アニメ『ペレストロイカ』青池良輔監督インタビュー

青池良輔監督 作品紹介 『ペレストロイカ』

毎度毎度、いつも腹ペコの3人組が、食べ物をめぐって大騒動を引き起こすというストーリー。しかし、深刻さは全くなく、キッチリ2分半のショートギャグに収まっている。『ペレストロイカ』はそんなシリーズ作品だ。

登場するキャラクターは、3人揃ってロシアからやってきた移民、アイデアマンのアレクシ、年長者で落ち着いているようにみえるボリス、小柄で甘えん坊のコペック。3人はなぜかいつもお腹を空かせていて、食べ物を得ようと、あの手この手のアイデアを駆使するが、寸前のところで大失敗する。

個性がはっきりと描き分けられているので、誰でもすぐに覚えられるキャラクターだが、それにしても風変わりなデザインだ。万人の人気を獲得できるかというと、微妙かもしれない。

ペレストロイカより

特に、キャラクターデザインを含めた作品の画面全体に、なんとも言えない「気持ち悪さ」がある。粘土を使って作られた頭とFlashで描かれた身体が組み合わされたミスマッチ、その一方で、舞台はリアルな模型が使われている。3人が喋る英語のセリフもどこかぎこちない。つまり、総じて「ミスマッチ」が溢れ、それが作品全体に「気持ち悪さ」を漂わせている。ところが、制作した青池監督に聞くと、そういう気持ち悪さが「いい感じ」だと、自信満々だ。

青池良輔監督は、1972年生まれで、山口県下関市出身。大阪芸術大学で映画を学び、卒業後まもなくカナダ・モントリオールの映画製作会社で、主に事務方として映画製作に従事する。その間、ファンとしての関わりも含めて、アニメには縁がなかったとのことだが、映画会社勤務の合間に、コンピュータで絵を動かすことの面白さに気がつき、それがきっかけとなって誕生したのが、Flashで制作されたアニメシリーズ『CATMAN』だ。

幸運なデビューになったと言えるが、2002年にネット上で発表されるや、大都会に生きる孤独で喧嘩っ早い、でも腕っぷしは弱く、いつもボコボコにされるネコを主人公にした『CATMAN』は、大きな話題を呼ぶことになる。

以後、パソコン1台で、脚本から作画までほとんど単独で制作するスタイルもあいまって、青池監督は知る人ぞ知る存在となり、Flashアニメの第一人者と評されるようになった。

『ペレストロイカ』は、そんな青池監督が送り出した最新作だが、世界4大アニメーション映画祭のうち、フランス・アヌシー、カナダ・オタワ、クロアチア・ザグレブの3つの映画祭でいずれも入選を果たすという、アニメーションとしても第一級の評価を受けることになった。

それにしても風変わりなこの作品、広い意味ではギャグアニメだが、「内輪ネタ」に流れることなく、多くの人に多くの種類の笑い、つまり、大笑い、クスクス笑い、失笑などを、観客それぞれの嗜好に合わせるかのように提供しているところが興味深い。作者の青池監督が、いわゆるアニメファンの延長としてアニメ制作に関わったのではないところに、その秘密があるのかもしれない。

解説:津堅信之(アニメーション史研究)

ペレストロイカDVD

『ペレストロイカ』DVD 2008年10月24日発売!

世界で認められた、気鋭の映像クリエイター青池良輔監督によるハイテンション・アナログ風デジタルアニメーション『ペレストロイカ』。声の出演に松尾スズキ、阿部サダヲ、村杉蝉之介、皆川猿時ら個性派を、音楽には山村浩二の傑作アニメ『頭山』の冷水ひとみを迎えて繰り広げられるユーモラスな珍騒動。本編12話(26分)に加えメイキングや未公開エピソード2作品などを収録して2008年10月24日いよいよDVDリリース!(発売元:ROBOT/ 販売元:東宝/価格:税込2940円
⇒『ペレストロイカ』公式サイト  ⇒amazonで『ペレストロイカ』DVDを見る

CATMAN

青池監督のデビュー作『CATMAN』DVDも 2008年10月31日発売!

80万人が視聴した伝説のネットアニメ『CATMAN』。2001年に青池良輔監督が1台のノートPCから生み出した、ハードボイルド・アクション・コメディは多くのファンの心をつかみ、この2008年には新シリーズがフジテレビ地上波・CSでもオンエアされている。そのすべてを収めたDVDがついに2008年10月31日DVDとしてリリース!
⇒amazonで『CATMAN』DVDを見る

⇒青池良輔公式サイト「aoike.ca」
⇒津堅信之のアニメーション研究資料図書室
フジテレビ『CATMAN』公式サイト

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