キム・ヒョンテインタビュー(前編)

――「キャラクターデザイン」という言葉は、韓国ではあまり厳密には使われてないことが多いのですが、実際にキム・ヒョンテさんが担当したのは、『創世記伝3』の“キャラクターのデザイン”だけではなく、ゲームのデザインワークス全般ですよね?

そうですね。メインキャラクターデザイナーとメインイラストレーター、そしてオープニングのビジュアルムービーのキャラクターモデリングを担当したことになります。

――オープニングアニメーションもですか!?

正確には、『創世記伝3』ではムービー以外は、ゲーム中のイラストレーションに参加していません。『創世記伝3パート2』からは、メインキャラクターデザインとイラストレーションのほかにも、ゲーム中のバストアップイラストやキャラクターの表情、また会話シーンのライブラリなども描きました。

マグナカルタPS2版パッケージ
マグナカルタ
韓国SOFTMAX社が、2001年12月24日に発売したPC版RPGで、同社最後のパッケージ作品となった。日本でも2004年11月11日に、PS2移植版が発売され、キム・ヒョンテの名を知らしめた。2006年5月25日PSPで『マグナカルタポータブル』が発売予定。さらに2007年には『マグナカルタ2(仮)』がXbox360版で発売される予定。
  1. 韓国版公式サイト(韓国語)
    http://www.magnacarta.co.kr/
  2. 日本版公式サイト
    http://www.magnacarta.jp/
  3. マグナカルタポータブル公式サイト
    http://www.magnacarta.jp/mcp/
© SOFTMAX / BANPREST 2004

――キャラクターデザインやパッケージのイラストレーションと、実際にゲーム中のイラストやドット絵を描く人が違うことはよくあることですよね。

一般的なことをいえば、イラストレーションはゲーム本体と分離して作業をしても、さほど問題はありません。だから、日本でもキャラクターデザインやイラストだけをフリーのイラストレーターに依頼する場合もあるようですね。だけど私の場合、イラストなどをゲームのなかのビジュアルと融和させるために、コンセプトデザインとゲーム内部の表現をもっと近いものにしたいと考えたんですね。

――それで、ゲームのビジュアルワークス全般を担当する形で作品に関わるようになっていくんですね。

PC版『マグナカルタ』からは、キャラクターデザインだけでなく、それこそキャラクターのコンセプトアートから、デザイン、イラストレーション、そのほかゲームのなかで使われる3Dキャラクターの製作、モデリング、テクスチャ、アニメーションパートなど全面的に参加しました。『マグナカルタ』のキャラクターパートの「ディレクション」を担当したといえます。そうすることで、イラストのキャラクターとゲームの中のキャラクターに微妙な差が出ないように、できるだけユーザーが違和感を感じないように気を使うことができたんです。

――日本で発行された本などでは、キム・ヒョンテさんは「『マグナカルタ』のイラストレーター」とか「キャラクターデザイナー」としか表記されないことが多いようですが。

こちらから「あれもやった、これもやった」といちいち説明するのはあまり良くないのではという判断もあったんじゃないかな。なんといっても、この作品で初めて日本に紹介されたんですから。そこで「イラストレーター」というふうに絞って強調したんでしょう。

――日本のユーザーにむけての分かりやすさを優先したということですね。日本のクリエイターならば、直接ファンに説明できるところですが、こういう韓国のクリエイター事情はなかなか伝えることが難しいでしょう。

韓国では、日本に比べるとはっきり分業化されていないので、その人のポジションが明確でないことが多いですから。「特定のパートの人」というのがいなかったから、やれる人に全部、任せてしまったというか……。市場が急成長して、いまになってようやくシステムが出来上がってきたという事情があるので、それも仕方がない部分があったんですけどね。

でも、そういう難しい環境だったからこそ、ゲームのビジュアル全般に関わることが可能だったという面はありました。現在は、ほかの人をコントロールするような役割になっています。「アートディレクター」という方が近いんじゃないでしょうか。日本でもそう表記すると思いますが。

――日本では画集「Oxide 2x キム・ヒョンテ画集」も出版され、注目を集めましたが、どういう気分でしたか?

個人的にも日本で自分の名前で本を出したいとはずっと思っていましたから……。ただ名前がそんなに大きく載せられるとは思いませんでした(笑)。

――キム・ヒョンテさんの名前を強調したかったんでしょう(笑)。

とにかく、本が出たのはただ嬉しい限りです。昔は日本で自分が何かを出せるとは思いませんでしたから。これからももっと色々な分野で、日本の皆さんに会いたいと思います。ゲームも画集も、日本で出すのは初めてでしたし、次回があるか、あればどういう形になるか分かりませんが、また別の、もっと努力した結果を見せたいと思います。

後編もぜひ、プヮチュセヨ!

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金亨泰(キム・ヒョンテ)
キム・ヒョンテ
韓国のイラストレーター、ゲームデザイナー。1997年鶴山(ハクサン)文化社およびソウル文化社で新人漫画家公募に入選。1999年ゲーム制作会社SOFTMAX(ソフトマックス)に入社し『創世記伝3(The War ofGenesis III)』『マグナカルタ』のキャラクターデザインを手掛ける。韓国で画集『OXIDE THE ART OF GENESIS』(2001年/SOFTMAX)と『OXIDE2 CARTA NUMINOUS』(2004年/SOFTMAX)、日本で画集『Oxide2x』(2005年/エンターブレイン)を出している。2005年オンラインゲーム制作会社NCsoft(エヌ・シー・ソフト)に移籍。
インタビュアー:宣政佑(ソン・ジョンウ)
韓国の漫画コラムニスト。韓国では一九九五年から雑誌や新聞で日本の 漫画・アニメを紹介するコラムを連載。日本では二〇〇二年から読売新 聞、『ファウスト』などで韓国漫画・アニメおよび大衆文化の事情を説 明する記事を書いた。他にも多様な仕事を通じて日韓のサブカルチャー の理解に励む。ちなみに日本に居住した事はなく、マンガとアニメだけ で覚えた日本語で原稿を書いている。

インタビュー&翻訳:宣政佑
記事構成:伊藤剛 平岩真輔




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