ライトノベル&イラストレーション

■理想のライトノベルを求めて

最後に、書店員、営業といった立場からライトノベルに関わる大塚さんに、ライトノベルにおける小説とイラストの理想の関係とは何か? イラストに求められるものとは何かをお聴きしました。

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大塚:かつてはライトノベルのイラストレーターさんというのは数が少なく、限られた仕事だったと思います。ところが、僕がライトノベル担当になった03年当時から状況が変わってきたように感じました。PC美少女ゲームの絵師さんが参入しはじめ、イラストレーター志望者が増えてくるなど、ライトノベル自体の点数の増加に伴い、ライトノベルのイラストレーターという職業が急速に広がってきているという印象を持っています。

そうした中で、書店員としては、数あるライトノベルの中で目立つ個性、一目見て分かるオリジナリティが一番大事だと思いますね。また、営業としては、それにくわえて、安定して描き続けられることが重要だと思います。平均的なシリーズものでは、3ヶ月に1回は新刊が出ますし、雑誌の特集や、ひょっとするとメディアミックス関連の仕事などもありえるかもしれない。それに対応できる量産性というのもやはり重要です。

それを踏まえた上で、理想のライトノベルというのは、小説とイラストのコラボレーションが成されている作品、イラストが小説の魅力を引き出すような作品だと思います。

まずは、自社の作品から挙げさせていただきますが(笑)、最近では上月雨音さん/東条さかなさんの『SHI-NO』がかなりインパクトがありました。白地にキャラクターというデザインですが、黒い髪に黒いセーラー服の女の子、作品自体もダークな雰囲気といった中で、少女の背負うランドセルの赤が鮮烈な印象を与えている。東条さんの絵は、とても作品にマッチしているんですが、単に合うだけじゃなく、いい意味で心に引っかかりを与えているんです。

次に、他社さんの作品ですと、野村美月さん/竹岡美穂さんの『“文学少女”と死にたがりの道化』(amazon)ですね。野村さんの透明感のある文体に、竹岡さんの青を基調とした透き通るようなイラストがとてもよくマッチしている。

こうした作品にであえると幸せな気持ちになります。ちょっとした奇跡だなと。ライトノベルを読んでいて良かったと思う瞬間であり、私がライトノベルを仕事にまでしてしまった理由です。

そして最後に富士見書房の営業として、人気沸騰中の雨木シュウスケさん/深遊さんの『鋼殻のレギオス』をプッシュさせていただきます。「自ら動き回る都市」を舞台にした異世界ファンタジーという設定が少々分かりにくい作品ですが、深遊さんの空気感のあるイラストがしっかりとそれを説明している。普通に考えるとありえないような設定や武器が登場する話なのに、力のあるイラストとあいまって、非常に説得力のある世界がパノラマのように広がっている。まさに、コラボレーションだと思います。

ぜひ、手にとって見てください。

インタビュー:前島賢 加藤アカツキ
構成:前島賢

書影

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大地が有害物質で覆われ、異形の怪物・汚染獣が闊歩する荒廃した世界。人類の生存圏は、自らの意思をもって移動する街――自律型移動都市(レギオス)の中にしか残されてはいなかった。そのうちの一つ、学生たちによって運営される学園都市ツェルニに新入生レイフォンが入学してきた時、物語は始まる。彼に隠された秘密とは――? 特徴的な世界観を背景に白熱のバトルを、そして少年少女の成長を描く大人気アクションファンタジー!! (著:雨木シュウスケ イラスト:深遊)

大塚和重(おおつか・かずしげ)
株式会社富士見書房・マーケット企画部勤務。2003年から2006年まで書泉ブックタワーのライトノベル担当として活躍。「日本一ライトノベルを売る男」と呼ばれる。2006年に株式会社富士見書房に転職。書店員時代の経験を生かし、営業として活躍中。

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