ホッタラケに出来ない!Production I.Gが挑むCGアニメーションの新境地
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』をはじめとする攻殻機動隊シリーズなど名作を生み出しつづけるプロダクションI.G(以下、I.G)が、日本中の名だたるCGスタジオと協力して、2Dアニメ的な味と3DCGが融合した日本独自のフルCGアニメーションを実現させた大作『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』(以下、『ホッタラケの島』)。
ゼロ号試写の熱冷めやらぬ8/1(土)、アミューズメントメディア総合学院東京校にて、I.Gの代表取締役・石川光久さんと『ホッタラケの島』でテクニカルディレクターを務められた小松泰さんを迎えて特別講義が開催されました。
■ホッタラケの島への道
――I.Gには数々の名作がありますが、代表作を挙げるとしたらなんですか。
石川 『ホッタラケの島』ですね。これだけのものは日本初だなっていう感じです。日本人の力って本当にすばらしいなあって思いますね。
――特に大変だったことはありますか。
石川 2回、大きな地震というか危機的状況が起こりましたね。現場は毎日揺れていたのですが、大地震となるとふたつあって。
ひとつめはクリエイターを立てるか、企業さん―今回は具体的にはフジテレビさん―を立てるかということで。
かたやクリエイターは、ティム・バートン的に、キャラクター自体の見た目がかわいくないのですが動きでかわいく見せるものを作りたい。かたやテレビ局は、多くの人間に見てもらうので、見た目自体をかわいくしてほしい。その両方の欲求が同じ沸点で交流して初めて、映画が作れたんですね。
ふたつめがスケジュール。脚本やキャラクターなど作品の開発が予想外に3年もかかってしまって、実際の制作期間が1年しかなくなってしまったんです。フジテレビさんが開局50周年記念として打って出ると強く言ってくれたので、現場が2年かかると言うのをあえて1年で通したんですね。
――どうすればクオリティを落とさずに時間を半分に出来たのでしょうか。
石川 I.Gで作るんじゃなくて、日本中のCGアニメーションスタジオを『ホッタラケの島』を通じて集結させようと発想を変えたんです。軽自動車のエンジンをF1のエンジン5つぐらいに乗せ換えたイメージですかね。
今思うと、1年前の体制で2年かけたクオリティと、1年でカチッと切って出来たクオリティとだったら、後者の方がクオリティが高いんです。
――スタジオを集結させるというのは非常に難しいと思うんですが、どのように実現したのでしょうか。
石川 これは聞いた話なんですが、例えばディズニー下請け仕事とかだと、スタッフの名前は表に出ないらしいんですよ。
ミッキーマウスの中に人間がいないと思わせるのが戦略なんですね。
だから、『ホッタラケの島』はクリエイターが表に出るチャンスだと。
そういうモチベーションの高さが『ホッタラケの島』への参加の動機となっていると思います。
もうひとつ、日本のCGやアニメーションって、尖ったアンダーグラウンド的なところは海外にも高く評価されているけれど、親子で見られるCG作品は多くないんです。今回はファミリーに向けて腕をふるえることが最大のエネルギー源だったと思いますね。