【ぷらちな】アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!『さよなら絶望先生』シャフト《前編》

シャフトインタビュー《前編》

■デジタルに宿る魂

糸 色望先生の色指定

――最新作の『さよなら絶望先生』でも、和服の柄などといった、アニメでは表現が難しそうなものを描かれていますよね。これには通常のアニメよりかなりの手間がかかっていると思うんですが。

大沼 デジタルといえば手間を省くツールのように思う方もいると思うんですが、こだわれば工程は逆にどこまでも増えますからね。和服用のコンポジットのシステムを作ってしまえば楽にはなると思うんですけれど、それでも一つ一つの絵柄に合わせるということを考えていけば、手間は膨大になると思います。ただそういう細かいところでの積み重ねが、画面の質感や高級感を生む。つまり、デジタル環境を生かした制作が一般化したとき、そういうところで細分化が進むと思うんですよね。だから、アイデアや、コンテといったアナログな部分で、いかにデジタル技術を使ってプラスアルファができる箇所を思いつくかがますます重要になってくる。

シャフト@DIGITAL

尾石 自分も、大沼さんがデジタルに特化された工夫を考えているので、逆にあまりアナログやデジタルといったことにこだわらずにコンテを切っていますしね。コンテを切ってから、「この画を実現するためにはどうすればいいのか」というのを考える。

大沼 具体的な工程にも変化があらわれていて、例えばタイムシートの感覚はデジタルですごく変わったんだと思いますね。今はタイムシートが切りづらくなっているんです。アナログの時代だと、指示の出しかたは「この場面は透過光」「ここはクロスフィルターの何番で処理」という風に決まっていたんですよ。でも今は自分のイメージをうまく伝えるしかないんです。全体として「ここから柔らかい光が入る」みたいに曖昧な指示になってきていて、そこを撮影さんの方で組みとっていただく、という形になっています。

タイムシート
絵コンテを元に、秒単位で動きや画像効果のタイミングの指示を書き込む用紙。

尾石 だから「各パートの距離が近くて意思の疎通がとりやすい」というSHAFTの体制が制作の強みになるんですね。

新房 ただ、デジタルになっても一生懸命に気持ちをこめないと良いものが出来ない、というこの一点は変わらない。そこは不思議なもんだよね。

絶望先生#1のタイムシート

尾石 そこがアニメの良いところですよね。作り手の気持ちが入る。

新房 同じような作りでも、フィルムを観て違和感を感じるときがあるものね。

大沼 現場のテンションとか熱気がフィルムには確実に出るものなんですよね。最近痛感するようになりました。こだわりだすと、視聴者が気づきにくいようなところに手間がかかってしまうことも多いんですが、たとえ気づきにくくても、そこにかけた熱気は伝わる。その感覚は大事にしていきたいなと思います。頭で考えてものを創るようになるとお終い……とまでは言いませんが、頭で考えすぎることに対する危惧をいつも持っています。

新房 「技術的にこんなことができるからやってみました」ではなくて、「こんなことを表現したいからこの技術を使う」という風にしないと意味がない。それだけは間違いない。だから今は怖い時代でもあるんですよね。技術的にはなんでも出来るようになっているから、それを言い訳に自分にアイデアがないという事実から逃げることが出来なくなってしまった。

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©久米田康治・講談社/さよなら絶望先生製作委員会




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