメになるなら、今の時代の一番旬のケーキを使いたい、ということなんですね。

――1話で登場した「その店の実力がわかる三種類のケーキ」の種類が、原作のエピソードと変わっていたりもしましたね。

俊さんに「俊さんのお店ではこういう場合は、どのケーキを出しますか?」とお聞きしたら違う名前が挙がったので、それを原作者のよしなが先生に監修してもらって反映させています。そういう言葉の一つ一つにも、すごくこだわってシナリオは書いてもらいましたよ。それはシリーズ構成の高橋さんの狙いで、一人で全話脚本を書いているからこそできたことだとおも思いますね。ケーキ周りは全部、俊さんに確認を取ってから、原作者のよしながさんに監修してもらう段取りを踏んでいると思います。

魅惑のケーキ達

――ノイタミナがターゲットにしている層がケーキなどの情報に強い層なので嘘はつけませんよね。

ケーキ専門のデザイナーをつけているくらいです(笑)。「ケーキズ」って呼んでいるチームなんですが、色も、撮影も全部担当しているんです。

――設定も膨大ですね。

だから映像で必ず見せたいと思いまして、そこもアップで見せたりするようにしていますね。作品を見ていて、夜中なんだけど「あぁ、ケーキ食べたい!」という気持ちになるような作品になっているといいのですが。本編でそういう気持ちになって、最後に登場する実物の写真で完璧に落とされるというような流れだと美しいですよね(笑)。

――実際に監督も召し上がられて。

ほとんど食べてます。やっぱり、おいしいですよね。やっぱり話題になるだけのことはあるというか、ただ甘いだけじゃないという。原作の表現じゃないですけど、食べると小躍りせずにはいられない。じたばたと足踏みしましたよ(笑)。そんな形で、試行錯誤しながら作っていっていますので、後半に行くほど良い出来になって行くと思います。期待していただけるとありがたいですね。

――では最後に、アニメーション業界を目指す若い方々に向けてひとことメッセージをお願いします。

奥村よしあき監督

これからもっともっとアニメの手法は広がって行って「これがアニメなんだ?」と思うような驚く表現も出てくると思うんですね。その一方で、これまでずっと作られてきた、定番のようなアニメも続いていくでしょう。それくらいアニメの裾野というのは広いくて、いろんなことができる表現なんですね。実際、僕もゲームや、実写、コマーシャルなんかも作ったことがありますし。なので、「これはテレビで流れるアニメだから」みたいな枠を自分の中に作らない方がいい。もっとアニメに夢を広げて、この世界に飛び込んできてもらいたいと思いますね。今、そう言う意味ではちょっと停滞気味なところもあるんですよ。今流れているようなアニメをやりたいというひとしか業界に来ていない。まあ、出来ることの幅広さは、僕なんかも入ってみて初めてわかったところもあるのですが。なので、固定観念を持つことなく、夢を持ってアニメの世界に飛び込んで来てください。

――ありがとうございました!

(2008年7月8日・タバック大久保スタジオにて収録)

インタビュー:平岩真輔
構成:前田久

西洋骨董洋菓子店

『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』 ノイタミナで放送中です!

よしながふみの人気コミック『西洋骨董洋菓子店』がついにアニメ化!全12話(予定)でケーキ屋をとりまく4人の男たちの物語を描きます。Toshi Yoroizuka監修による魅惑のケーキ達も、これまでのアニメの表現を超えた本格的スイーツの世界を見せてくれます。フジテレビ毎週木曜日24:45~「ノイタミナ」枠をはじめ関西テレビ・東海テレビほか全国で放送中です!!DVD第1巻のリリースも11月26日に決定!!
※放送時間は予告なく変更になる場合があります。予めご了承ください。

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