ライトノベル&イラストレーション

■ライトノベルのイラストを書く、ということ

それでは、ライトノベルのイラストレーターはどのように決まり、また挿絵はどのように描かれているのでしょうか?具体的に伺ってみました。

三坂:前述したように「作品のベクトルを増加させる、あるいは、作品の足りないところを補うイラスト」ということを念頭に、編集部が何人かの候補者を挙げて、作家に提案します。作家によっては自分でイラストレーター候補を挙げてくださることもありますが、基本は編集部と作家が相談して決めています。

そこからイラストが実際に出来上がるまでは、様々な場合があるので、一概には言えませんが、多くの場合は、作家が一冊分の小説を書き終えてから、それを読んでもらって描いていただきます。

挿絵を入れる箇所については、編集部が「ここは是非入れて欲しい」というシーンをいくつか指定し、あとは読んでイメージがわいた箇所、描いてみたい箇所をイラストレーターから提案してもらう、という場合が多いです。ライトノベルのイラストを描く以上、やはり文章を読む力というのも必要かもしれません。ほとんどのイラストレーターは、送った小説を全部読まれます。すごく忙しい方にお願いする時は、事前にこちらがあらすじを説明したりするんですが、それでも「全部読みます」と言われる方が多い。それがやはりプロのプライドなんでしょうね。

イラストと小説が密接に関わるライトノベルだけに、他にも様々な工夫がされることもあるそうです。

三坂:作家によっては、先にイラストがあった方が小説が書きやすいという方もいますし、執筆中、編集者から見て「ちょっとキャラクターが弱いな」と感じたりした場合などに、作家が具体的なイメージをつかめるよう、プロットや作品の冒頭部をイラストレーターに読んでもらって、先にラフを起こしてもらったりすることもあります。

ライトノベルに慣れている作家の中には、キャラクターの容姿や服装など、イラストの比重が大きい要素については、初稿の段階ではあえて細かく書かずにおいて、イラストが上がってきてからそれを元に修正する、という場合もありますね。

現在、大きな話題になり、メディアミックスの中心的コンテンツともなっているライトノベル。「ライトノベルの挿絵を描くのが夢だった」という新人イラストレーターもいるそうですが、ライトノベルの出版数に対して、ライトノベル・イラストレーター志望者があまりに多すぎる、そんな状況にはならないのでしょうか?

タラ・ダンカン(3)魔法の王杖〈上〉
(amazon)

(C)メディアファクトリー
イラスト:村田蓮爾

三坂:あくまで予想ですが、日本人ってアニメ・コミックをはじめ、キャラクタービジュアルがすごく好きになっているんですね。昔は、一般文芸にちょっと絵がついているだけでも駄目だという状況だった。ところが現在は、マンガやアニメを見て育った人たちが社会人になったせいで、そうしたものへの抵抗感が全体的になくなってきて、逆に、魅力的なビジュアルがないと物足りないといわれるようになっている。

一番分かりやすいのは児童書ですね。親が買い与えることが多い児童書では、コミックやアニメにニュアンスが近い絵はNGだと言われていたんですが、弊社の『マジック・ツリーハウス』や『タラ・ダンカン』などは、たいへん好評です。他にも、一般文芸や、たとえば老舗出版社のSFなんかにも、ちょっとキャラクターっぽいイラストを使ったものが増えている。ライトノベル的な装丁、イラストが、他の出版分野にも浸透し始めている。

イラストレーターの仕事も、ライトノベルだけに留まらず、一般文芸などにも広がっていくと考えています。

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