ライトノベル&イラストレーション

第ニ回 MF文庫J編集長 三坂泰二さん ―ライトノベル編集の現場にせまる―

角川スニーカー文庫、電撃文庫をはじめとして、実はその多くが角川書店関連の出版社で占められているライトノベル。そうした中に新規参入したMF文庫Jは『陰からマモル!』『神様家族』、そして大好評のうちにアニメが終了した『ゼロの使い魔』など、ヒット作を次々と送り出し、ライトノベル界に確固たる地位を築き上げています。

今回は、そんなMF文庫Jの編集長・三坂泰二さんに、イラストレーター志望者へのアドバイスも伺いながら「ライトノベルの作られ方」についてお訊きしました。

■ゼロからのスタート:物語だけではなく画でも売れる

MF文庫J編集部は、スタート当初、ライトノベルどころか文芸編集の経験者すら不在で、全てがゼロからのスタートだったといいます。情報誌やコミック誌の編集者をしていた三坂さんにとって、ライトノベルの最初の印象とはどんなものだったのでしょう?

三坂:僕自身は、70年代、80年代のSFブームが直撃した世代でしたから、学生時代は、それこそ翻訳物のSFやファンタジーを片っ端から読んでいました。だからライトノベルというのは、そうしたSFの流れにある存在ではないかと漠然と思っていたんですね。ところが実際に読んでみると、すごく目線が低い。しかも大人が子供にお説教や教訓を語るような部分が全然なくて、若い読者にとっての純粋なエンターテインメントを目指したものなんだな、と思いました。

ゼロの使い魔(9) 双月の舞踏会
(amazon)ゼロの使い魔

(C)ヤマグチノボル/メディアファクトリー
イラスト:兎塚エイジ

しかし、それ以上に印象に残ったのは、イラストの持つ役割の大きさだといいます。

三坂:ライトノベルというのは、物語だけではなく画でも売れるものだ、という印象を強く受けました。店頭で本を選ぶ読者が、まず最初に見るのはビジュアルだろう。いかに小説のイメージを読者に喚起するイラストを付けるかが非常に大切なんだ、と。

作品の持つ魅力のベクトルを、そのまま増大させてくれるようなイラストをいかに選ぶか。あるいは、面白いんだけど、多少地味だったり暗かったりするような物語であれば、どうそれを補ってくれるイラストを選ぶか。それはとても重要ですね。

特に後者は難しいんです。いくら人気イラストレーターを起用しても、小説の内容とあまりに異なるものだと、結果的に読み手の満足度が低下してしまい、それ以降ついてきてくれない。巷でよくいわれる「ライトノベルは一巻目はイラストで売れ、二巻目以降は物語で売れる」というのはまさに事実だと思いますが、そこでイラストと内容の「損益分岐点」を見極めるのが、編集者の役割の一つだと思いますね。

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