「アニメ」で生きていくということ・谷口悟朗監督×ヤマサキオサム監督ロング対談第一回

■燃料を切らさないために

――お二方には情熱を保つために努力されていることは何かありますか?

谷口 私はもう、生きてくだけで精一杯ですから。

ヤマサキ 何を言ってるんだか!(笑)

谷口 いやいや、本当に怖いんですよ、私。仕事がないと。

ヤマサキ それは僕もそうだけどさ。情熱……まあでも、モチベーションは新しい企画が決まって、監督を任されたら必然的に上がるでしょう?

――それはご自分で持ち込まれた企画でも、先方から来た企画であっても同様ですか?

対談第二回

ヤマサキ 同じですね。たとえば『イタズラなKiss』は知り合いのプロデューサーから話をもらったものだったんです。

最初は「僕に『イタKiss』?『ラブコメ』?」みたいな驚きはあったけど、やってみると面白かった。

人気のある原作物には人気が有る理由があるんだよね。そこをちゃんと理解さえ出来れば、責任感も意欲も湧いてくるものです。

――ご自身の企画であった『地球へ…』の場合はいかがですか?

竹宮惠子
マンガ家。『地球へ…』や少年愛マンガの嚆矢『風と木の詩』などで’70年代少女マンガ黄金期の一画を担う。

ヤマサキ 『地球へ…』? う~ん……あの作品は特別だよね。自ら竹宮(惠子)先生のところに行って、直談判してやらせていただいた作品だったからね。

今の時代にリメイクする作品として『地球へ…』は絶対意味が有ると思っていたし、どうしても自分でやりたい作品だったしね。

深夜枠だと思っていたのが土(曜)6(時)に決まったのはびっくりしたけど、ある意味、とても恵まれた状態で作らせていただいたと思っています。すごいプレッシャーを感じましたが……(笑)。

地球へ…

そういう紆余曲折も込みで、やってみると「どんな作品でも面白い」と思います。苦労した作品ほどその思いは強いし、基本的に本気で取り組みさえすればつまらない作品なんてないです。必ずしも、いつも満足できるものが作れるわけではないんですけど……。

谷口 私はどちらかと言うと、企画を持ち込む時もありますが、企画を私に頼むということは、中身が変わっちゃってもいいんだよね? というくらいの気持ちで挑みますね。それで企画から外されたことも何回かあるんですけど……。

ただし、生活しないといけないから。モチベーションはまずそこで保たれますよね。

――生きていくために、というのがまずは大きい、と。

谷口 あとは、外部からよく燃料投下されるんですよ、私。

『無限のリヴァイアス』という作品でテレビシリーズの初監督を務めた時は、まわりの制作さんや営業の人が、何かあるたびに「あの監督だったらこう判断する」みたいにベテラン監督の名前を上げて批判するんですね。

無限のリヴァイアス
『無限のリヴァイアス』
’99年サンライズ制作。巨大宇宙艦に閉じこめられた400人をこえる少年少女たちの、生き残りをかけた人間模様を描くSFアクション。
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コードギアス 反逆のルルーシュ
『コードギアス 反逆のルルーシュ』
’06~’08年サンライズ制作、キャラクターデザインはCLAMP。架空の近未来日本を舞台に、二人の対照的な少年のそれぞれの戦いを描くピカレスクロマン。
コードギアス 反逆のルルーシュ 1 [DVD]をamazonで見る

これがうざったくって。うざったくって。「だったらその人のところに持っていけばいいじゃない!」と思っていた。

これがすごいモチベーションになるんですよね。

ヤマサキ (笑)。

谷口 そういうことが多いですよね。『コードギアス(反逆のルルーシュ)』を始めた時も大量に燃料投下をされたので、「ああそうかい。だったら……」ということがあったりしましたし。

――ちょっと逆恨み的というか……(笑)。

ヤマサキ 不屈な闘志で燃えるタイプなんだね、谷口くんは。

谷口 コンプレックスから始まってるからだと思うんですよ。

ヤマサキ え、コンプレックスあるの!?

谷口 私、ほとんどコンプレックスですよ。

ヤマサキ そうなんだ……全然そう見えないけど……。

《アニメを好きになりなさい!第三回は熱気あふれる制作現場にお誘いします。》

(2009年5月27日、アミューズメントメディア総合学院にて収録)

司会:野口周三(AMG学院長)
構成:前田久 平岩真輔

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