【ぷらちな】アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!『さよなら絶望先生』シャフト《後編》

シャフトインタビュー《後編》

――シャフトの新作としては、大沼さんの初監督作品で、美少女ゲームが原作の『ef - a tale of memories』も控えていますね。

ef - a tale of memories
minoriのPC向けノベルゲーム『ef - a fairy tale of the two.』を原作にアニメ化。2007年10月6日よりチバテレビほかU局で放送開始!
  1. 『ef - a tale of memories.』 公式サイト
    http://www.ef-memo.com/

大沼 関わった作品をみればご理解いただけると思うんですが(笑)、僕自身「萌え」系のゲームが好きなんです。剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)さんの作品、高橋龍也さん、水無月徹さんの手掛けられたLeaf作品、そのあとにkey、そして『ひぐらしのなく頃に』……と結構ミーハーに楽しんできて、今は『うみねこのなく頃に』が気になっている、とかそんな感じで(笑)。だから、この作品のオファーがシャフトにきたときには「自分にやらせてくれ!」と。

<図版>

――アニメ化にあたっては重視されているポイントは?

大沼 「ef」は元々、『ほしのこえ』や『秒速5センチメートル』の新海誠さんがOPムービーをやられていたりして、映像美をすごく大事にしている作品なんです。そこはアニメでも大事にしたいと思っています。ただ、当然ですが新海さんをそのままなぞってもダメですからね。それプラスαの部分を入れるつもりでやっていきます。シナリオ面も同様です。自分も含めて、原作のファンにとってゲーム版は絶対的なものなので、アニメ化にあたってのプラスαは重要ですけど、その加え方がちゃんとゲームの雰囲気に沿っていないといけないな、とは思っています。

――具体的にはどのようなところでしょう?

大沼 シナリオの行間を埋めることですね。アニメ化することでゲームの世界が広がる、というのが原作との関係として重要だと思うんです。もちろんアニメを原作の付属物にしようとは思わないので、それ単体でも観られるものにする必要があるんですけど。もともとがゲームということもあって、二次元的な作画とデジタル的な表現の兼ね合いというのはやっぱり悩みますし、ほぼ初監督なので、「自分の色」みたいな部分で悩んでいる部分もありますね。

――行間を埋めるといえば、『ひだまりスケッチ』では短いエピソードの積み重ねで日常の空気感を出す4コマ原作を、30分の連続したアニメ作品として、みごとに構成されていました。

新房 『ひだまりスケッチ』は、普通なら20ページくらいの日常的なストーリーが4コマの形式に凝縮されている作品なので、それを展開していくことは、方法論としてそんなに難しくはなかったんですよね。もともと『かりあげくん』や『コボちゃん』とかを全巻持っているくらい植田まさしさんのマンガが大好きで、4コマにはうるさい人間だということもあるでしょうけど。

――日本のアニメには『サザエさん』という4コマがもとになった長寿作品がありますから、日常的な4コマをアニメ化するメソッドというのは、もともとアニメの世界にあったものなのかもしれませんね。

新房 そうですね。その昔ながらのメソッドに「萌え」を組み合わせる方法論が開拓されてなくて、そこを『まんがタイムきらら』の皆さんがやられたんじゃないですかね。芳文社さんはコロンブスの卵を見つけたんだと思いましたよ。『ひだまりスケッチ』をやらせて貰ったことはありがたかったです。4コママンガはまだまだやってみたいですね。(参考:「萌え4コマ、いい感じ?―マンガタイムきらら編集部インタビュー」

――これまでのお話で、新房監督の示す大きな方向性の下で、尾石さん大沼さんのお二人が対称をなしているのがシャフトというアニメスタジオのカラーにアクセントを与えているのかな、という印象がますます深まりました。

大沼 そうですね。どちらかといえば、僕の方が「商売人」的で、尾石さんが「クリエーター」的なんですかね。

尾石 そんなカッコいいもんじゃないですよ。

大沼 そういいたくなる気持ちはわかるんだけど(笑)でも俺の方がより俗物的で、スタンスが視聴者寄りなのかな、と。

尾石 俺もちゃんと視聴者の皆さんのこと考えてるって!(笑)「萌え」に関しても、多分皆さんが思うより意識していると思いますよ。作品には必ず「萌え」を入れないといかん、とすら思ってるくらいですから。ただカッコいいだけの映像を作るなら実は簡単なんです。でも「なにスカしてんだ」と自分でも思うような作品にはしたくない。どっかで外していかないと面白くないと思うんです。

ネギま?!OP

――萌えキャラというのは、ビジュアルとしてはとてもポップなものですよね。尾石さんの映像では、それをそのままカッコいいものとして表現されていると思います。

尾石 「萌え」をやることが何か妥協の産物のように勘違いされている方もいると思うんですけど、作り手としては全然抵抗無いです。今、時代は「萌え」なんだから、それをきちんと受け止めた上で自分なりの「萌え」アニメをつくるのがいいかなと、思っています。

――大沼さんの場合、趣味的にも世代的にも、ゲーム業界に入るという選択肢もあったと思うのですが、アニメ業界を選ばれたのにはどういう経緯があったのですか?

大沼 動機としては、何か一本、自分で作品を作れればいいかな、ということでしかなかったんですよ。尾石さんは、業界に入る前から自主制作アニメを作られていたんですけれど、自分の場合は、パソコンでゲームを作るという選択肢がありました。ただ、そこで一番目立つ要素が絵だったので、それを突き詰めていった先がアニメ業界だったんですね。最初は作画をやっていましたが、だんだん自分の絵に対する執着心が弱いように感じてきて……。それで、やりたいことは何かを考えたら、演出だったんです。その後、撮影も勉強したのですが、そうしているうちに多人数だからこそできるアニメの作業の面白さにどんどん触れていったんですよ。

新房 尾石さんとは真逆だよね。尾石さんは「俺はこうだ!」みたいなところがある。

<図版>

尾石 自分の中でこうしたい、という思いがすごくあるんですよね。

大沼 尾石さんの場合はひとりで突き詰める。自分の場合は突き詰める作業を多人数でやる。どちらが正解というのでもなく、こうしたスタイルの違う二人がいることがスタジオの特色になっている、というのはたしかにあるんでしょうね。

尾石 大沼さんがこうくるなら、俺はこうしようかなという棲み分けが出来ているところがいいかなと思うんですけれども。

大沼 そうですね。尾石さんの担当回を観て「そうきたか!」と思うときがあって、それが視聴者の間でも話題になっているときは悔しいですしね。

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©minori/「ef」製作委員会. ©蒼樹うめ・芳文社/ひだまり荘管理組合. ©赤松健・講談社/関東魔法協会・テレビ東京
©氷川へきる/スクウェアエニックス・ぱにぽに製作委員会.




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