『鉄腕バーディー DECODE』赤根和樹監督&りょーちもさんインタビュー

『鉄腕バーディーDECODE』赤根和樹監督&りょーちもさんインタビュー

『機動警察パトレイバー』『究極超人あ~る』等の作品で知られるマンガ家・ゆうきまさみが20年以上にわたって描いてきたSF作品『鉄腕バーディー』。1985年から「週刊少年サンデー増刊」で発表され、OVAとしてアニメ化もされながら、未完となってたバーディーは、2002年、「週刊ヤングサンデー」誌上で新たに連載開始、10月からは「週刊ビックコミックスピリッツ」で『鉄腕バーディーEVOLUTION』として装いも新たに新展開を迎えています。

その原作を大胆なオリジナル展開を盛り込んでテレビアニメ化した『鉄腕バーディー DECODE』。好評につき第2期の制作が発表された本作のキーパーソン、赤根和樹監督と、初のキャラクターデザイン/総作画監督を務める、若手人気アニメーター・りょーちもさんにロングインタビュー!第1期を終え、DVDリリースがスタートしたばかりの『鉄腕バーディー DECODE』の制作現場の秘密をぷらちなが解読します!!

■ENCODE?『鉄腕バーディー』から『鉄腕バーディー DECODE』へ

――原作のゆうきまさみさんはアニメの企画がスタートする前から赤根監督の『ノエイン』のファンだったそうですが、監督にとって『鉄腕バーディー』の印象はいかがでしたか?

赤根監督

赤根 旧作の『鉄腕バーディー』を読んでいたんだけど、ゆうきさんといえば『機動警察バトレイバー』『究極超人あ~る』の印象が強くて、バーディーにはちょっと異質なイメージを持っていたんですね。それをどんな切り口でアニメにすればいいか考えながら、ゆうきさんとお話しているうちに、『鉄腕バーディー』はゆうきまさみの様々なエッセンスの集大成した作品なんだってわかってきました。

――りょーちもさんは1979年生まれですから、世代的には旧作『鉄腕バーディー』のイメージはないのでは?

ちも 『究極超人あ~る』は読んでいたので「実は『あ~る』と『バーディー』が作品中でつながっていた」みたいな話を聞いて、あの頃にもすでに『バーディー』があったのか……みたいな感じで。OVAで『鉄腕バーディー』を知ったのでその印象が強いんですよ。

OVA版『鉄腕バーディー』
OVA版鉄腕バーディー1996年川尻善昭監督作品/マッドハウス制作。旧作コミックを元に全4話で完結するストーリーとして描かれたオリジナルビデオアニメ。バンダイビジュアルより『鉄腕バーディースペシャル』としてDVDが発売中。
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――OVA版『鉄腕バーディー』(川尻善昭監督)は10年以上前の作品になりますが、やはり企画を立ち上げる段階でかなり意識されたのでしょうか。

赤根 意識したというか、同じことはできないよねっていう話からスタートしましたね。

ちも OVAがこうだから今回はこうしよう、みたいな考え方ではなく、改めて『鉄腕バーディー』の切り口を考えるためのベースになったという感じです。

――今回、赤根監督がキャラクターデザインにりょーちもさんを抜擢された理由はどんなところにあるのでしょう?

赤根 『ノエイン』の現場で、りょーちもの画力の高さはわかってたんですけど、それにプラスして、絵に艶があるんですね。これは新しい時代の絵だと感じたので、ぜひデザイナーとして一緒に仕事をしてみたいと思ってたんです。『鉄腕バーディー』は原作ファンの年齢層が少し高めなので、りょーちもの絵のセンスで、若い人たちにも作品を発信したいなって。りょーちもにはその力があるし、この現場でそれを試したかったんですよ。

――以前、ゆうきさんに「りょーちもさんの絵は今っぽいですよね」というお話をしたら、逆に「アニメ的に懐かしい感じがする絵」だと言われたのですが(笑)。

『バーディー』キャラクター設定表 『バーディー』キャラクター設定表

赤根 そこが、りょーちもの新しい所なんですよ。昔のアニメは動くことを前提に省略化して、艶とか色気っていうのは度外視してデザインすることが多かったんですよね。逆に、艶とか色気を中心にデザインすると、すごく線の密度が多い描きづらい絵になるんですよ。アニメのデザインが、そのどちら側にいくかを模索して揺れてきた中で、りょーちもたちの世代から、両方を包括したような絵の描き手がでてきたんですよ。

自分の世代は、幼少期から省略化した絵のアニメ―ションを見ていて、高校生の時に安彦良和という天才的な絵描きが登場して衝撃を受けた。アニメでもこんな艶のある絵が描けるんだって言う、驚きがあったんですよね。でも、りょーちも世代は、生まれた時から両方見せられてるわけじゃないですか。それを自分なりに消化して、新しい絵を作ろうとしてる。だからもう、全く新しい絵のセンスだと思うんですよ。それで”新世代”と呼んでるんです。

自分としては、そういう両方兼ね備えた絵をずっと待っていたので、りょーちもたち新世代が出てきたことは、演出冥利に尽きるって所はありますよね。

ちも よし!(笑) 最近のアニメって、何かひとつの要素を尖らせて、それを見せることに偏ってしまう傾向があるかもしれないですね。自分は、悪く言えば中途半端なんですけど、何かに特化するのではなく漠然とイメージしたところで描いているので、その意味で懐かしいと言われるのは、なるほどって。

――オリジナルではなく、ゆうきさんの絵が原作としてあるキャラクターをデザインすることは、りょーちもさんにとってやりやすかったですか?

ちも ゆうきさんは、懐かしいもの、新しいものも含めて、これまで自分が触発されてきた絵やデザインの、さらに基盤の部分を作られた世代のクリエイターなので、ある意味で無意識にテイストを拾える部分がありました。そこは割とやりやすかったかもしれません。もちろん、苦労した部分もいっぱいありました。

左:つとむと早宮/中:テュートとイルマとバーディー(しおん)/右:正久保や羽沢

――アニメ版のキャラクターデザインとして、特にポイントにされた部分はありますか?

赤根 ゆうきさんの作品は、単なるアクション活劇だけではない人間性のやりとりみたいな部分があるから、そういうドラマの部分をちゃんと演出できるキャラクターにしないといけない。そういうところで、りょーちもと役者の話をしたりしてましたね。

ちも 年齢に即したキャラクターっていうのは実際どうだろう? みたいな部分で、漠然としたイメージとか、雰囲気とか、実写のドラマなら誰がやるだろうみたいなやり取りをしました。ゆうきさんのデザインに重ねて、もしこの役者が演じたらどうなる? とか、そういう多面性を内包したデザインを頑張ってみたんですけど、どうでしょう(笑)。

あと、どうしても人によって演技のプランが変わってくるんで。作品的にはこういうリアクションをするかなとか、いろいろな例文を出して模索しながら、お互いの認識がずれてないか確認しあったりしてましたね。

赤根 正久保や羽沢みたいな、端のほうのキャラクターでも確認とりながらやってたもんね(笑)。

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