アニメをかもすぞ!ノイタミナ『もやしもん』の舞台裏《前編》

アニメをかもすぞ!ノイタミナ『もやしもん』の舞台裏《前編》

――動きの面では3D表現と2D表現の間のすりあわせも重要だと思うのですが、コンテを拝見すると、3Dで描かれる菌に関しても、絵コンテの段階でかなり指示がでていますね。具体的に白組さんとテレコムさんの間での作業工程はどうなっているのでしょう?

もやしもん絵コンテ

矢野 まず各話演出の方と打ち合わせをして、その段階で、特別に人と絡むときに関しては、そのときの菌の動きを指示したりしますね。レイアウトの段階で人間と菌がからむときにはこうなる、というのを決めておいて、テレコムの原画さんと、白組のスタッフさんの間で同じレイアウトを共有する、という感じで画面の整合性は保っています。菌の演技に特別な動きを求める場合に関してのみ、ラフで原画を描いていますが、それ以外のケースでは、白組さんのノウハウを信頼してお任せしていますね。

磯田 菌の描写に関しては、一話の試写を石川先生に観ていただいたところ「ちょっと描写が細かすぎるので、もっとツブツブした感じを出してください」とチェックが入りまして、そこから大きさを変えて大増量したという出来事がありました。

矢野 CGだったからこそ身軽にできた修正でしたね、あれは。最終的にはもとの三倍くらいの分量にしていただいて、かなり派手な感じの映像になったと思います。一話の段階だと表現に手探りな感じがちょっとあったのでそういう流れになりましたけど、話数が重なった先では、2Dの表現も3Dの表現も、どんどん遊び心が出てきて面白くなっているな、という感覚はあります。

――やはり石川先生は菌に並々ならぬこだわりがあられる。

矢野 そうですね。同じ菌種でも、影になっている部分だけ微妙に色の塗りが違っていて、それで固体を識別していたりするんですよね。あとは、目と口のバランスも難しい。

オリゼー

磯田 一見線が少ないから簡単に描けるように見えると思うんですが、逆にシンプルなだけにちょっとバランスが違うと別物になってしまう。熱心なファンの方の間でも、見本を見ないで「うろ覚え似顔絵選手権」とかやると、きっとみなさん微妙に間違えられると思いますよ(笑)。

矢野 まずオリゼー菌は綺麗な円形に書くでしょうね。微妙にあれは真円ではないんですよ。手書きで何百と描いたら、プロのアニメーターでも多分バランスがおかしくなってしまうと思います。

■人にドラマを! 菌には愛を!

――今回のアニメ化では、原作のどのあたりまでが映像化されるんでしょう?

磯田 少しエピソードを省略させていただきつつ、単行本の1巻から4巻までの話をやります。

――アニメ版のオリジナル要素はありますか?

もやしもん

矢野 原作では、主人公の沢木直保はアクティブな先輩たちに振り回されている感じだと思うんですが、「アニメ化に当たっては人間ドラマの部分を加味して作って欲しい」と制作の始めの段階で要請されたことと、「主人公なのに目立たない」という意見が多数あったのを鑑みまして(笑)、彼が少しだけ原作より能動的になっています。

磯田 そういう意味では、もともと田舎から何がやりたいかわからないまま出てきた直保が、「菌が見える」という特異な能力を認められたことを契機に自分の居場所を見つけていく、という形で、アニメ版は1クール分の話にひとつまとまりがつく感じになっていると思います。こうまとめてしまうとちょっと堅苦しい気もしますが(笑)。

週刊石川雅之
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週刊石川雅之

石川雅之
講談社アフタヌーンKC

矢野 学生の迷っている時期がストレートに描かれているので、観るひとの立場によって色んな見方をしていただけると思いますね。

磯田 思い入れの強い作品がはじめてアニメ化される、ということで石川先生も心配される気持ちが強かったと思うんですが、幸い、監督の書かれた絵コンテが大変気に入られたご様子で、特に長谷川のニュアンスは、監督の書かれたコンテに一番出ているみたいですね。あとは、石川先生のファンの皆さんに向けていうと、短編集『週刊石川雅之』からのちょっとしたクロスオーバーもありますので、そこを楽しみにしていただきたいですね。

矢野 この作品に触れると、直保のように菌は見えなくても、日常生活の中に菌がいるような気がする、と想像できるようになると思うんですよ。そうしたちょっとしたことで毎日が少しだけ楽しくなるんじゃないでしょうか。

――たしかに、この作品に触れると発酵食品に愛が持てるようになりますよね。

もやしもん

磯田 (笑)。そういえば、僕も原作を読み出してから、あまり飲んでいなかった日本酒を飲むようになりました。単純にタメになるわけではないですけど、世の中に興味がわいてくる感じがありますね。シリーズがうしろにいくほど、制作サイドも慣れてきて、映像にこだわって遊んでいる部分も増えるし、登場キャラも増えて加速度的に面白くなると思いますので、気楽に続けて観ていただきたいです。

矢野 作品の勢いを楽しんでいただけると嬉しいですね。

――それでは、本日はありがとうございました!

(9月26日、テレコム・アニメーションフィルムスタジオにて収録)

後編では白組・八木竜一さんをかもすぞー!

インタビュー/構成:前田久

OPより

アニメ『もやしもん』10月11日(木)より開始!

『もやしもん』はフジテレビ”ノイタミナ”にて毎週木曜24:45よりオンエア!関西テレビ、東海テレビ、テレビ西日本、新潟総合テレビ、北海道文化放送、鹿児島テレビ 他にて放送されます。詳しくは、番組公式ウェブサイトhttp://www.kamosuzo.tv/)をご覧ください。※初回のみ24:35~放送(10分繰り上げ)

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©石川雅之・講談社/もやしもん製作委員会






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