【ぷらちな】アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!『さよなら絶望先生』シャフト《後編》

シャフトインタビュー《後編》

――お話を通じて、尾石さん、大沼さんのおふたりと、新房監督のいい関係が伝わってきます。最後にクリエイター予備軍の皆さんへのメッセージをいただけますか?

新房 これからクリエイターになろうという人は、自分が誰の影響を受けているのかを明確に理解する必要があると思いますね。「なんとなく作ったらこうなりました」という物言いは嘘だから。

大沼 やっぱり影響関係と言うのは、なかなか認めたくないんですよね。

新房 でも、認めないと次の段階にいけないんだよね。

絶望先生アイキャッチ原画

――音楽の世界でも同様の問題意識はあって、「サンプリング」や「マッシュアップ」という手法で新しいものを生み出す試みが長く行われていますよね。

尾石 そのへんの方法論はやはり作品を作る上で意識しています。監督ともよく話をするんですけれども、映像というものは全てやりつくされていると思うんです。あとはそれをどう組み合わせていくかの問題だと。でも、コラージュすることによってちょっと変わったものになるかもしれないという気持ちもあって、新しいものをやりたいという足掻きは自分にはありますね。

新房 問題は自分のフィルターを通すか通さないかということですね。自分のフィルターってなにかというのは、やっていく中でしかわからないものなのですが。作っているその場ではわからない。

尾石 同じものを観ても人によってフィルターを通してて出てくるものは違うから。

新房 「最初から僕はこうなんです」っていうのは嘘だから。マンガのコマの読み方に文法があるように、映像にも繋ぎ方の法則があって、それをなんとか壊したいと思うところから何かが出てくる。だけど、そのための足掻き方は、まったくのゼロから何かをやってみる、ということとは違うんだよね。

大沼 影響関係には開き直れるくらいの方がいいんですよね。自分がいつも気をつけているのは、視野を広げておいて、影響を受けるものが本当に直近のものになってしまわないように、ようするに「パクリ」にはなってしまわないようにすることです。あとは表現に関しては、新しい技術で広がった表現の裾野を誰が最初に取れるのか、というのも重要だと思います。

尾石 その点でもう少し具体的な話をすれば、パソコンで絵を描く技術がある人だったら、是非現場に来て欲しいです。何かひとつでもデジタルの技術があれば、むしろこっちはその技術に合わせて新しい表現を作ろうとしますから。

絶望先生アイキャッチ原画

――アニメのスタッフというと、動画か制作からたたき上げで……というようなイメージでしたが、実際は多様な役回りが求められていて、思わぬスキルに活躍の場があるということですね。最近では、パソコンが得意でアニメも好きだけど、MADムービーを作ったりすることで、表現欲を満たしているような人は少なくないと思うのですが、そこにも可能性を感じます。

大沼 いいMADムービーが作れるんだったら、元ネタを作っている現場に参加して、元ネタになりうるものを作ろうとしてみて欲しい、という気持ちはものすごくあります。

尾石 気軽に作れるもので自分の創作意欲を発散してしまっているのだとしたら、それは非常にもったいないですね。

大沼 あと、技能を身につけるにはやっぱり「その技術で食っていこう」と思うことが一番重要だと思うんですよ。文化祭前夜的な勢いでとにかくまずはやれるだけ暴れてみて、そこで得た評価をもって自分の見つめ直しを行う、という工程を繰り返していくことが成長には重要なんだろうな、と。言ってしまえば当たり前のことなんですけどね。

――集団作業の現場の中に飛び込むことで、自分が変わっていくことにも期待が持てますよね。

大沼 自分が凄いと思っている人たちの中に突っ込んでいって、その状況を楽しみながら、どこまで自分ができるのか足掻いてみる。この「足掻いてみる」というのが本当に重要だと思うんですよ。是非やってみてほしいと思います。別にそこで、アニメ業界が門戸を閉ざしたりというのは全然ないですから。むしろ「助けてくれ!」って(笑)。

新房 足掻くことは本当に大事ですよ。白鳥みたいに、足掻いているんだけれども水の上の部分は優雅に見せたい、って気持ちはいいんだけど、水の上の姿だけに憧れて足掻かないのはダメです。僕はもう、最近では「助けて」って言うことが全然恥ずかしくないから、悩んだらまわりに相談しちゃうくらい(笑)。

<図版>

大沼 俺はまだそこは優雅にみせたいですね。(笑)

新房 そんなこと考えてないで、もっと僕を助けてよ!(笑)

大沼 新房監督に限らず、アニメ業界は慢性的に人不足で、いつも皆「誰か助けてくれ」と思ってるんですね。だからクリエーターの卵さんたちにひとこと言えることは……やっぱり「助けてくれ!」か(笑)。

尾石 シャフトにきて一緒に夢をみないか!

大沼 一緒に倒れようぜ!

――息の合ったステキな〆をありがとうございます(笑)。

(2007年7月17日収録)

インタビュー/構成:前田久 平岩真輔

さよなら絶望先生 特装版(1)

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©久米田康治・講談社/さよなら絶望先生製作委員会.




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