やめてくださいクラウザーさん、その人もう……アニメ版『DMC』に夢中ですから!!

やめてくださいクラウザーさん、その人もう……アニメ版『DMC』に夢中ですから!!

■いでよ! マッドモンスター!(アニメで)

マッドモンスター

――音楽やギャグももちろんですが、映像面も大変充実していますね。監督の演出の特徴である、2コマ作画も随所に観られて。クラウザーさんのギター早弾きシーンであるとか、ライブハウスのシーンはかなり印象的な絵作りでした。ちなみに、2コマを使うシーンと使わないシーンの使い分けはどのように選ばれているのでしょう?

基本的には大して考えてないです(笑)。ただ、本気でクリエイターが作っているって言うのをアピールしていかないと、お客さんも冷めてしまうと思うんですよね。特に『DMC』では、「本気でやっているからこそ、余計にギャグにつながって面白く見えてしまう」という作品になることを目指したので、そういう意味で、たくさん枚数を使ったポイントもありますね。

――とりわけ、OPと10話で登場する「マッドモンスター」の演奏シーンの迫力はすごかったです。これまで日本のアニメーション、あんなに生々しく、同時にケレンに溢れたアニメならではの演奏シーンはなかったように思います。

ありがとうございます。そこまで誉めていただくとなんだか申し訳ない気持ちにもなってしまいますが(苦笑)。やはり、あくまで『DMC 』は「音楽もの」だという点は外せないんですよね。「DMCってカッコいいバンドじゃん。変なメイクしてるけど、音楽をやっているクラウザーさんはカッコいいじゃん」とは思って欲しいんですよ。その臨場感、周囲の人間が感じている空気みたいなものを知って欲しい。だからOP映像で彼らが「カリスマ」であるということを強く打ち出したんです。いかんせん本編はテンポ感が命で、きゅうきゅうに物語を詰め込んでいますから、ライブシーンにあまり多くの時間を割けないんですね。その分のフラストレーションをOPで少しでも解消してもらおうという意識もありました。

――なるほど!

でも、10話くらいまで進むと、さすがにOPにも慣れてしまうと思うんですよ。噛み続けてきたガムの味がなくなってしまうようなもので(笑)。「お前ら、いいかげんに本編でちゃんとしたライブやれよ!」と思う方もいるだろう、と。その対策として、あの「マッドモンスター」のライブシーンを用意したんですね。あの回だけ、ものすごく長く尺をとって、思いっきりライブやらせるって言う。クラウザーさんの代役になったバロドスが披露する、いいかげんででたらめなライブも含めて長く見てもらって、「音楽もの」としての『DMC』という作品の魅力、DMCというカッコいいバンドの姿を改めて観てもらおうと。

そこを再確認してもらうことで、それ以降に置いたラッパーの鬼刃やデスメタルの帝王であるジャック・イル・ダークとの対決に説得力が出てきますし。鬼刃のカッコいいラップに「ジャマイカ・スルメイカ~」みたいなダジャレで返してしまうわけですからね、クラウザーさんは(笑)。その分のカッコよさを補完してあげるための苦肉の策でもありました。楽しんでいただけたなら嬉しいですね。

――緻密な計算ですね……。

いえ、そんなに頭はよくないですよ。いたってシンプルです。アニメというのは、体を動かして、髪を動かして、口パクさせて、画面全体も動かして、そこに音楽も入れて……と、ものすごい労力をつかって、やっとマンガの1コマに及ぶか及ばないかの大変労力のかかる表現だと思うんですね。しかも、その作業に入る前に、自分たちがどんな素材を用意しなければいけなくて、それを用意するためには何人のどんなひとを集めなければいけなくて、たくさんのスタッフを集めてからもどうやってその間で目標を作っていくのか、常に考える必要があるんです。

『DMC 』では、特にこの一連の「どうやったら映像にこの1コマの意味が生まれるか」を、ずっと考えていた感じです。さじ加減が難しくて、効果音や特殊な動きで細部を目立たせようとすると、今度はその部分が画面の中で主張しすぎてしまう、でもそこを目立たせないと原作の持ち味が崩れてしまう……そんな調整をずっとやり続けていましたね。西田(カミュ)がカラオケを歌うシーンをどう気持ち悪くみせるかでずっと悩んでいたときは「何やってんだろう?」と思ってしまったりもしましたよ(笑)。でもそれをやらないと、ファンのみなさんにアニメ版を原作マンガと、少なくとも同等にみてもらえるくらいの位置には行けない。そういう意味では、最初から敗北を認めた上でやっていたといってもいいです。もしこのアニメの出来が良いといってもらえるなら、そこが大きいかもしれませんね。マンガには勝てない!(笑)

――(笑)。

マンガの方が絶対おもしろい。だから、せめて一番近いとこまでは上がって行きましょう、というモチベーションですよ。10人いたら10 通りの正解がある中で、一応、誰もが「このアニメ化はアリだ」「許そう」と思ってもらえたら、それでスタッフ全員報われますよ。もちろん、「アニメは原作を超えたね!」と言ってくださる方がいたらそれはそれですごく嬉しいんですけど、でも、今回に関しては「アリだ」と言ってもらえる方が嬉しいと思っています(笑) 。いや、こう言ってるからといって、「それじゃ、原作を超えたと思ってたけど、『よくやったんじゃない?』程度に評価をとどめといてやるよ」とかいわれたらそれはそれで悔しいんですけど(笑)。

――監督のフィルモグラフィー的にも、『ギャグマンガ日和』(※演出として参加)、『蟲師』と培ってきた「コミック原作をアニメ化する方法論」の集大成的な意味もある作品なのかという印象も受けました。

ああ、そうですねぇ。『蟲師』でも『DMC』でも、基本となるやり方は変わってないですからね。作業量は違ってますけど(笑)。『蟲師』の美術監督さんとこんなやりとりをしたことがあるんです。僕が「作業の大変な作品にしてしまってすみませんでした」と謝ったら「線の多いもの少ないもの、リアルなものアーティスティックなもの、どんなものであれ、仕事はすべて大変です。その作業に自分がどれだけ納得できて、どれだけ力を注ぎ込めたかが重要であって、やりきったと思ったら大変さなんて全部なくなっちゃうんですよ」と。僕もそうですけど、仕事をやり終えてから「簡単だからよかったなぁ」なんて思うことはないんですよね。

さすが長濱監督だ……

――長濱作品の魅力の源泉を感じるお言葉です。

ともあれ、そんな風に、原作とひたすら向き合って作らせてもらった作品なので、クリエイターを目指している方にも観てもらって、刺激を受けてもらえたら嬉しいですね。それでスタッフもみんな報われると思いますし。で、アニメを観たあとに原作また読んでもらって、それで実写の映画にも行ってもらって、ぐるぐると回っていくと嬉しいなと思っています。よろしくお願いします。

――ありがとうございました!

(2008年7月3日、STUDIO4℃にて収録)

⇒まだまだGo to DMC!次の標的は悪魔的制作スタジオのスタッフだ!!

インタビュー/構成:前田久

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