背景の背景を訪ねて―美しい背景画を描くために大切なこと《前編》絵師ゆうろ絵師インタビュー

背景の背景を訪ねて―美しい背景画を描くために大切なこと《前編》絵師ゆうろインタビュー

「背景」は簡単な計算で上手く描けるようになるる――そのために必要な心構えやテクニックとは何か? ゆうろさんインタビュー後半では、作例画像を交えつつ、その秘密に迫ります。背景画の魔術師・ゆうろさんによる実践講座であなたもレベルアップ!

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■ゆうろ式テクニック講座・3 「六畳間を描いてみよう」

――キャラが立つ空間の奥行きは「計算」で描けるということですが、実際に描いてみると部屋の中の家具や、道に止まっている車などの大きさの感覚がつかめずに、上手くできないという人が少なくないと思います。

普段から、身の回りの物の大きさをを意識するようにしたほうがいいですね。「机の高さは大体何センチ」とか、「乗用車の車体の長さは大体何メートルで、車高は何メートルくらい」とか、そういった数字を、意識して見ることは大切ですよ。

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――身の回りの物のサイズを意識することで、絵を描く時に大きさの基準が設定できるようになる。そこから、正しいスケールを絵全体にいきわたらせていく……という流れですね。まとめるとシンプルですが、実際にやってみるとなかなか大変そうです。

では、イメージしやすいもので実際にやってみましょう。ここでは、わかりやすく6畳間を描くことにします。

まず、畳の大きさというのは横が85センチくらいで縦が170センチくらいです。京間と江戸間で若干サイズが違いますが気にしないでください。その上にベッドを置くと考えると、大きさはシングルで幅100センチ、長さ200センチくらい。机も、人間の大きさを基準に考えれば奥行きが60センチくらい。横幅はいろいろあると思いますので、手近なものを参考にしておよそ120センチ…というように決めてしまえば、部屋の見取り図はこのように機械的に出てくる。

部屋の見取り図

――いつもこのように最初に見取り図を描かれるんですか?

見取り図を描くことは、背景を描くときにはかかせませんね。ゲームの背景仕事の場合は、依頼主が送ってくれることもあります。

見取り図を描けたら、今度は構図を切り取るためのカメラ位置を考えましょう。ゲームでは、カメラの高さは120センチくらいに設定することが多いです。そうすると、胸の辺りから顔の辺りにかけての部分が、ちょうど画面の中心に入る高さなんですね。

――なるほど。

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つぎに、絵のメインとなるキャラクターを描いてしまいます。基本的に人間は、股下と股上がほぼ同じくらいの長さなんですね。すると、一点透視で描く場合は縦方向にパースがつかないので、キャラクターの身長を160センチに設定したら、腰までの高さがほぼ半分の80センチくらいになる。この長さは、先ほどの見取り図の畳の大きさとほぼ一緒ということになるので、この長さを基準に3倍してやればキャラクターの足元の床の線が描ける。同じくキャラクターの身長160センチの4分の3が120センチなので、さきほど設定したカメラの高さがわかります。この線に沿って設定した消失点に向かって奥行をとっていって……。

こうやって畳を描いたら 、あとはもう最初に描いた見取り図にあわせて、ベッドや机を配置していけばいい。残りは部屋の高さですけど、普通のアパートだと、天井は若干低めで、220センチくらいが基準なんですね。そうすると、床面からカメラの高さまでが120センチくらいだから、残りの部分が100センチになるように、12:10くらいの割合になるように計算して天井のアタリをとればいい。

かんたんな部屋のパースのとりかた

――奥行きはどのように決められましたか? 単純に等分してしまうと部屋が斜めになってしまうので、奥に行くほど圧縮されるのではないかと思うのですが、その間隔をどうされたのかがちょっと気になりました。「画面の奥に消えていく線がうまく描けない!」という悩みは、初心者にはありがちなものだと思うので、詳しくお聞きしたいです。

なるほど。奥行きをつける段階には基準となる部屋の枠組みが決まってしまっているので、それに沿う形で等分――今回の例だと、6畳間だから畳の幅三枚分ということで3等分ですね――して、そこに斜めに線を引いてやれば、等分していくところまでは簡単にできると思います。なので、おそらく、問題になるのは、初めに引く基準の線を、どれぐらいの長さにしておくと自然に見えるのか、ということなんでしょうね。そのあたりからは、僕も憶測というか、経験でやってることが多いんです。厳密にやろうと思えば、計算でやることも可能だとは思うのですが……。

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