「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第三十六回「アニメ演出のお仕事って…04レイアウトチェック」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
最近のボクの近況はといえば、海外出張に合わせて隣国のカンボジアの遺跡(アンコールワット)を周っております。
遺跡に来ると、過去の文化を肌で感じられるのがたまりません。
どんな歴史があって今の社会が成り立っていることが分かると同時に、アニメや漫画で架空の世界を考える際にもきちんとした 存在理由や歴史を構築しないと説得力が生まれないことがよく分かります。
さてさてそんな旅先中ではありますが、今回も「アニメ制作における演出の仕事内容」について細かく話していこうと思っています。
ご興味をお持ちの方は、是非ご一読くださいね。
演出のお仕事シリーズ4回目のテーマは「レイアウトチェック」についてです。
「レイアウト」というのは画面内の構図を原画担当の方々に決めて頂いたもののこと。
実写で言うカメラの役割にあたるのですが、この「レイアウト」には構図だけでなく、背景やカメラワークの指示など細かい指定も 入れなければいけません。
アニメの場合「背景」「動画」が同時に作業をするため、それぞれの描く絵の位置がずれないように、この「レイアウト」が設計図の 役割をするからです。
そういう意味でも本当は「レイアウト」の時点で、じっくり構図を決め込んだり、カメラの動きや背景・アイテムが抜けていないかの チェックをしっかり行うのが良いと思うのですが、スケジュールがないTVアニメでは大抵「レイアウト」と同時に「ラフ原」が上がってきます。
「ラフ原」というのは言葉どおりラフな原画のことで、動きのキーポイントや流れが描かれた動画的なもの。
それと「タイムシート」という動きのタイミングが書かれた紙が一緒に上がってくるわけです。
これをもとに、「デザイン」と「動き」と「エフェクト」の指示などの修正や調整を行うのですが、一度OKを出してしまうと その指示に合わせて皆さん作業を進めることになるので、レイアウトチェック作業が演出の行う最も大変で集中すべき作業なんですよね。
タイムウォッチで時間を計りながら、一体何秒で何枚かけて動きを作るのが一番良いのかを考えたり、デザインのミスがないかどうかの チェックをキャラクター設定を見ながら行ったり、背景が設定通りに描かれているかのチェックなども行います。
でも、この作業さえ終わってしまえばアニメの土台は出来るので、その後の作業はずいぶん落ち着いて取り掛かれる気はします。
そしてレイアウトチェックが終わると「背景美術」や「原画」が徐々に上がってくるので、そのチェックの作業に移るのですが、 次回はそちらついても書かせていただくつもりです。
それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)