NHK連続人形活劇『新・三銃士』操演・おかの公夫さん&映像デザイン・神藤恵さんインタビュー

■作りものだからこその本当を

――人形劇というと平面的で正面から撮っている印象だったの対して、『新・三銃士』は奥行や段差がすごいと話題になっていますね。これは「今までとちがうものを作ろう!」というねらいで作られたんでしょうか。

対談第三回

それは最初から大きなテーマでした。「なんでいまさら人形劇なの?」で終わりにされないように、今ならではの人形劇を作ろうと。手づくりのものを作ると、大画面やハイビジョンだからこそ、その質感やあたたかみが全部伝わるんですね。それで、作りこみにとてもこだわりました。

奥行を重視したのには、ドキドキ感・ワクワク感が出したかったというのがあります。暗いところに何かあると、その奥をのぞきたくなるじゃないですか。こわいもの見たさというか、ゾクゾク感も出したいですね。人形の方も木目を入れたりして、ちょっとダークファンタジーみたいな感じをねらっているので。

高さは権力の象徴なので、うんと落差を出していますね。

――リアルな作りこみだけでなく、そういったイメージを伝える絵が印象的です。

対談第三回

たとえば王宮だったら、リアルにやるとルーブル宮殿みたいになるんですけど、そのまま再現してもつまらないじゃないですか。だから、黒い石壁でゆるがない力を表現したり、階段をたくさん作ってどこに何があるのか分からない雰囲気にしたり、天井や床を抜かしたり。逆にパリの町は、天井と床があってせまくてごみごみした感じにして、コントラストを出そうと。

自分なりにロジックを組んだんですよ。三銃士の下宿は有機的な空間で戦争は荒廃空間とか。うそをついているアンヌの部屋はグレーで、リシュリューとロシュフォールのいるところは本当にダークとか。大背景として天気も決めて。全部は反映されていませんが、頭に入れてデザインしています。

――作りものならではの表現ですね。

一から全部デザインできるところが、人形劇の一番おもしろいところですよね。水なんかでも、本物を入れようと思えば入れられるんですけど、それだと「水じゃん。」で済んでしまうし、意外とそれらしく見えないんですよ。海はより海らしく、噴水はより噴水らしく、特徴をとらえて表現するわけです。

でも、うそはつきたくない。ものや概念の本質を自分のフィルターを通して提示しなおして、見るかたにもそれがおもしろいと思ってもらえるとよいですね。セット自体もキャラクターみたいな感覚でやっています。

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