NHK連続人形活劇『新・三銃士』操演・おかの公夫さん&映像デザイン・神藤恵さんインタビュー

■人形つかいという役者がいる

――本番を拝見して、せまいところで動くだけでも特殊技能だなあと圧倒されました。

人形1体に操演が3人も4人も付くことがあるからね。せまいところに大勢がひしめいて、人生の縮図みたい(笑)。

※3
舞台の下から棒であやつるタイプの人形。4ページで詳説。

どうやって移動するかっていうと、頭が出ないように水平を保って、中腰でひざから動く感じでサササッと小走りに。アヒル歩きって呼んでいるけど、高等技術なんだよ。変なところで息を吐くと人形もぶれるしね。特に今回は棒つかい人形※3だから、うっかりすると上下したり傾いたり、姿勢を保つだけでも大変。この人形、けっこう重いんだよ。

――人形という動きが大きく制約されるもので演じるために大切なことはなんですか。

対談第三回

「らしく」見せることだな。体の傾けかたひとつ、顔や手の角度ひとつで、表情がガラッと変わるんだよね。逆に、動きすぎるとうるさくなっちゃう。キャラクターになりきって、でもそのままではなくエキスを抽出して、最低限の動きで表現するわけ。ポルトスだったら、太りぎみだからおなかをたたいたり汗をふいたり。人間だけじゃなく物の動きだって、なりきってらしくやるんだよ。

だから、若い人に一番言うのも、むだな動きをしないようにってことです。夢中になるとついつい動かしてしまうけど、ゆっくり動いて決めるところをピタッと決める方が、見ていても気持ちがよいでしょう。その辺の型というか体のついかいかたは、日本舞踊や歌舞伎に通じるところもあるかもね。

――『新・三銃士』には、ファミリー向けの楽しさと同時に大人だからこそクスッと笑えるところもありますよね。

NHK連続人形活劇『新・三銃士』
※4『ひょっこりひょうたん島』
‘64年~’69年。海を漂流する島を舞台にしたドタバタ喜劇。’91年にはリメイク版も放映。
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※5
テレビ人形劇では声を先に収録するプレスコが多い。

ポルトスの初登場シーンなんか、女性と布団の中でゴソゴソしていたものね。あれは僕の提案。それで、みんなうまくいかない恋に振りまわされている。三谷さんの趣味だと思うんだけど(笑)。そういうおかしさを生かすためにも、リアルな芝居にしています。『ひょっこりひょうたん島』※4みたいな、人形劇だからこそ許されるマンガちっくな表現も楽しいんだけどね。

――おおもとの演技プランからやっていらっしゃるのですね。

人形指導の佐藤東さんや演出さんに、「それは違う!」って言われたりもするけどね。照明さんが「ここまで来れば顔にライトが当たります。」とか、毎回いろんな人がいろんなことを言うのを聞きながら、自分のやりたいこともやって。そうやってねる中でよいものができてくる。

セリフにあわせる※5のはもちろん、カット割やカメラワークも頭に入れなきゃいけないし、いろんなことをいちどきに考えなくちゃいけないから、みんな悪戦苦闘していますよ。

――テレビに特有の大変さもあるのでしょうか。

舞台だったらだいたいで通用することも、テレビだとごまかせないからね。たとえば、目線をきっちりあわせるためには、モニターを見ながら動かなくちゃならないわけ。で、モニターだと自分の感じる左右とは逆に映るでしょう。これに慣れるだけで何年かかかる。なおかつ画面に切りとられた時によい形でないといけない。

――キャラクターの人数に比べて操演者の人数が少ないですが、ひとりで何役も演じたり、途中で操演者が入れかわったりするのですか。

ちょくちょくあります。たとえばリシュリューとミレディは、両方もうひとりの操演指導の磯辺美恵子さんの持ち役なんだけど、同時に出てくることも多いから、そういう時は僕とかのベテランがどちらかを演じる。ずっと一緒に仕事をして、キャラクター像を共有しているからできることだよね。信頼関係でね。おたがいの芝居を観察して特徴的な動きを踏襲して、アドバイスもしあう。

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