アニメのゆくえ2011→

ニトロプラスの「10年」

――お話を伺って、これまでのニトロプラスの10年の歩みは、まさにこの10年間のコンテンツと、それをとりまくビジネスモデルの変容と重なっていたと、あらためて感じました。最後に、これから先の10年で、ニトロプラスが目指すものについて伺えますか。

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 根本的には、今までの流れと変らないと思いますね。スタッフや自分が作りたいものを作る、という姿勢を保ちながら、時代に合わせて立ち位置だけは変えていく。

 例えば『Phantom』の頃には「すべて自分達だけで作る」ということを目標にしていました。クライアントありきで学習ソフトや玩具を作るのとは違い、我々なりに、企画やアイデア、マーケティングデータに出ないような感性の部分で挑戦して、前例主義では到達し得ない、半歩先、一歩先の成功を掴んでいきたいと思っていたんですよ。

 でも、そうして何本かゲームを作ったあとに、どうしてもそれだけでは到達できない部分が見えてきたんですね。当たり前のことですが、自分たちができないことは、どうしてもできないということ。作品表現や内容もそうですが、より大きなマスでの宣伝や海外販売など、苦手なことはやっぱりできないんです。

 アニメの企画や、5pb.さんとやっているようなコラボレーションの企画は、連携によって得意分野を組み合わせることができる。今まで作れなかったような魅力を持つ作品を生み出すことができるんです。ニトロプラス純正ならではの作品もつくりつつ、これからもそういう感じで貪欲に作品作りの幅を広げていきたいかなと。

――なるほど。

 最近は、グッドスマイルカンパニーさんと連動することが多いので、よく松戸の事務所まで足を運ぶのですが、ニトロプラスも最初は松戸にあったので、その度に昔を思い出すんです。「どんな思いで会社を作ったのか」とか「悪いところを直す過程で、原点まで失っていないか」とか。マーケティングに迎合するばかりでなく、人を驚かせるものを作っていきたい。自分達が本当に面白いと思うところで勝負したい。その感覚をいつも持ち合わせていきたいと思っています。

 アニメの企画は色々な人の考えを取り入れていくものですから、軸がぶれそうになることはどうしてもあります。その中で、守るべきゴール地点を死守する力を、ニトロプラスは保っていかなければならないと常々思います。

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――ビジネスは大事だけど、そこにとらわれすぎてはいけない、と。

 大ヒットは偶然が生むものなんだ……という考えを忘れないようにしたいですね。『まどか☆マギカ』だって、これほどの大ヒット作品になるとは、誰も思っていなかったわけで、やはり売れる・売れないは偶然です。だから、失敗を恐れずに挑戦していきたい。偶然を呼び込む感性や努力は大切にしつつ。

 いろんな人とコラボレーションできる柔軟な力を持ちつつ、自分たちの信じる部分は曲げないというバランス。そんなニトロプラスの持ち味を、これからも大事にしていきたいんです。

(2011年10月、ニトロプラスにて収録)

インタビュー/構成:前田久(@maeQ
平岩真輔(@hiraiwa)草見沢繁(@shigeru_suso

連続特集:アニメのゆくえ2011⇒

第1回 アニメ評論家 藤津亮太氏インタビュー「2011年もチャンネルはいつもアニメですか?」
第2回 サンジゲン松浦裕暁代表インタビュー「二次元からサンジゲンへ―3DCGで描くアニメのNEXT」
第3回 ニトロプラス代表でじたろう氏インタビュー「混沌のアニメ業界に輝くクリエイター集団の輪郭(エッジ)~これまでとこれから ニトロプラスの10年」
第4回 ウルトラスーパーピクチャーズ 松浦裕暁代表インタビュー「BLACK★ROCK SHOOTER 今から始まるウルトラースーパーピクチャーズの物語」

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