アニメをかもすぞ!ノイタミナ『もやしもん』の舞台裏《後編》

アニメをかもすぞ!ノイタミナ『もやしもん』の舞台裏《後編》

老舗スタジオ・テレコムアニメーションフィルムと、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で知られる映像スタジオ・白組の強力タッグでお送りする、世界初の”菌アニメ”『もやしもん』(原作・石川雅之、講談社「イブニング」にて連載中)。ただいま、ノイタミナを絶賛かもし中! 監督の矢野雄一郎さん、プロデューサーの磯田敦仁さんのお二人にお話を伺ったインタビュー前編に引き続く後編では、CG監督の八木竜一さんに、”菌”の表現にかける熱い思いを語っていただきました。後編もばっちりかもすぞー!

⇒アニメをかもすぞ!ノイタミナ『もやしもん』の舞台裏《前編》はこちら

■愛される”菌”のできるまで

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――『もやしもん』映像化にあたって原作を読まれた印象から伺えますか?

実は僕は、「イブニング」をずっと読んでいるので、依頼される以前から原作を面白く読んでいたんです。でも、お話をいただいた段階で、改めて単行本でまとめて読んでみたら、雑誌で読んでいたときよりもさらに面白く感じましたね。連載時とは違う魅力が出てくる気がしました。

――独特の緩やかなリズム感と緻密なストーリー展開という面白さが、まとめて読むとわかりやすいですよね。作品の特徴でもある菌の存在についてはいかがでしたか?

人間と菌は一応共存はしているけれど、うまく利用し合っているだけで、それぞれがそんなに深くかかわらない。菌が見える能力を使って人間たちがすごいことをしでかしたりしない。そうした関わり方のさりげなさがいいと思いました。その世界観が僕はすごく好きです。

もやしもん(5)
(amazon)

もやしもん(5)

石川雅之
講談社イブニングKC

――この作品で描かれる菌と人間のコミュニケーションは独特ですよね。

基本的には菌と人間たちが会話しない、という決まりがあるので、一定の距離感が保たれているんですよね。菌が人間たちの行動を引いたところから馬鹿にしたりすることに面白さがあると思うし、同じ空間にいながら別のコミュニケーションをしている感じになっているのがいいんじゃないかな、と。それで2Dの人物キャラクターの動かし方と、3Dの菌キャラクターの動かし方もそれぞれちょっと違っているんです。

3Dは、動かしやすい分、より細かく動きをつけてます。それが菌の表現の面白さに繋がっているとは思うんですが。見た目の単純なキャラなんで、動きの中で個性を出してあげないと、多分それぞれの菌の間の個体差が出てこないと思うんです。それぞれが個性的な動きになるように心がけつつ、話数を重ねていく中でも、菌の種類ごとに統一感をもった形で菌キャラを動かせるようにすることを気をつけています。

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――1話で登場した納豆菌の、横に伸びる動きも印象的でした。

ねばねばの動きですね。一応、オリゼーが元気なキャラ、納豆菌はねばねば、クリソゲヌムは青カビだけどちょっとおっとり系、トリコイデスは無神経……という感じです。目が丸くてきょとんとしている菌は、総じてちょっと何を考えているかわからない悪い系のキャラということになっています(笑)。そういう形で、それぞれの菌の面白さが出るんじゃないかな、と。

――菌の動きをつけていくにあたって、他にはどのような点に気を使われましたか?

やわらかさです。もうちょっと詳しく言えば、マシュマロ感とでもいえばいいのかな。触ったらやわらかそうだぞ、と思ってもらいたいな、と。キャラの情報量は少ないですけど、はねるときに必ず「ぽよーん」となるとかして、動きの中で質感を表現できるように心がけてます。

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――菌を動かすための骨格データも、かなり細かく設定されているとか。

そうなんですよ。小さいキャラクターなんですけど、手をS字に曲げるためにはS字になる分だけの骨がないと曲がらないんですよね。だからその部分には骨が六本くらい入っていたりとか。綺麗なクネクネ感を出すために、頭身は低いのに、人間より間接の数は多いですからね(笑)。

――菌の種類は何種類くらい?

大体今百種類くらいですね。

――ものすごい数ですが、それぞれの菌の性質にあわせた動きや骨格が設定されているのでしょうか。

一体一体、「これはプルプルゆれる、これはプルンプルンで、これはプニプニだ」みたいなちょっとした違いが出ると面白いかなー、と思うんです。

――百種類分の名前と形を把握しておかなければいけないというのも大変では?

そうなんですよね。今では大分わかってきてはいるんですけど、それでも「これ何するキャラだっけ?」とか「こいつの名前なんだっけ?」とかいうことはどうしてもあります。常に覚えていられるのは20~30体くらいが限界ですね。

菌

――菌の活躍する場面で、特にここはみどころ! という箇所はどこでしょう?

話数が進むと、「菌のオバケ」と呼ばれるキャラクターが出てきます。その表現には期待していてください。セルで描かれたキャラクターにCGの服を着せているような感じで表現しているんですけれど、面白いと思いますよ。原作読者の方は、白黒が多い石川先生の絵が、カラーになったことでどういうものになるかにも注目してみてもらえるとうれしいです。菌オバケの色はすごく迷って決めていたので。

――1話でも地中から沢山の菌が吹き出るシーンがありましたが、「菌のオバケ」も大量の菌が動く表現ですよね。そういった数えられない程の菌の群れを動かすには、何か特殊なプログラムを用いているのですか?

ほぼパーティクルで表現してます。一番つくりづらいのは、パーティクルじゃなくて、ある程度大きいんだけどたくさんいるようなキャラがある場合ですね。30匹くらいを表現するときがじつは一番大変で、人の手で動きをつけて、30匹のうち3匹ずつぐらいは同じ動きをタイミング違いでやるとか、そういうことでうまく乗り切ろうとしています。

3DCGで細かい粒子の集まりを動かす技術。炎や煙、髪の毛などを表現するのにも使われたりします。

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©石川雅之・講談社/もやしもん製作委員会



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