アニメのゆくえ201X→

2000年からの10年間は、アニメーション制作環境デジタル化の10年だったといっても過言ではありません。デジタル化は、かつて「CG」と呼ばれたデジタル画像がセルやフィルムに取って代わったというだけではなく、私たちがそれまでは見ることのできなかった新しいアニメ映像を産み出し、表現や演出の幅を広げ、制作体制や発表方法にまで変化をもたらしました。そして、それを可能にしたのがPhotoshopやAfftereffectのようなソフトウェアと、それを使うためのハードウェア、デバイスの進化であったことは、いうまでもありません。

「アニメのゆくえ201X→」第6回は、いち早くデジタル技術によるアニメーション制作に取り組み、その映像表現で多くのクリエイターにも影響を与えてきたアニメーション監督、新海誠さんにお話を伺います。デジタル作画には欠かせないワコムの最新ペンタブレット「Intuos5」をスタジオに導入したばかりの新海さんに、デジタルツールとの関わりと、アニメ制作におけるデジタル技術の可能性について伺いました!

⇒特集第1回 アニメ評論家藤津亮太氏インタビュー
⇒特集第2回 サンジゲン松浦裕暁代表インタビュー
⇒特集第3回 ニトロプラスでじたろう氏インタビュー
⇒特集第4回 ウルトラスーパーピクチャーズ 松浦裕暁代表インタビュー
⇒特集第5回 音楽評論家・冨田明宏氏インタビュー

デジタル技術が生んだアニメ監督・新海誠

――今回、新たにIntuos5をスタジオに導入されましたが、新海さんのこれまでの作品制作においてもデジタルツールが占める役割は大きいものだと思います。そこで、まず新海さんとデジタルツールとの関わりから伺えますでしょうか。

アニメのゆくえ2011→

小学生の時に国産の8bit機であるSHARPのMZ-2000に触れたのが最初です。その頃はまだマウスすらなかったので、座標を指定するようなプログラムを自分で作って絵を描いていました。マウスに最初に触れたのは高校生の頃、X1turboZというパソコンに付いてきたんです。マウスで操作する付属のグラフィックソフトに夢中になりました。今で言うドット絵の延長のようなものです。

初めてペンタブレットに触れたのは1994年、就職が内定したゲームメーカーにワコムのペンタブレットとPhotoshop2.5があったんです。まだレイヤーが使える前のPhotoshopだったんですが、それで本当に世界が変わりました。大学時代にもPC-9801のお絵かきツールをマウスで使っていたんですが、初めて触れたMacとPhotoshopはそれとは別次元のものでした。メモリの容量や色数の桁が違っていて、筆圧のあるペンで描ける。驚いて夢中になりました。

それからデジタルが面白くなってきて、当時はまだ少ない参考書を買っていろいろ勉強して2年目くらいから自分で簡単なアニメーションを作るようになりました。

――1994年頃だとまだPC-9801にフレームバッファを追加しないとフルカラーは出せない頃ですね。

そうでしたね。Windows95が出る前で既にMacは1600万色で、メモリも32MBくらい積んでいたんです。あとはやはりペンタブレットの筆圧感知ですね。ハードウェアの筆圧をソフトウェアが反映して、しかもリアルタイムでアンチエイリアスのかかった滑らかな線が描けるということに本当に感動しました。ハードウェアとソフトウェアが新しいことを可能にするということに痺れた感じです。

――ゲーム制作の現場では、いわゆるドッターとしてのお仕事はされなかったのですか?

僕は仕事ではギリギリそれをやらなかった世代なんです。メニュー用のアイコン等をドットで描くような仕事はありましたが、急速にCD-ROMのマルチメディアタイトルが増えていく時期で、3DCGやPhotoshopで描いた絵を256色に減色して使うような感じですね。いまは逆に携帯ゲームでドットの仕事もあったりするんでしょうけど、ちょうど狭間の時期でした。

――その後、自主制作アニメーションの道に進まれますが、新海さんはゲームの経験があったからこそ、最初から抵抗なくデジタルでアニメを作ることができたのではないかと思います。まだアニメ業界がデジタルを導入できていなかった時期にDoGA CGAコンテストで『彼女と彼女の猫』を見たときにすごく新しさを感じましたが、その作風やビジュアルにデジタルツールが与えた部分は?

大きかったと思います。最初は作れることだけで幸せで、映像という形にできれば絵や作品としての新しさみたいなものは重視していなかったんです。最初の数年は、道具の与えてくれる興奮、「このソフトのこの機能でこれができる」とか、「この道具があるからこれができる」ということにただ夢中でした。

アニメのゆくえ2011→

デジカメも普及してきて、写真を撮るとそれがデジタルのデータになる。自分の部屋等を撮って、当時はまだPCのスペックが低かったので、効率化のためグレースケールにしてタブレットでトレスして絵にしていくと楽しいし作品も早くできる。写真だけではなく、鉛筆で描いたレイアウトや3DCGのレイアウトもとにかくPhotoshopとタブレットで絵にしていく。『彼女と彼女の猫』という作品はそうやって作りました。

現在はスタッフも増えているので、まずは紙にレイアウトを描くところから基本的には始めます。でも自主制作を始めた頃は何が一般的な手法なのかを知りませんでしたし、とにかくツールを触っていれば楽しいので、自分一人にとって最も効率的な方法で作っていたんです。その映像が、結果的に周りから見たらちょっと新しいもの、つまり「これがデジタルで作った絵なんだ」という受け取められ方をしたというのはあると思います。

――それ以前だと、DoGA CGAで注目される作品も青山敏之さんの『PROJECT-WIVERN』のような3DCGベースの作品が多かったのですが、新海さんの登場でいわゆる「アニメ」が個人クリエイターの手に降りてきたのを感じました。

3DCGを使うことで個人でもあれだけの映像が作れることも驚きだったんですけれど、たしかに僕の作品以降、デジタルだけれども手で描いている作品というのが増えていったかもしれません。デジカメやPCでの動画編集もそうですが、予告編が動画で配信できるくらいにインターネットも普及したりと、それを可能にする技術的な環境が揃ってきた時期だったということもあると思います。

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