■ライトノベル&イラストレーション

■基盤と先端~小説とイラストレーション

現在『レジンキャストミルク』シリーズは、前作『ルナティック・ムーン』のファンはもちろん、新たな読者層も獲得し、最近では既刊すべてが増刷されるなど、好評をもって迎えられています。

レジンキャストミルク(3)
(amazon)レジンキャストミルク(3)

(C)Yu Fujiwara,Kaya Kuramoto/MediaWorks
 イラスト/椋本夏夜

藤原:

『ルナティック・ムーン』は荒廃した未来が舞台でしたから、そういったものが苦手な読者は、最初から手にとってくれなかったという側面もあるかもしれません。だけど今回は、舞台がジュニアノベルの読者にとって身近な学園ですし、コメディもあるし、あるいは僕も成長して読者のことも考えるようになったし、手に取りやすい部分は増えていると思うんです。

椋本:

そこは私も気を使った部分ですね。藤原さんが用意してくれた「小説としての基盤」に上乗せする形で、私は読者にとってのとっかかりを増やそうとしました。巻頭マンガでは、本編では描かれない角度からの描写をすればキャラクターの魅力を広げられるし、あとは「リボン」とか「プリン好き」など、キャラクターにとっつきやすい要素を意識的に提案しました。

キャラクターラフ案
藤原:

硝子のことを好きになってくれた読者が、誰かに硝子を紹介する時にも、「プリン好き」とか「リボン」とかわかりやすい特徴があれば語りやすいと思うんですよ。そういう先端の部分を、椋本さんが考えてくれたんです。

とはいえ、先端の部分と中身とが乖離していたのでは意味がない。それでは、たんに記号的な「萌え」になってしまいます。メイド服とかリボンを出せばそれだけで読者はよろんでくれるか?と言えば、けしてそんなことはないですから。小説という輪郭の部分があり、そこに椋本さんが先端の部分を付加してくれた。そしてその双方を互いの連携によって密接に繋げることができた。それが『レジンキャストミルク』が読者に受け入れてもらえた理由だと思います。

今回の『レジンキャストミルク』のケースは、イラストレーターならではの発想を小説に取り込む仕組みを作り上げた、画期的な試みと言えそうです。

ただ、お二人は今回の試みについて「いきなりでは絶対に無理だった。前作を通して築き上げた関係性があったからこそ」とおっしゃっています。もちろん、作家とイラストレーターの組み合わせには、さまざまな関係があります。こうした試みが今後、増えていくかどうかは、まだ未知数のようです。

しかし、ライトノベルにとってイラストが、非常に重要な存在であることは確かです。ライトノベルにおいて、今後も、小説とイラストをめぐって様々な試みが行われていくことだけは、間違いないでしょう。「ライトノベル&イラストレーション」は、今後もそうした動きを追いかけます!

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