アニメのゆくえ2011→

「作れる」現場を維持するための仕組みを

――アニメ制作会社だと、これまにでもIGポート(Production I.G)や、GDH(GONZO)などが持株会社の形式をとっていますよね。

僕もGONZOにいましたが、新会社は、普通のホールディングスとはちょっと違う形の方がいいと思ったんです。ちゃんと「作れる」現場を維持するために、株主や海外投資家にも同じ意思を持っていて欲しかったので。

――具体的には、どういった形でしょうか?

例えばグッドスマイルカンパニーにとって、アニメというのはフィギュアの原作である場合も多く、それが良いものになればフィギュアだって売れる。アニメの製作委員会の仕組み上、制作会社に配分されるのは映像パッケージの売上げが主なわけですが、そうではなくマーチャンダイズの資金をうまく使って現場を維持・発展することができれば、我々にとっても、彼らにとってもメリットがあるはずなので。そのための資金を投入したり、海外とのやり取りをしたりするためのホールディングカンパニーを作って、そのグループにサンジゲン、Ordet、トリガーというスタジオがそれぞれ自立してブランディングしていくことで、ホールディングスの資金や機能を活かせるんじゃないかというのが基本的な部分ですね。

――メディアミックスで全体のビジネスは成功したけど、制作会社にはあまり利益がなかったというような不公平感を無くせるような仕組みを作ろう、ということですか。

アニメ会社がそういう形で利益を得られないのは、ある意味では当然なんですよ。負うリスクが少ないですから。基本は作品を作った対価で会社を回していく。そこに投資をすれば回収もできますが、やはり機能としては「作る」ことに特化した集団なので、何倍にも膨らませて売るという手段は、普通は持っていないですよ。それが出来ている会社もありますけれど、業界全体を見れば、万年資金不足であるというのは明らかだと思います。実際にいいものを作っている現場よりもお金を儲けている、ということに不満があるわけではないのですが、そうでないアニメの作り方があるんじゃないかと。

――なるほど。

資金を持っている株主が、我々のことを気に入ってくれて良い作品が作れる現場を維持したいのであれば、それを元手に自分達で作品に投資してやっていくという形に挑戦できるのではないかと考えたんです。アニメ制作会社は、アニメを作るためにやっていて、最初からボロ儲けしようとして始めた人は殆どいないと思うんですよ。商売のノウハウや人材もないので、結局あとから「売れたのになんで還元されないんだ」と不満を言っているだけなんですよ。それが嫌なら最初からやればいいんじゃないかって。

当然、受けた仕事で利益を出さなければいけないんですけれど、より良く投資をして、より良い作品を作るためには、その形を自分で作らなければ誰もやってくれないので。メーカーさんも売れる作品に対しては資金を回してくれるけれど、やはり全てが売れるわけではないので、自分たちで出来るところは自分たちで、維持、発展させるためにやるべきことはやらないと。

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――トリガーが合流することになったのは、『B★RS』で今石さんに声をかけたことからの流れですか?

『B★RS』は単純に今石さんが入るだけで、CGの見え方や期待感が全然違うと思ったんですね。現場のモチベーションや成果が全然違ってくる。ガイナックスの頃から今石さんとサンジゲンの関係は上手い連鎖反応が続いていて、これから先も一緒にやりましょうと。「CGを使いたいわけではなく、サンジゲンとやりたいんだ」と言ってくれるので、すごく有り難いなと思っています。今石さんの持ち味があって、凄く楽しいですし、達成感もある。だからお願いして。

――『天元突破グレンラガン』や『Panty&Stocking with Garterbelt』からの熱い信頼関係が続いているわけですね。

トリガーの参加に関しては、彼らが会社を設立する時から、一緒にやりましょうという話をしていたんです。既にブランディングが出来ているようなものなので、色々な所から声がかかっていたみたいですが、 サンジゲンとOrdetが同じビルに入るけど、一緒にどうですか? といった話から、もっと具体的に、密にやれる体制を考えませんかということになって。諸々の条件も絡めて、最終的に代表の大塚(雅彦)さんが、僕と一緒にやることのメリットが大きいと感じてくれて、合流することになりました。

――Ordetは京アニ出身者も多く、ぬるぬる動く作画、トリガーは金田(伊功)さん流のパキパキと動く作画のイメージで、それぞれタイプが違う会社ですよね。

サンジゲンも、自分達のスタイルができてくると思うんですよ。リミテッドアニメーションのCG化というのが、らしさといえばそうですけど。作品のテイストも出てくると思うので、現状だと、あまり可愛い子ども向けとかのイメージはないですよね。一時期はロボットものばかりやっていたので。最近はキャラクターもので、『ブラック★ロックシューター』が放送されると、また印象が変ると思います。

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