■『アタゴオルは猫の森』野口周三×山国秀幸対談

■長年愛されてきた作品の映像化

野口:監督に西久保瑞穂さんが選ばれたのはどんな理由からですか?

山国:それはやはり『アタゴオル』の映像化に向けて長年熱心に動いてらした先ほどお話した松村傑さんの希望ですね。松村さんは、西久保監督が昔作られた音楽をたくさん取り入れた作品の印象がとても強かったそうなんです。それで、是非、ということでお話を持って行ったら、西久保監督も『アタゴオル』の原作のファンだったそうで、喜んで引き受けていただけた、と。

実は、監督をはじめとして、音楽の石井竜也さんや、ゲストで出演していただいた佐野史郎さん、谷山浩子さんもみなさん長年の『アタゴオル』ファンなんですね。今回の映画化はそういったファンの皆さんの力に大きく支えられています。

ワイヤーフレーム

野口:昔から熱心で息の長いファンの多い作品ですからね。しかし、それだけ愛されている作品だと、そのファンの気持ちを汲み取っていくために苦労された点も多々あったと思うのですが、どうでしょう?

山国:ファンのみなさんもそうですし、その意味では何よりますむらひろし先生のチェックも厳しかったですね。シナリオはもちろん、キャラクターのたちの頭身のバランスであるとか、何度もやり直しをしました。その都度、現場は大変だったと思います。

野口:平面の絵を立体に起こしていくときに、元のイメージを保つというのは大変ですよね……。

山国:止まったモデルを作る段階ではもちろん、動いたときにも印象が変わりますからね。本当に現場は大変だったと思います。どうしても限られた時間の中での調整でしたから。

野口:それじゃ、声優さんを選ぶ面でも大変だったんじゃないですか?

山国:監督からは、「ヒデヨシはぜひ山寺宏一さんで」という要望があり、これは全員一致でした。ただ、お忙しい方なのでスケジュール調整などが大変でした。その他のキャストの方は、監督とプロデュースサイドの間で意見の違い等があり、決定するまでに相当議論をしました。

野口:個人的には夏木マリさんの達者な悪役ぶりがとても印象に残りましたね。あの人選はどこから?

アフレコ風景

山国:今回、ストーリー上で重要な登場人物というのが、ヒデヨシとヒデコとピレアという三役で、もちろんプロデューサーとしてはキャストに話題性が欲しいところなのですが(笑)それ以上に、この三人の力量が足りないと作品の根幹が崩れてしまうという恐怖感がありました。そこで第一条件として、とにかく上手いひとにお願いしたいと思って、そんなところから夏木さんは候補にあげました。安心感はもちろんですし、夏木さんなら、ピレアを単なる悪役にせずに、「女王」が持っている貫禄の部分と、どこかで秘めている「女性としての切なさ」を表現していただけると思ったんですね。結果的に、そこは上手く出たと思いますし、夏木さんご自身にも凄くノって演じていただけたので、本当に良かったと思っています。

野口:ヒデコ役の小桜エツ子さんもまた素晴らしいんですよね。

山国:小桜さんはスタジオ入られたときの第一声の時点で良かったと思いました。感情移入のポイントになるキャラクターですから、ヒデコのキャラクターが崩れてしまうと、映画として成立しなくなってしまう。キャスティングには恵まれたと思いますね。

野口:脇役のキャスティングも、谷啓さんはじめ意外なひとが出ていていいですよね。それを探すのも映画の楽しみのひとつ、という感じがします。

山国:皆さん、あまりにも違和感がないので、黙って聞いてるとわからないですからね。是非楽しんで探していただきたいです。

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