『Halo Legends』東映アニメーション・西尾大介監督&池澤良幸プロデューサーインタビュー

マイクロソフトの人気ゲーム『Halo(ヘイロー)』シリーズの世界観を7つのストーリーで映像化する『Halo Legends』。荒牧伸志と押井守という日本を代表するアニメ監督をクリエイティブ・スーパーバイザーに迎え、STUDIO 4℃、ボンズ、Production I.G、東映アニメーション、カシオエンターテイメントといったアニメスタジオとトップクリエイター達がそれぞれオムニバス形式で『Halo』の世界とキャラクターを魅力的に描きだしています。その中でも特徴的な一遍「Odd One Out」を手掛けた東映アニメーションの西尾大介監督と池澤良幸プロデューサーにお話を伺いました。

ぶっちゃけありえない? 東映アニメーションならではの『Halo』が制作された舞台裏に迫ります。チーフ!

■東映アニメ×『Halo』が生まれるまで

――まず最初に、監督に本作のオファーが来た経緯から伺えればと思います。

西尾 そこはプロデューサーから解説してもらった方が早いですかね。

池澤良幸プロデューサー

池澤 そうですね。『Halo』というゲームを題材に新しい映像作品を作るにあたって、ユーザー層を広げたいという狙いがあった。そこで、小学生くらいの男児をターゲットに作品を作れないかと考えて、そういうジャンルが得意な制作会社として弊社の名前が上がったそうです。そのお話を受けたあとで、年齢指定のある原作ゲームの世界観を一回消化した上で、世界中の子供に向けて作り直し、新しい形の面白さを出せる監督ということで、西尾監督しかいないと思いました。引き受けられるまではなかなか迷われていましたね。

西尾 企画の意図から考えて、例えば、爽快なものを求められているけれども、もともと三次元のものを二次元的なものに焼き直すとか、ハードな戦闘シーンとか、そういう要素を強調するにはかなり困難がつきまとうと思ったんです。それはやっぱり普通は悩んじゃいますよね(笑)。

――これまで手がけられてきた作品と毛色の違うところがありますよね。

西尾 そうですね。マイクロソフトさんからのオファーは「自由にやってください」というものでしたが、そうは言っても、現時点で三作も続いているゲームだし、小説も出ていて、ものすごく膨大で緻密な設定がある。ゲームの映像は、絵的にも実写に近く、“濃い”作品になっているので、それを一回どうやって解体すればいいのかを悩んだんですよね。結果的には、僕達がやれば絶対こうなる、という作品になっているとは思いますが、そこに辿り着くまでに原作から何を取り入れるか、どうすれば原作と矛盾しないのか、自分たちでそこを一回検証してからじゃないと何も呈示できないので、その過程でずいぶん、行ったり来たりはしましたね。

「Odd One Out」より

――お話の原案はマイクロソフトから?

西尾 いえ、一番簡単なプロットからこちらが出しています。二種類のプロットを提出して、先方に選んでもらったものに、もうひとつの方から捨て難い要素を拾って、最終的な一本の大雑把なストーリーを作りました。

――『Halo』を元に東映テイストでプロットを立てて、という話だったわけですね。その、実際に制作されたものの元になった二本のプロットはどのようなものだったのでしょう?

※1スパルタン
『Halo』の世界において反乱分子勢力に対抗するために計画された「スパルタンプロジェクト」で遺伝子操作が加えられたスーパーソルジャーのこと

西尾 「1337」という、ゲームの登場人物にデザインはそのままで、中身はオリジナルのキャラクターを主人公にしたドタバタ劇がひとつ。もうひとつは、『Halo』世界の辺境の惑星で、自然とともに生活している、肉体的には異常な能力を持った小さな子供たちの話です。それで、1337はスパルタン※1でわかりやすいから、彼を主人公にして話を考えることになったんです。

――ああ、1337を中心にしつつ、子供の要素をミックスすると完成版の話になりますね。『Halo』の世界に子供を出そうと思われたのはなぜでしょう?

西尾大介監督

西尾 「どんな辺境でも誰かが生きているよ」ということを言おうと思ったからですね。出したいから出しているわけではなくて。ただ、出す理由よりも、自分たちが考えているテイストをより形にしていく作業のなかで、徐々に子供って決まってくるんですよ。たしかにふたつのプロットをあわせる形で、子供が登場するアイデアを最初に考えたんですけど、池澤くんと実際にストーリー作りをする中で、ストーリーに破綻が生まれるようだったら、子供はやめようと思っていました。結果的に子供と1337の出会いや駆け引きがストーリーの骨格になってくれたので、子供である必然性が出てきたわけですが。「子供向けだから」とか「物語のハードなテイストをやわらかくするために子供を出す」というようなことはよく言われますけど、僕はそういう考え方には疑問を持たざるを得ないんです。だって、基本的には悲惨な戦争に子供が巻き込まれる話なんか作りたくないでしょう?

――そうですね……。

西尾 子供を出せば、たしかに同じ年齢層の人たちがターゲットとして見てくれるかもしれないけど、本当にハードな世界観の中で子供を出してどうするんだよ? と。その世界観と子供達との関わり方が非常に難しいんです。経験上でも、その設定を誰が処理するのか、みたいな流れになる。だから、当然であるかのように「ターゲットがこれだから同年齢の子供たちを出している」「視聴者と同年齢の主人公を出す」という考え方には一概に与するわけにはいかないんです。今回は、子供がいることで成立するような話に何とかなってくれたので、描く事ができました。

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