「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

第二十六回「制作費」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

今日はちょっとお金のお話をしようと思います。

コルボッコロ

普通にサラリーマンとして働いていた頃は、デザイナー関連職だったこともあって、制作費や利益率など特に気にしたことはなかったのですが、自分でいろいろやり始めてからは、必要にも迫られて勉強するようになってきました。

そんなわけで、最近少しづつアニメなどの映像制作費についても詳しくなってきたのですが、特にテレビアニメの制作費が少ないことに改めて気付いたのです。

昔からアニメ業界は賃金が安いとかよく聞いていましたが、一体何故安いのかや、詳しい予算の内訳を調べてみることで疑問が減ってきました。

アニメの制作費が少ない理由は色々あるようですが、その中の1つとして挙げられるのが、中抜きだと思います。

スポンサーから出資されているお金はわりとあるはずなのですが、間に広告代理店や放送局などを通すことで分の5分の1未満になっていることもしばしば。

こういう風に書くと、まるで代理店やテレビ局が横暴のように聞こえてしまうかもしれませんが、皆さん慈善事業でやっているわけではないので、ビジネスとして間に入った会社が利益を取るのは当たり前だと思います。

嫌なら代理店を通したり放送局を通したりしなければ良いじゃん、ってことになりますしね。

ただ現時点でこのシステムが確立しているとなると、作品によって制作費は違うとは言えど、数百万から1000万円ほどで1話分の作品を作らなければならないとなるわけなのですが、今までと同じ方法でアニメを作るとなると、 原画が1カット数千円だったり、動画が一枚数百円だったりということになってしまい、物価の安い海外のスタッフへお願いする事が増えてしまいます。

良い人材は単価の高い劇場版に流れ、結果教育係が減るので、人材が育たなくなっているようです。

今はまだ良いと思うのですが、最近景気の良くなってきている中国や韓国の物価や単価が上がってきたりすると、日本アニメの制作体制は相当崩れます。

であれば、今後日本国内で制作体制を整えながら賃金も確保したいとなると、何らかの助成を受けるか制作人数を減らすしかない気がするのです。

制作人数を減らすためには、多少クオリティを下げることを覚悟するか、何でも出来る器用な人を増やす必要があると思いますが、これはなかなか難しい。

コルボッコロ

助成に関しては、国からもらったりという手もありますが、個人的には海外などでちょこちょこ見受けられる方式で作品内に公告を混ぜ込んじゃうことで宣伝費をもらうと言う手もあるのでは?と思っています。

もちろん色んな規制はあると思うのですが、何か方法を考えていきたいものですね。

今はDVD販売の売れ行きもイマイチになってきているそうですし、DVDにも買う意味のある付加価値をつけることも必要になってきていると考えています。

付加価値って何なのだろう?って最近悩みつつボクなりにアイデアをまとめているところですが、何か具体的に発表できる時期がくればまたお話したいな、というところで、ひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

では皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
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