猫と少女インタビュー

――『猫と少女』本誌の装丁についてはどのような話がされたんですか。

 表紙イラストについては見開きでやろうという話があって。中とじで開きやすいので、広げてみると別の絵になる感じにすると面白いんじゃないかと。

 竹さんが「がーっと開いて使っちゃってもいいんですか」と言われたんですね。

 猫って長いので(笑)。

 竹さんは、ギミック的なことをやりたいと言っていましたよね。

 小説の表紙でも、自分だけがわかる隠し要素を入れて遊んでいるタイプなので。登場人物の名前に数字が入っていたら、その数だけ何かを書いておくとか、○巻だから○匹何かがいるとか。自分が描いて面白いものをやりたかったので、遊びを隠したかったんです。最初は浮世絵の歌川国芳が好きなので、ああいうのはどうですかと言ったら、奇をてらい過ぎだって。

猫と少女インタビュー

 遠くから見ると人の顔なんだけれど、よく見ると沢山の人が集まってできているというやつですね。

 ただ単に猫がいっぱい描きたかっただけなんです。他にも表紙は猫のお尻だけで裏表紙に猫がいるとか、全体像が見えてああこういう絵だったのかというのがやりたかったんですが、可愛い本の方がいいだろうと思ったので……。

 最初は横長の本にしようという案もあったんですけれど、コスト的に難しかったんです。

 僕の方から変な形のものがやりたいと言ったんですよね。横長だったら床の間に置けるとか、掛け軸みたいな感じで広告ビジュアルを作ろうとか。その時はまだショップに置いた時にしっくりくるというコンセプトが詰まっていなかったので。

 ラフを描いてみて、ちょっと和のイメージが強すぎませんかと。それで女の子を大きく描いてみたんですけれど、猫より女の子が勝っていて、私の欲求不満が(笑)。私は仕事でも別にいいところに猫を描いてしまうんですけれど、『猫と少女』なんだから、やっぱり猫をいっぱい描ける本にしようと思って、大きい猫の上に女の子を乗せるとか、レッドカーペットの上を猫が歩いていて、両脇にペットボトルが並んでるとか、いろいろ想像してました。

 『猫と少女』だからネコミミでもいいんじゃないかという案もあったんですが、それは媚びすぎだろうと。媚びずに合法的にネコミミを描く手段はないかといって、僕がラフをおこしたりして(笑)。

猫と少女インタビュー

 私はこれすごい好きですよ(笑)。後ろにいる猫の耳が鏡に映ってネコミミに見える。この絵が心に残っていたので、あとがきのイラストは大きい猫と一緒にいる感じになってるんです。友達が飼っている猫がやたらと濡れた鼻をくっつけてくると言っていたので、それを描いていて。表紙の中にも友達の家の猫がいるんですよ。猫をみたらとりあえずiPhoneで写真を撮って、これはあの時のあいつだなとかニヤニヤしてるので、猫と少女の表紙の中には今まで自分が出会った猫達を描いています。ちなみに絵の中には全部で22匹の猫がいるんですよ。

――その数字の意味は?

 22(にゃーにゃー)じゃないですか!他にもキャッツアイ(猫目石)が22個描いてあるとか、表3の猫模様も222匹いるんですよ。ちょっとはぐれてみたり、ボス猫がいたりと描いていて楽しかったんですけれど、多分数える人はいないですよね(笑)。

 そんな設定が!実は表3の猫模様はノド(とじしろ)に掛ってしまうので1列削ってしまいました。だから180匹くらいに……。

猫と少女インタビュー

 気付かなかった……(笑)。そういうつもりだったということで。猫だからどこかにいってしまったんですね。とにかく猫まみれにしたかったので、「猫ブラシ」を作ってひたすらそれでポンポンとやったので、背景も全部猫ですね。だから222匹どころじゃないんですけど。

 背景まで猫ブラシで塗られているのは気づかなかった(笑)。竹さんから、使えそうなら活用してくださいといってIllustratorのデータで猫素材が届いたのはびっくりしました。こんな形でデータをくれるイラストレーターさんは初めてなので。

 私はいつも本の装丁とかは、絵の中に使った素材でIllustratorで作ったものは全部デザイナーさんに渡すんです。デザイナーさんのセンスで自分の作った素材がすごく素敵に使われることが嬉しくて。デザイナーさんは絵の雰囲気を高めてくれるので、本当に尊敬しています。誰かと一緒にやることでもっと素敵になるのは、お仕事をすることの楽しさじゃないかと思うので。

 たがいにやりたいことをぶつけ合うといい感じのものになるんですよね。逆に遠慮しすぎると上手くいかない。お互いの分野で得意じゃないところはお任せできるような関係だと、思ってもいないものができたりして気持ちいいですね。その意味でも今回、加野瀬さんが竹さんと引き合わせてくれたのはよかったです。

猫と少女インタビュー

――『猫と少女』で描かれているイラストは、「戯言シリーズ」や『刀語』の表紙イラストから受ける竹さんのイメージとは違いますよね。

 普段の竹さんのイラストはわりとクールなイメージですけど、従来の竹さんのイメージを踏襲せずに自由に描いてくださいという話をしました。いままで見たことがないけれど、確かに竹さんの絵だね、という感じです。

 大きな違いは線がベジェじゃないことですけど、猫の毛のホワホワ感を出すには、ベジェだと大変だなと思ったので。猫の主線は全部、猫ブラシで描いているんですよ。見てもぜんぜんわからないけれど、これは小さな猫の形の連続なんです。

 この線は猫ブラシだったんですか!竹さんが手描きしたペン画を見せてもらった時に、線だけでガラスポットの透明な感じが表現されていて、すごくいいじゃないかと思って。やっぱり西尾維新さんの本の表紙のイメージが強かったので、こういうものが描けるのならぜひ普段と違うもの見たいですよねという話をしました。

実際、『猫と少女』というタイトルで出てきた絵も、記号的なベタじゃない、竹さんの持ち味がある面白い絵ですごくいいなと思いました。

 商業誌のイラストだと、どうしても女の子がこっち向いてにっこり笑っているようなものになりがちですけど、そういうのは求めていないです。もちろん女の子の顔は見えていて欲しいですけれど。

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