■ぷらちな特別講義
「THE FROGMAN SHOW」のテレビ放映が好評を博し、「やわらか戦車」のキャラクター商品展開が大々的に始まるなど、今、ネット発の新たなメディア「Flashアニメ」が熱い注目を浴びています。
未来のクリエイターに役立つ情報を、分かりやすくお届けするウェブ講義「ぷらちな特別講義」第1回は、早くからFlashに注目してきた編集家の竹熊健太郎氏にうかがう“Flashアニメーション”について。センスと個性が試される、クリエイターの新たな選択肢、Flashの可能性に迫ります。
僕個人は、さほどFlashの技術的な側面には詳しくはありませんから、特にそれを取り巻く状況について的を絞ってお話したいと思います。
僕はもともと個人製作のアニメに昔から興味がありました。いずれコンピュータ技術の進歩によって、アニメは個人ベースで簡単に作れるようになる、なってほしいと考えていたんです。
2002年に新海誠さんによる個人製作アニメ『ほしのこえ』が現れたときは、いよいよそういう時代がやってきた、と思ったんですね。ところがそのあとが続かなかった。『ほしのこえ』は、あまりにクオリティが高すぎて、後に続くクリエイターが出てこなかったんです。
新海さんをプロデュースしたコミックスウェーブは、その後も個人アニメのプロデュースを行い、自主制作CG映画『惑星大怪獣ネガドン』なども発売されましたが、作者の粟津順氏はもともとプロのCG屋さんでしたし、しかも制作に二年半もかけているんです。
新海さん自身も、その後、大作路線をとるようになった。『雲のむこう、約束の場所』は、確かに見事に出来ているけれども、制作費が1億円もかかっているというんですね。たしかに1億円で劇場用のアニメが作れるというなら安いかもしれないけど、個人じゃそんなお金は用意できませんし、普通、製作に何年もかけられませんよね?
たとえば皆さんが『ほしのこえ』や『ネガドン』を見ても「すごい」とは思っても、「自分でも作れるかも」とはなかなか思えないと思うんですよ。『ほしのこえ』は作品単体ではヒットしましたが、個人アニメの時代を切り開くことはできなかった。作ろうと思ったら、とてつもない才能と技術と熱意が必要で、みんなが気軽にまねをするには敷居が高すぎたんです。お金がかかったり、技術の習得に時間がかかるものは、なかなかポップ・カルチャーになりえないんですよね。
だから。もう少し気軽に、マンガを描くくらいの手間暇で、アニメが創れるようにならないかな? と僕は思っていたんです。そんな時に少しずつ盛り上がってきたのがFlashだったんですね。「ゴノレゴ13」で有名になったポエ山さんのFlashアニメ「quino」を先駆けに、蛙男さん、ラレコさん、丸山薫さんといった方々をはじめ、少しずついろんな表現が出てくるようになった。最近では、蛙男さんのFlashアニメが「THE FROGMAN SHOW」としてテレビ朝日で放送され、大きな話題を呼ぶなど、いま、個人作家によるFlashアニメがひとつのムーブメントになろうとしています。
ひとつのきっかけとなったのは、2005年に映像作家のルンパロさんを中心とした大阪の有志が企画したFlashを中心とした上映会+見本市「JAWACON」が始まりですね。蛙男さんやラレコさんといったFlash作家のビジネス展開のはじまりも実はここにあります。