【ぷらちな】萌え4コマ、いいカンジ? まんがタイムきらら編集部インタビュー

まんがタイムきらら編集部インタビュー

ここ数年、かわいらしい絵柄でキャラクターの魅力を前面に押し出した4コママンガ――「萌え4コマ」が、従来の4コママンガ読者の枠を超え、幅広い層で話題を呼んでいます。そのパイオニアであり、現在も『ひだまりスケッチ』『ドージンワーク』など数々の話題作を送り出すトップランナーであり続けているのが、4コママンガ雑誌の老舗出版社・芳文社です。

「萌え4コマ」の専門誌が作られる現場では、日夜どのような努力が行われているのでしょう? 『まんがタイムきらら』に創刊から編集として関わられている、小林宏之さん、篠原猛さんにお話を伺いました。

■『まんがタイムきらら』のできるまで

――もともと、ファミリー4コマ誌の分野で大きな存在であった芳文社が、どのような流れで『まんがタイムきらら』という雑誌を立ち上げ、「萌え4コマ」というジャンルを広く展開されるに至ったのでしょうか。

小林 この10年くらい、出版不況で雑誌が売れなくなってきたと言われていまして、昔から雑誌中心の収益体制だった弊社もなかなか厳しくなってきていたんですね。コミックス中心の収益体制へ移行しようとしても、そもそも4コママンガという分野はストーリーマンガに比べてページ数がなかなか稼げないですから、コミックスにしづらい。どんなにがんばっても1年に1冊くらいしか出せない。しかし、そうであっても、やっぱりコミックスとして売れるものを4コママンガの中から作り出さなければ先がない。そんな独特の状況がありました。

――それが「萌え4コマ」の発見につながった?

小林 創刊時からいるもうひとりの編集が、アキバ系の作品に強い男だったんですね。それで、うちの武器である4コママンガと、アキバ系の人たちの趣向を組み合わせることはできないかと言い出しまして。ちょうどそのころ、ファミリー4コマの中でも男性から支持される可愛い絵柄を描く4コマ作家さんが増えていたので、じゃあその人たちと同人でがんばっている人たちとを合わせた雑誌をできないか、と。そこで『まんがタイムきらら』が生まれました。

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©ヒロユキ・芳文社

――ただ同人作家を連れてきて雑誌を作ろう、という話ではなく、ベテラン作家さんたちの力も重視されていたということなんですね。

小林 やはり、芳文社の武器であり財産というのは従来の4コママンガの読者さんなわけですね。それを無視して「萌え系の4コマで行こう」というふうにいきなりぽーんと球を投げたところで、誰も反応してくれないだろう、と。新しいお客さんをしっかり引きつけつつ、昔からのお客さんたちにも支えてもらえる雑誌を作らなければ創刊しても長続きはしないだろう、とも思いましたし。だから、最初は本当に進んでる「萌え」の好きな人たちから見れば非常にずれた中途半端な作りになってしまうかもしれないけれども、それは編集が現実的なすりあわせを何とかしていこう、と。それで、最初の形ができあがりました。

――流通の面からも、ベテランの起用という判断があったのではないかと思うんですが。

小林 取り次ぎに話を通すに当たって、今ファミリー4コマのなかで人気がある、可愛い絵柄を描く最先端の方がそろってます、という点が、この雑誌の大きな“売り”になったことは間違いありません。ただ、並行してまんが専門店を中心に売り込みに回ったときの店員さんの反応が、同人を中心に活躍されている作家さんを起用することに対して、とても好意的だったんですね。そのときに我々の中で”きらら〟の進むべき方向性がはっきりとイメージされました。

――創刊の頃の『まんがタイムきらら』に描かれていた作家には、4コマで連載をきちんと読ませる、全体での緩急の付け方といったきわめてテクニカルな部分で非常に安定したものがあって、それが同人系の新人作家たちによい影響を与えたのではないかと思うのですが。

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篠原 たしかに、『きらら』を立ち上げたときには、きっちりファミリー4コマでキャリアを積んできた作家さんと、同人系で商業誌経験の浅い作家さんが混沌としていて、どうしても、お互いにギャップを感じていたと思います。読者も、「4コママンガの延長線に萌えの絵柄ばかり集めたら面白いんじゃないか」という潜在需要をターゲットに集めたところはありましたけれど、やはり根底には「きちんと4コママンガを読みたい」という層が強くいました。

もちろん、我々としても、これまで長年4コマをやってきた強み――4コマ連載の組み立てのリズムであるとか、どこまでキャラクターで読ませていいのかの線引きであるとか――は活かしたいというのがありましたので、そのバランスには気を配りました。特に、たまたま手にとった方でも笑えて、なおかつ、毎回続けて読めばキャラクターに親しみも出てきて、より深く楽しめるようになるというバランスを保つ。そういう読者目線での配分というのは、我々編集も無意識のうちにやっていたと思います。

小林 ベテランの作家さんから同人系の作家さんが学んだところは多々あったとは思いますが、雑誌を作る側から見ても、同人系の作家たちのポテンシャルはかなり高かったです。そして、なによりオリジナルを描くことに飢えていました。話を持っていくと、皆さん口を揃えて「オリジナルをやりたかったんです」って言うんですよ。同人系の作家が描いているコミックアンソロジーって結構な種類が出ているのに、なぜ彼らにオリジナルを描かせないんだろうと、逆に疑問でしたね。

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