■真実の涙を描くために……。アニメスタジオが翔立つ時―-P.A.WORKS堀川憲司代表インタビュー

真実の涙を描くために……。アニメスタジオが翔立つ時―-P.A.WORKS堀川憲司代表インタビュー

■「その空気を、体感させてあげたかったんです」

――そもそも『true tears』という作品が制作されることになった経緯を伺いたいのですが。もともとはPCゲームが原作として存在して、それとはまったくことなった、オリジナルの作品として制作されることになったのはどういった流れで決まったことなのでしょう。

制作の話しが来た段階ではもう、バンダイビジュアルの永谷プロデューサーから、「原作とは『真実の涙』という共通テーマで、青春ものを作って欲しい」ということだったんですね。原作ゲームを作ったLa’crymaさんと、永谷プロデューサーの間では既にコンセンサスは取れていたのだと思います。

比呂美

――そこから西村監督にはどういった経緯でオファーを?

僕は、西村監督が以前手がけられた『風人物語』の作風が非常に好きだったんですね。文学的なというか、飄々ひょうひょうとしていて行間のリズムがあるというか、そういうところが良いなぁ、と思っていて。加えて、DVD巻末に監督のインタビュー映像があったんですが、その映像からにじみ出てくる人柄に、磊落らいらくさというか、スタッフのやりたいことを酌みとって、楽しませながらうまく舵取りしてくれる感じを受けたんですね。それで、今回の作品を、うちのような制作体制の現場でやるときに必要な監督だと感じて、今まで西村監督と一緒に仕事をしたことは一度もなかったんですが、「この監督に頼めたらなぁ」と思って電話をしました。

――シリーズ構成の岡田さんは、どういった形で参加されることに?

眞一郎と三代吉

監督と作風についてお話したときに、「そういう話であれば是非頼みたい人がいる」と、強く岡田さんを推されたんですね。西村監督がその場で電話をかけられて、後日二人で会われたときに、正式に依頼をしてOKをもらったと思います。岡田さんのシナリオを読むと、技術やありふれたアイデアの引き出しでシナリオを組み立てている印象じゃないんですよね。波乱に満ちた人生経験をもっていて、そこからシナリオを生み出している印象を受けます。

ものすごく感情が豊かで、愛情が深くて、同時に、とても力強い、世の中を睥睨へいげいするような部分も持っているけれど、共同作業というものも良く知っている。だから僕のような、のほほんと生きてきた人間にはいつまでたっても岡田さんの人となりが掴めません。僕は、ライターの人生経験からにじみ出るような一言は、グッと人に届くと思うんですよ。シナリオ一本のなかにそれが欲しいですね。岡田さんはそれがポロポロとこぼれ落ちるだけの人生経験を、あの若さで持っていますね、多分、想像ですけど。

――キャラクターデザインの関口可奈味さんの起用はどのような理由で?

眞一郎と乃絵

まず、こういったジャンルの作品では安定したキャラクターが求められるので、総作画監督制を取る必要があると思いました。絵の力はもちろん、現場を破綻させずに総作画監督をやり通すだけの力がある、というのが条件でした。加えて、富山の本社にいる原画マンのほとんどが、ほぼ新人原画マンだったのですが、その育成を兼ねつつ総作監の作業をやっていただける方にお願する必要があった。

それで、過去に何度かいっしょに仕事をして、信頼できる関口さんにその方針を話した上で引き受けて頂きました。これを同時にやるには、相当な負荷がかかったはずですよ。その点、彼女は「天性のアニメーター」というか「THEアニメーター」なんですね。本人はそれをどれくらい意識しているかは謎ですが、そういった大変な課題を苦しそうな素振りもみせずにクリアーできるだけの力を持っているんです。全話終わった時点から振り返っても、適任だったと思います。

キャラクター設定 キャラクター設定

――かなり戦略的な起用だったわけですね。

元請一発目の作品として、作品を作るときにこういう取り組み方をする会社だということをアピールしたかったんですね。僕はどんな作品をやるときにも、作品ごとに1つ課題を決めて「今回の制作の戦略課題はこれ」というように進めるんですね。何に挑戦するかを決めた方が、判断の拠り所がはっきりすると思っているので。今回は「社内の作画班を中心に、3班できっちりと最後まで安定したクオリティーで回す」ということが制作的な戦略目標だったということです。

――社内ということにもこだわられていた。

そうですね。今まで本社の作画スタッフは、下請で「作画パートを請けている」という意識が強かったと思うんです。けれど元請で作るからには、「自分たちで発信している作品」だという、その現場の温度を体感させてあげたかったんです。今のところ本社には作画スタッフしかいないので、他のセクションが共同作業する現場の空気はまだ体感させてあげられていないんですけど、自分たちで全話数発信する場合の参加意識は今回でなんとなく掴んでもらえたんじゃないかな、と思います。

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©2008 true tears製作委員会




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