『鉄腕バーディー DECODE』赤根和樹監督&りょーちもさんインタビュー

『鉄腕バーディー DECODE』赤根和樹監督&りょーちもさんインタビュー

――監督自身も絵コンテにFlashを導入され始めたという話ですが、使われてみていかがですか。

赤根 コンテ修正の場合は紙を使ってますけど、紙で描くのもデジタルで描くのも大差なくなってきたので、自分としては紙に飽きたらデジタルで、デジタルに飽きたら紙でやろうかなぐらいの感じです。Flashで描くって事について構えないほうがいいような気がしますね。あくまでツールの一つとして、便利であれば、もっと使っていけばいいと思ってますし。マシンスペック上、ときどき処理落ちしたりするんでイラっとするんだけど(笑)。

ちも 紙の場合「あ、データ消えた!」は無いですけど、Flashで描いてて1カット消えるということはあるわけです(笑)。紙ならコーヒーこぼしても1枚描き直せばいいかで済むんですけど、デジタルは1個消えると普通に全部なくなってしまうので、そういう面では怖いところもあります。

赤根 あれ、ショックでかいよね(笑)。

――そういうリスクを考えても導入するメリットがあるということでしょうか?

ちも 仕上げさんも撮影さんもデジタルでやってるので、データを扱うリスクは一緒じゃないですか。そこは上書きしないようにとか、バックアップとか安全策を考えてやるべきなんですけど、また別の話ですね。やはりデジタル納品という今のアニメ制作のシステムに対応できるという意味で、絵のデータを触れるというメリットは大きいですね。

赤根 デジタルを上手く使っていくと、昔よりもかゆいところに手が届く感がありますよ。アナログの時代は、素材があがってきたらそれ以上やりようがないんで諦めていたのが、デジタルだと最後の最後までブラッシュアップができてしまうので。ギリギリまでクリエイターが粘れるっていうのが強みであり、悪い面でもあるんですけど(笑)。

T光
透過光。光ってみえる効果。撮影でCGI処理されるが、アナログ時代はセルの透明部分にライトの光を透過させて撮影していた。

ちも 無い素材までどんどんつけちゃいますからね。エフェクト足りないなぁ、バーンってこれぐらいいるかなぁとか。えい、入れちゃえ、これT光でお願いします……とか。他の話数もあるんだから次行けよっていうのもありますけど(笑)。作画監督としては、時間で線引きするしかないですね。

左上:バーディーとテュート/右上:つとむとバーディー(二心一体)/左下:ゴメスとオンディーヌ/右下:バーディー(T光がバーン!)

――現場では、どれくらいのアニメーターさんがFlashを使われているんですか?

ちも 山下(清悟)さん、江畑(諒真)さんと……フル導入されているのは、まだ山下さんだけですね。彼は自分よりもFlashを使いこなしているんですよ!担当した話数のアクションシーンでは、それぞれかなり面白いことをやってくれているので、動いているところを観てもらえば分かると思います。あとは演出のほうで少し、セルの修正等で参加してもらっている人が何人か。

赤根 りょーちもの影響を受けて、みんな少しづつ勉強中というか。実戦にも使ってますけど、もっといろいろ出来そうなので、自分でももっと勉強したいところです。絵コンテのほうでもまだ使い方がある気がするな。

新しいFlashの使い方を話す赤根監督とりょーちもさん

――手描きの絵をタイムラインで管理できるというのは、アニメの演出プランを立てる上では有効なソフトですよね。

赤根 うん。そうなんですよね。コンテ描いたら、そのコマに秒数を打ちこんでムービーにしていくと、コンテの流れが見えるみたいなところまで自動化できるといいんですけど。

ちも カッティングとかにも使えそうなんですよね。尺表示とか、静止画で置くだけでもイメージになるじゃないですか。そういう面でも使えるのかなぁとか。試し撮りが自分でできるとか。原画の段階でも背景とあわせてPANやTU、TBも全部確認できるので。

PANやTU、TB
PAN(パン)はカメラを上下左右に振る動き。TU(トラックアップ)、TB(トラックバック)はそれぞれカメラが被写体に寄る動きと離れる動き。

――面白いですね。『鉄腕バーディー DECODE』の現場からアニメの作り方が変わるかもしれないみたいな(笑)。

ちも いろいろな実験結果がデータとして蓄積できているし、他にもいろいろ試せることがあるので、やり方次第では本当に新しいことができるかもしれませんね。

(以下、赤根監督からりょーちもさんに新しい使い道の提案とFlashのスクリプトについて検討がつづく)

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