「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

連載第四十一回「アニメ演出のお仕事って…08チェック大詰め」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

相変わらず、涼しくなったり暖かくなったりと微妙な気候が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

最近のボクの近況はといえば、来年放映予定のテレビシリーズアニメの制作に追われておりました。

毎日徹夜続きでの作業でしたが、やっとのことで先日完成し平穏な日々が戻ってきた感じです。

このアニメに関してはまた今後このコラムでも情報公開させて頂くつもりなので、詳しい内容はここでは割愛させていただきますが、12話を数人で制作するという荒行のようなことにチャレンジしたので、非常に大変でしたが勉強になることも多かったです。

コルボッコロ

ちなみにこの作品は、アミューズメントメディア総合学院さんとのコラボレーションで制作していて、学生さんたちにもインターンとして現場に参加して頂きました。

学生のうちから、こういう現場に参加しながら勉強できるというシステムはとっても素晴らしいですよね。

今後、このアニメのメイキングを書くときには、学生の皆がどうやって作品に携わったかも書いていこうと思っていますのでご興味のある方は是非ご覧ください。

さてさて、本題の演出のお仕事シリーズ8回目のテーマは「完成まで」についてです。

前回はアフレコのお話をさせていただきましたが、アフレコが終わると音関係はBGMや効果音の作成に入り、映像方面は作画・美術・撮影チェックなども佳境を向かえてまいります。

BGMというのは映像の後ろで流れている曲のことで、効果音は爆発音や足音などのアニメをよりわかりやすく見せるための音のことです。

そちらは、それぞれの担当の方が作業を行い、出来たものを確認する作業を演出や監督も行います。

作画に関しては、レイアウトの時と同じように絵コンテのイメージ通りに絵が上がってきているかのチェックを行い、動きや演技が気になる場合はガシガシ修正を入れていくのです。

アニメーターさんは自分の担当の場所しか絵コンテを見ていない場合もあるので、前後のつながりをあまり知らない時は感情が違っていたり、演技が過剰になっていたりということもあるので、そういう時はきちんとそのシーンの状況を紙に書いて説明して再度作業をお願いします。

こういうことを減らすためにも、最初の絵コンテ打合せは大事になってくるし、修正をお願いする際にもラフでも良いのでなるべく絵を描いて説明するのが大事です。

影の大きさや位置なども確認しておくと良いかもしれません。

それが終わると動画として色などがついた状態で上がってくるので、そちらにも色塗りミスがないかなど確認し、気になるとこには修正をお願いします。

そんな作業にあわせて、背景美術も上がってくるので背景の絵を一つづつ絵コンテやレイアウトと見比べてみたりして、こちらも気になるとこには修正を出します。

そして撮影確認ってのは、上がってきたBG(背景)と動画をパソコン上で、軽く組み合わせてみてちゃんと絵になっているか確認していく作業のこと。

コルボッコロ

ボクの場合はAfterEffectsを扱えるので、自分でガシガシ撮影っぽいことをやってしまいます。

商業アニメの場合でも、自分で撮影しちゃうこともありますが、基本は撮影担当の方が上げてくださるので、それをチェックすることが多いかも。 自分で全部やってると非効率的というか、間に合わなくなっちゃいますしね。

という具合に、演出さんというお仕事は可能な限り全てのものに目を通し、作品を一つの方向に導いていく作業な気がしています。

大変な作業ですが、世の中の演出さんはこれを全て行っていると考えると、どの方もすごいなって思います。

さてさて今回で商業アニメにおける演出のお仕事についてのお話しは大体おしまい。

次回は、このシリーズの最後としてオールラッシュなどの話をさせて頂くつもりです。

それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

では皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
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