【ぷらちな】キャラを着て、街に出る。COSPAデザイナー和田洋介さんインタビュー<後編>

キャラを着て、街に出る。COSPAデザイナー和田洋介さんインタビュー<後編>

インタビュー前編では、COSPAのスタートとキャラクターアパレルの発展について、キャラクターTシャツを軸にうかがいました。後編では、日常とキャラクターの世界が交差する、よりコンセプチュアルなアイテムと、COSPAのデザインワークについて迫ります。

■キャラクターアパレルのコンセプトワーク

――COSPAブランドには、Tシャツ以外にも様々なアイテムがありますが、普段着として使えるデザインであると同時に、細かい部分まで、元となる作品のイメージや世界観がちゃんと表現されているのを感じます。

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たとえば、ジオンモッズパーカーに鋲を1つ付けるだけでも何十円かコストがかかるので、デザインとして意味のないものを作ってはもったいないですよね。プリントも、シルクスクリーンで1版作るにも10000円近くするのに、それを無駄にはしたくないじゃないですか。

お客さんにそこそこの値段で買っていただくからには、決められた原価の中で使えるモノをフル活用して、商品のすべてを、買ってくれた人を喜ばせるための情報のかたまりとして作りあげることが一番だと思います。

――作品中でキャラクターが着ているような服を、実際の製品としてデザインする作業の中では、素材やパターンといった部分もコントロールしているのでしょうか?

そうですね。最近だと『機動戦士ガンダムMS08小隊』に出てくる連邦軍とジオン軍の野戦服を作りましたが、実際に軍隊で使われている服を研究した上で、細かい所までコンセプトワークを行っています。アニメだと線を減らすために入っていないディティールを追加したり、宇宙世紀の時代には、この部分はこう変わっているんじゃないか? というようなアイデアをいれたりもしています。

たとえば、ジオン軍野戦服のパイピングはグログランテープという素材を使っています。普通にコスプレ衣装を作るとサテンパイピングにしてしまうところですが、実際の軍服を知ることで、このパイピングの処理はこうだよね、ということが解るわけです。

――ミリタリーウェアらしいマーキングや、タグにも遊び心を感じます。

プリントはシルクスクリーンですが、わざとかすれた感じにするためにスタンプをつくって、それをつかってシルクスクリーンの版をつくりました。普通は、印刷のかすれた感じもPCで加工することが多いのですが、リアルさを追求するため、あえてスタンプにしました。

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縫い付けてあるタグも、洗濯上の注意とかリアルなことが書いてあるのを、よく読むと年号が宇宙世紀になっているとか、細かいネタが仕込んであります。また、使い込むことでヨレてくる感じを再現するために素材や印刷のダメージ感を工夫しています。色も結構派手なんですけど、自分の中では「タグの色は兵士には不評で、みんな千切って着ている」という設定になっています(笑)。

ガンダムの世界は無限に広がるので、設定遊びができるという意味では一番おもしろいですね。

――ガンダムファンが身に付ければ、日常にありながら作品の中に入り込むことができるというのは楽しいですね。

この野戦服は、アニメの中では着用するとベルトラインから下がかなり開くシルエットになっているんですけど、そのままのデザインだと、普段着のジャケットとしては使いにくくなってしまうので、ダブルジッパーにして下からも開くようにすることで、どちらとしても使えるようなバランスをとっています。

胸章も、ジオン軍のこだわりとして入っているけれど、野戦用だから動きやすさを優先して刺繍ではなくプリントになりました。ボタンも、ジオンなら金ボタンかな…と悩みましたが野戦服らしいものにしています。現在から過去にいたるまで、色々な軍服、礼服のデザインから、バランスのいいところをチョイスして盛り込みました。

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――製品のコンセプトを作る上で、作品の版権元とはどのようなやりとりがあるのでしょうか?

大掛かりなものであれば、企画の段階から版権元と一緒にコンセプトワークをすることもありますが、基本的には“Tシャツ”“ジャケット”“アクセサリー”といったカテゴリーで許諾をもらって、その中で何をやるかはCOSPAの中でアイデアを作って、版権元に提案することになります。

版権元が、作品をどのように見せたいかという部分と、自分がどのようなものを作りたいかという部分でのせめぎ合いはありますが、提案するときには「これは通らないだろうな」というようなものも、たくさん出しています。

使えない企画を作るというのは、ビジネス的には良くないんですけれど、それでも「これは面白い」と思うものは、提案して通る可能性があるなら、と積極的に提案していきます。

――版権元からは、どんな反応がありますか?

COSPAブランドのアイテムは、従来のキャラクターグッズとは切り口が異なる部分も大きいので、版権元さんによってはまだまだ戸惑われることも多いですね。

ただ、最近では、長年やっていることを評価していただいて、作品の企画段階から発表に合わせてコスチュームを製作させていただいたり、スタッフ用のTシャツのデザインや、イベントのお手伝いといったお話をいただくこともあります。

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