「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第九回「香盤表」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。
糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
今回は制作を潤滑にさせる手法について話をさせて頂こうかなって思っています。
う~んと、ボクは色んなことを忘れがちだったりします。 何だか話をしていたりしてると「名詞」などがいつもすっぽ抜けて、「え~と、あれ何だっけ、あれ?」など、「あれ」とか「それ」とかが会話の中に多くなってきます。
かる~いボケが始まっているのかもしれませんが、昔からそういうことが多いし、私生活ではそんなに困らないのであまり気にはしていません。
でも、作品制作において聞かれたことに「忘れました」じゃ困るんですよね。
アニメにおいても漫画においても実写映画においても、制作スタッフが増えてくると共通認識をもつことが大事になってきます。
そこで、ボクのような忘れがちな人にはとてもありがたい制作書類の一つに「香盤表」というものがあります。
知らない人がいるかもしれませんので、具体的に「香盤表」というものが何なのかについてお話させていただきますね。
掻い摘んで言うと、カットごとに舞台、登場人物や衣装などをまとめた表のことです。
これを作成しておくと、制作スタッフの方々がこのカットは、誰と誰が登場するかとか、場所はどこかとか、すぐわかるので間違いが減るんですよね。
ふつうは完成した絵コンテをもとに、演出や演出助手の人が「香盤表」を作成する場合が多いようですが、ボクは演出を確認する意味でも自分で作っています。
特に締切前とかになると、各々が自分の作業に追われて皆さんイライラし始めて会話がしづらくなったりすることも多いので、前もって表を作っておくことをお勧めしますよ。
もちろん書式は自由なので、好きに作成しても良いのですが、実写とアニメでは書く必要のあることが変わってきます。
アニメだと「時刻」「天気」などを各シーン毎に書いたりしますが、実写だと「日の出・日の入」の時刻を書いたり。
アニメの場合は、そのシーンの天気や時刻によって、動画の影の落とし方や、背景美術の方の描く空の色が変わってくるので。
一方、実写の場合は外で撮るなら季節によって日の出と日の入りの時刻は変わるのでスケジュールを立てる際に重要な要素になるんですね。
そんなわけで、要は皆が分かりやすい表を作っておけば、後で自分がボケても皆が表を見て作品作るので何とかなるよってことです。
それでは、今回はこの辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)