Production I.Gにリアルドライブ!『RD 潜脳調査室』中武哲也アニメーションプロディーサーインタビュー
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の世界観を受け継ぎながら、「メタリアル・ネットワーク」という新しいネットワーク概念が普及する時代を舞台に、老齢のダイバー、ハルさんと女子高生ミナモの爽やかな交流と、人工島と呼ばれる海上都市とメタルの間でおきる様々な事件を描いた話題作『RD 潜脳調査室』。
士郎正宗作品ならではのクールな設定と、上山徹郎によるキャラクターデザインが話題を読んだ『RD』の企画から制作までの背景を、本作でアニメーションプロデューサーを務めた、プロダクション I.Gの中武哲也さんに伺いました。
――まず、中武さんのお仕事のポジションについてお話いただけますか。
自分は現場側のプロデューサーといわれるんですが、プロダクション I.Gにはアニメーションの制作ラインが複数あって、それぞれ、課と呼ばれていて、その中の6課を担当するラインプロデューサーになります。
――これまでプロダクション I.Gではどのような作品に関わられてきましたか?
最近では冲方丁さん原作の『シュヴァリエ』(2006)と、塩谷直義監督のOVA『東京マーブルチョコレート』(2007)ですね。『東京マーブルチョコレート』では初めて賞(SICAF2008グランプリ)を頂きました。それ以前だとCLAMPさんの『劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君』(2005)、テレビシリーズ『お伽草子』(2004)、制作担当としてゲーム『テイルズオブディスティニー2』(2002)『テイルズオブシンフォニア』(2003)などに参加していました。
――『RD 潜脳調査室』では企画の立ち上げから関わられているのしょうか?
そうですね。最初に士郎正宗さんの企画書を拝見した段階で、シリーズ構成の藤咲淳一さんの参加は決定していて、そこから藤咲さんと一緒に連想される”士郎正宗感”というものを詰めていきました。それで、士郎さんの企画書と藤咲さんの書かれた構成案を読ませていただいて、作品への耐久性がある監督、確かな面白さを作れる監督を入れたいと思い、古橋一浩監督にオファーをしました。
――中武さんが古橋監督にお願いしようと思った決め手は?
かっちりとした軸のぶれない作品にしたかったんです。その点で、古橋監督は、流行りに流されない、普遍的な要素を大切にした作品作りをされている方なのでお願いしました。
――世界観としては、ハードなSF設定でパッと見るには難しそうに思えるのですが、実際はすごく日常的な、普遍的な面白さを追求されているように感じました。
SFの言葉にとらわれると内容が難しくなるんじゃないかということは、本読み(脚本会議)の時から結構言われていて。現場的にはできる限りハードルは低くしたい、趣向として「最もわかりやすいSF」を目指しました。
舞台は2061年なんですけど、我々が生きている現在から想像できる未来を設計しようと最初に考えて、実際に起きる事件も、身の回りで「これってなんだろう」とか手に取りやすそうなものをテーマとして各話の脚本に落とし込めたかなと思っています。
今の時代はメールで伝えたりとか簡単にできるんですけど、ここぞという時は、手紙に想いをこめて相手に伝えることがあるじゃないですか。そのメッセージには情感が籠るわけですよね。そういう時代が変わっても変化しないもの、そういうエピソードとか、日々の食べ物に対する疑問とか、そういう素朴なテーマを大切にしています。
――出てくるガジェットも、日常の延長にあるもので、とらえやすいですよね。#5「スーマラン」や#6「ラブ・レター」は、暖かくていいエピソードでした。周りでも『RD』はハードな話だと思っていたけど、「愛」をテーマにこんな話をやるんだ!と反応が。
最初からそこは固まってました。コミュニケーションというものを重視した演出で、作中で手を繋いで情報を交換するんですけど、みんな電脳化してるから本当は接する必要は無かったりするんですよね。情報だけがスッて行き来すれば済むんですけど、それだけではない。言葉だけでは伝わらない気持ちをコミュニケーションで伝えるように、システム以外の部分に人の想いを付加していけるよ、みたいなことを、説教くさくなくやりたいと(笑)。