大作連続ものとしては14年ぶりに復活したNHK連続人形活劇『新・三銃士』。4月から朝(総合テレビ 7:45~8:05)の再放送が決定したほど人気の本作では、繊細でダイナミックな人形の演技や隅々まで作りこまれた美術が話題を呼んでいます。
三銃士のひとりポルトスを演じ、「操演指導」として後進の育成にもあたる操演者(人形つかい)のおかの公夫さんと、「映像デザイン」として『新・三銃士』の世界観を形にしている神藤恵さんが語る人形劇の醍醐味や現場の様子を、聞くべし!聞くべし!生かすべし!!
まずは人形劇界きっての名優、おかの公夫さんのお話からです。
■人形劇いまむかし
――人形劇のクレジットでは必ずと言ってよいほどお名前が入っているベテランでいらっしゃいますが、人形劇の世界に入られたきっかけからうかがえますか。
趣味で友達を集めて人形劇をやってはいたんだけど、最初はサラリーマンとして就職したのね。でもある日、満員電車にどうしても乗れなくなっちゃって。それでつとめをやめて、人形劇団に入りなおしました。縁にも恵まれてテレビの大作に出つづけることができて、キャリアは今年で43年。
――特に思いいれのある役はありますか。
一番は『人形劇 三国志』※1の関羽かな。大きな役がいきなり来たから緊張してね、一所懸命やりました。今でもフィギュアなんかを家に飾ってあるんだ。あとは『新・三銃士』の前にやった『平家物語』※2の弁慶と、清盛亡きあと平家をひきいる平宗盛。宗盛の体型はポルトスに似てるんだよね(笑)。
――そういったこれまでの作品と『新・三銃士』で変わったところはありますか。
ハイビジョンだし、ひとつひとつの画面をきれいに撮ることが大事になっているよね。カメラワークは複雑だしカット割は細かいし……おかげで収録時間ものびて、えらい時代になっちゃったなあ(笑)。
昔は正面から撮るだけで、15分丸ごと1カットだったんだよ。ひとりで何役もやるから走りまわって大変だったけど、手や頭が見切れても勢いで押しきっちゃえるようなライブのおもしろさもあった。時代の要請の違いですね。ほかのジャンルの手法も取りいれて、いまの人たちが求める作品を作らないといけない。
――『新・三銃士』は奥行のあるセットを生かした、本格的なアクションやカメラワークでも注目されていますね。
たとえば、広い森を走っているところを俯瞰で撮ろうとすると、奥の方は下まで映るから、奥に行くにつれて頭を下げないといけない。前に来る時は逆で。あと、今回はアップが多いから、普段はやらない細かい顔の動きが要求されるし。目線を決めたところに照明が入ると、人形が生きてるって感じがするでしょう?
だから、体力と適応力がますます必要になっているよね。本番1回終わるとくたくたになるくらい。若い人が育ってくれると、僕は森重久彌みたいにゆったりかまえた芝居に専念できるから(笑)、いま一所懸命に教えているところ。みんな、だいぶうまくなってきました。
新しいことに対応するにも、経験があるからこそできることはいろいろあるんだよね。人形のつかいかたはもちろん、鳥が飛んでいる場面を撮るのにテグスでふわふわ動かそうとか、演出のアイディアが豊富なベテランもいるし。