アニメ『ペレストロイカ』青池良輔監督インタビュー 聞き手:津堅信之(アニメーション史研究)

アニメ『ペレストロイカ』青池良輔監督インタビュー 聞き手:津堅信之(アニメーション史研究)

デビュー作となるFlashアニメ『CATMAN』で大きな注目を集めた映像クリエイター青池良輔監督の新作アニメーション『ペレストロイカ』。クレイモデルを用いたアナログ風デジタルアニメで描かれるユニークな内容で、世界の数々のアニメーション映画祭で高い評価を得ています。

そのDVDリリースにあたって、青池監督に世界を舞台に活躍するアニメ作家のバックグラウンドと、作品作りのスタンスをうかがいました。聞き手は、アニメーション史研究家・津堅信之さん。日本を代表するアニメ史研究家が、青池作品の秘密に迫ります――。

――お話を伺うのをとても楽しみにしていたのですが、私は昭和43年生まれで、青池監督とは世代が近いですから、子ども時代や学生時代に見てきた映画とかアニメでも、話題が共通するのではないかと思います。

青池監督

そうですね、ぼくは昭和47年生まれですから。

――小さいときから、アニメはお好きだったんですか?

いや、もうぜんぜん(笑) 『ガンダム』さえ見たことがなかったんですよ。何しろ、大学に入った頃の好きなアニメは、『まんが日本昔ばなし』でしたから。でも、実写の映画は好きで、それで大阪芸術大学の映像学科に入ったんです。

――それは意外です。では、大学では実写映画の勉強をやっておられたんですね?

そうです。勉強しながら、映画制作のなかでも演出ができればいいなと思っていたんですが、ぼくの大学卒業当時はバブル崩壊後の就職難ということもあって、就職口がなかったんですよ。たしか大手映画会社では、1社が事務職を1人だけ募集しているという状況だったんです。それで、どうしようかと思っていたら、知り合いから、「そんなに実写映画をやりたいなら、カナダで仕事があるから紹介するよ」と言われて、ぶっちゃけ英語も喋れなかったんですけど(笑)、カナダへ行くことにしたんです。

――カナダでは、具体的にどのような仕事をやってらっしゃったんですか?

ペレストロイカより

実写映画制作の会社だったんですが、そこで7年間勤めました。仕事は、制作現場ではなくて、企画書とかファイナンスとか、そういう事務方をやっていたんです。でも、向こうの映画制作のスタイルに触れてわかってきたんですが、やっぱり映画って、プロデューサーがつくるものじゃないですか。監督は、一つの専門職であって。それで、これはもしかしたら、自分が映画を作るとしたら一番近い道かもしれないなあと思いながらやっていました。

――そういうなかで、アニメとはどのようなつながりができたのでしょうか?

さっきもお話したように、ぼくは学生時代を含めてほとんどアニメを見ていなかったんですが、初めてキチンとアニメを見たのは、カナダの映画会社に勤めている時です。カナダ政府のファンド開発にあたって、日本との共同制作を進めるために、まずテレフィルム・カナダ(注:Telefilm Canada。カナダ政府が母体となって運営されている映画会社の一つ)が制作しているアニメを全部見ておきなさいと会社で言われて、いわゆるアート系のアニメだったんですが、2週間くらいずっとそのアニメを見ていました。それで、これがお金になるのかなあと考えながら、アニメを落ち着いて見る機会になったんです。

――それがアニメ制作に入門するきっかけになったんですか?

いえ、それでもぼくは、いつかは実写をやるんだろうなあと思っていました。アニメの技術を覚えたきっかけということでいうと、動く企画書を作りたかったんです。つまり、CGを使って、音楽が出て、映画の登場人物の紹介があって、というような企画書ができないかと、作り始めたんです。それの練習をやっているうちに、あ、これはちょっとアニメっぽいこともできるらしい、ちゃんと絵を描いたら動かせるぞ、面白いなあと思って、会社の仕事が終わってからいろいろやっていたら、今回の『ペレストロイカ』も担当していただいている平沢さんに見つけてもらって、ウェブアニメをやりませんかということになって、契約することになったんです。そこからですよ、アニメって、どうやって作るんだ!?って、必死に考えはじめたのは(笑)

青池監督

――それは、テクニック的なことですか?

テクニック的なこともそうですし、歩くサイクルは何枚絵を描けばいいんじゃないかとか、もう全部ですね。

――今回DVDが発売される『ペレストロイカ』について伺いたいと思いますが、どういうテクニックで制作されているんですか? 人形を使った立体アニメにも見えますが、フラッシュで制作されているわけですよね。

もろもろの準備期間は9ヶ月かかったんですが、フラッシュの制作は2週間でした(笑)。人形の頭は粘土で作っていますが、1種類だけです。それをコンピュータに取り込んで、回転させながらデジタルデータにしていきました。その360度回転する頭と、口のデータは16種類、同じように回転させたデータをストックして、同じ頭のデータに髪の毛を描いています。一方で、身体は全部フラッシュで描いています。あと、背景にはミニチュアを使っています。

――そうすると、立体の粘土アニメに近いとも近くないともいえるわけですか?

粘土アニメって、限界があるじゃないですか。フレーム数を多くするとものすごい作業量になるので。この作品の場合は、秒30フレームで作ろうと。そうすると、フラッシュの部分はいわゆるデジタルアニメの動きをするんですが、そこに粘土アニメのタッチを入れて、背景のミニチュアも入れて、いい感じに気持ち悪くなりました(笑)

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