「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第二十一回「絵コンテ」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
台風の季節となってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ボクのほうは、コルボッコロの作業が一段落して、別のお仕事に追われておりました。
そのお仕事というのが大作なので、非常に緊張しながらお引き受けしたのですが、これが非常にハードなのです。
作品名は『トランスフォーマー』。
もうすぐハリウッド版の『トランスフォーマー』という映画が日本でも公開となりますが、それに合わせて アニメ版が製作されていて、その作品の「絵コンテ」と「演出」を担当することになったのです。
『コルボッコロ』の制作時にお世話になったスタジオの社長さんや、東京国際アニメフェアの時に偶然出会った ワーナーブラザーズの社長さん、カートゥーンネットワークのプロデューサーさんなどとの複雑な繋がりが巡りに巡ってまわってきたチャンスなのですが、色々な方に自分をアピールしておいて良かったと思っています。
恩を何とか返すつもりで、感謝の気持ちを作品に込めて出来る限りのことをしようと奮闘中です。
作品の内容的には実写映画版の『トランスフォーマー』との相乗効果を狙うため、アニメ版のターゲット層は実写版より低年齢向きの「キッズ層」になっているようです。
絵柄もかわいらしさと格好よさの絶妙なバランスを保っているし、制作費が日本のアニメより多いこともあり、絵コンテ作成や演出のしがいはあって楽しいのですが、アメリカの絵コンテというのは誰が見ても分かるように絵を非常に描き込まなければならないため、それが大変です。
ボクが今担当しているのは20分~30分のパートなのですが、ロボットやら車やらがたくさん出てくるおかげで苦労した分だけ、ロボットを描くのに慣れてきて非常に勉強になりました。
今回の作業でとにかく気を付けたのは、飽きさせないようにカット数を増やすことと、せっかく日本人が関わるのだから日本人にしかできない生活感や間を盛り込むこと。
出来上がった絵コンテを見ると複雑な動きが多いので、動画枚数は多そうですが演出するのが楽しみです。
また、ハリウッドの脚本家さんと組むことで向こうの脚本も学べたことも嬉しかったです。
もともと 『トランスフォーマー』という作品は、「タカラ」(現在は「タカラトミー」)という日本の玩具メーカーが開発したもののようで、ボクがまだ小さい頃からアニメなど色々作られていたのは知っていたのですが、昔からロボットやメカにまったく興味をもてなかった自分がこの作品に携わることになったというのが何だか不思議な気持ちではあります。
作業が一段楽したら、アメリカのスタジオを見せてもらって、人脈を広げようと企んでおります。
こちらの作品も今後制作状況なども含め、こちらでお知らせするつもりですので、ご興味をお持ちであれば是非読んでくださいね。
それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)