■AKIHITO・インタビュー

――ディック・スミス、リック・ベイカー、スタン・ウィンストンなど、すばらしい特殊メイクのアーティスト達がいますが、過去の作品で、AKIHITOさんのお勧めを教えて下さい。

ザ・セル
ミュージックビデオやコマーシャルなど斬新な映像美に定評があるインド人監督、ターセム・シンの映画デビュー作。ジェニファー・ロペス演じる心理学者が特殊な機械で凶悪犯の不可思議な精神世界に入り込む。衣装デザインを日本人デザイナーの石岡瑛子が手がけている。

自分が楽しく見る事ができる作品が、影響を与えてくれる作品だと思います。どんなにメイクアップが良くても、映画作品そのものが良くなければ、メイクも死んでしまいます。個人的に好きな特殊メイクっぽい作品をあげると「ザ・セル」ですかね。あの独特の世界観が好きです。

――AKIHITOさんにとって、キャラクターを創造するということは、どのようなことなのでしょうか?

よくわかりませんが、自分が唯一、一番でいる事が出来る時でしょうか。時に苦しく、時に興奮し、時に楽しい時間です。

――どういったところから発想を得、形にしていくのでしょうか?また、これまでご自身でデザインされたもので特にお気に入りのものがあったら教えて下さい。

発想は色んな所にあると思います。自分の場合、ふとしたときに思いついたり、ふと見た作品や物の形から、考えが浮かんだりします。

今までの作品の中では特に無いです。作品に特に強い思い入れは無く、いつも新しい物を好んで制作しています。なので、自分の最新作が一番のお気に入りかもしれません。

――デジタルが進歩した映画業界ですが、スターウォーズに代表されるように全てがデジタル化されてしまってはいても、ミニチュアやメイクアップなどアナログな部分は残り、共存しながら、お互いに進歩していくのではないか? と思っています。AKIHITOさんはどのようなお考えでしょうか?

共存はしていくと思います。が、おそらく予算の大きな映画作品では、造形はCG用のサンプル、CG用のライティングに使用され、メインはCGにとって変わるでしょう。でもB級映画では充分に今後も造形が生かされる気がします。

ただ、厳しい世界になっていくのは確実だと思っています。

――また、メイクアップの進歩ですが、ロン・チャイニーJrが狼男に扮していた頃から、格段の視覚的進歩、技術的進歩を遂げていると思います。これから特殊メイクというのはどういった方向へ向かっていくのでしょうか? AKIHITOさんのお考えやご自身がイメージしているものを教えて下さい。

特殊メイクは、映画で使用されるのが一番良い方向だと思います。今後もそうだと思います。一般化するには、あまりにも時間と費用がかかりすぎるからです。

自分のとてつもない夢は、パリコレで自分デザインの特殊メイクのファッツション・ショウをやってみたいと思っています。後は、有名女性誌の表紙を飾りたいですね。

――センス(感性)を磨く……という言葉がありますが、AKIHITOさんにとって、センスを磨くとはどういったことでしょう。日々気をつけていること、実行していること、後続の若者へ勧めることなどはありますか?

いつも自分のモチベーションを高くキープし続ける事。良い環境で良い人達とともに作品を制作する事。

日々気をつけることは特にありません。今ある目の前の仕事を確実に丁寧に仕上げることです。 今あなたの近くにいる一番凄いと思う人が、世界で一番尊敬できる人です。そんな人達が沢山いる良い環境で作品を制作できれば、勝手に感性は磨かれます。良い環境を選びましょう。 高いもモチベーションを維持することは凄く難しいです。仕事では、時に予算や、人間関係、時間等によって、そぎ落とされます。モチベーションをいつでも高い位置に維持できる強い気持を持ってください。

インタビュー:野口周三
構成:平岩真輔

AKIHITO(あきひと)
AKIHITO
福岡出身。TVチャンピオン「特殊メイク王選手権」で3連覇を果たしている他、「アナザヘヴン」(2000年/飯田譲治監督)特殊メイク、「ウルトラマンコスモス」怪獣デザインなどSFXの現場で幅広く活躍。現在はロサンゼルスに移り特殊メイク工房KNBの彫刻家として、映画「ハルク」のプロップや、「エイリアンVSプレデター」クイーンエイリアンのデザイン、「ナルニア国物語」キャラクター造形など、活躍の場を世界に広げている注目のアーティスト。
AKIHITO official Web「しにせや」
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