■ぷらちな特別講義

■映像ビジネスの革命

表現としてはもちろん、ビジネスモデルとしても、Flashアニメの展開は興味深い。特に、蛙男さんの「THE FROGMAN SHOW」は、アニメビジネス、映像ビジネスのあり方を根本的に変えかねない、実に画期的なことをやってます。

映像を作りたいという方は覚えておいてほしいと思いますが、映画やドラマ、アニメといった映像作品の著作権は、基本的にはスポンサーと製作会社、脚本家にしかありません。現場のクリエイターは作った映像の権利を持つことができないんです。蛙男さんはもともとTVドラマの助監督していまして、現場で汗水たらして作品を作っている当人たちが作品に対して権利をもてないことにずっと苛立っていたそうです。せっかくがんばって作っても、著作権はスポンサーやテレビ局にしかない……。

だから一旦、TV界を離れて、どうしたら映像作家が一人で権利を持てるか、自由な作品作りをできるか、ということを考えたんです。

そこで達した結論はというと、「一人で作る」「お金をかけない」ということでした。普通、商業ベースで映像を作ろうと思ったら1000万円単位でお金がかかるんですね。当然、個人ではまかないきれるものではありませんから、制作費を出してくれるスポンサーをさがさなければならない。でも、制作費を出すということは、権利よこせということだから、当然、作家はスポンサーの要求に従わなければいけなくなります。すると、いろいろと縛りが生まれてしまい、自由な作品作りができなくなってしまう。

菅井君と家族石
菅井君と家族石
蛙男商会のFlashアニメ作品。菅井家の面々が繰り広げるポップ&ブラックなエピソードの数々がネット配信で人気を呼び、DVD化まで至った。

でも、Flashであれば、ほとんどスタッフの人件費だけで映像を作ることができる。通常のアニメの何十分の一、何百分の一です。だから「お金はいりません、そのかわり権利もあげません」ということができるんです。実際、テレビ放映された「THE FROGMAN SHOW」も、DVD化された「菅井君と家族石」も、権利はすべて蛙男さんとエージェント会社のDLEにある。だからビクターから出ている「菅井君と家族石」で、ビクターのマスコット・ニッパーくんを食べちゃう、なんて表現ができるんですよ。

映像作品というのは、とかくお金がかかるものとされてきましたが、個人でやるのであれば、月に二、三十万くらいの収入でも十分食っていける。そう考えると(蛙男さんやラレコさんの作品は、かなりのビッグビジネスになっていますが)、むしろFlashアニメとは、大企業が参入してもうまみがない部分でのビジネスに向いていると思う。

今後、ネットの発達で確実に到来するであろう、スモールビジネスの時代に対応した表現なんですね。

3/4
次ページへ



  最近の記事

ぷらちなトップページに戻る ぷらちなへお問い合わせ