「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第十二回「絵コンテと動画コンテ」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
現在、『探偵事務所5・薔薇は13で待て』の締切り間際と言うことで実写に合成するアニメを制作中。
何度か実写映画の間に挟むアニメを制作したことはあるのですが、非常に難しいイメージがあるんですよね。
というのも、実写に入り込むアニメは質感も雰囲気もある程度淡白にしないと、実写パートと分離して浮いて見えるからです。
そうはいいつつ、なんとか形にしようと今は頑張っているのですが。
さて、今回は、絵コンテについてお話したいと思います。
絵コンテとは、アニメーションを作る際にストーリーの流れやキャラクターのセリフに合わせて演出を考え、紙に記す工程のことですね。
マンガでいうネーム作業に近いのですが、この演出を考える作業は非常に重要な役割をもちます。
アニメーションは大勢の方が関わって完成するので、カメラワーク・キャラクターの演技など、スタッフの誰が見ても分かるように設計図を作る感じですね。
ボクが初めて絵コンテらしきものを描いた時の課題は、駅から目的地までを20カット以内で演出しなさいというものでした。
「カット」は、カメラ位置が変わる度に「カット1」「カット2」って感じで増えていきます。
ちなみにもう一つよく使われる「シーン」というのは、「学校」から「公園」などに場面が変わったりする度に「シーン1」「シーン2」って感じで増えます。
20カットという限られたカット数の中で、どんなドラマを描き、登場人物の性格、リアリティなどを追求できるかというのが課題の意図ですが、とても面白かったのを覚えています。
そんな感じで、絵コンテは描けば描いただけ慣れてくるものだと思うので、とにかく描いてみてください。
そして動画コンテというのは、描いた絵コンテをもとに尺に合わせて編集し、実際にどういう映像になるか見てみる作業のことをいいます。
動画コンテムービーを作ることで、無駄なシーンや足りないカットなどをくわえていくわけですね。
動画になると自分の短所がはっきり見えますが、自分の描いた絵コンテが動くのは、なんだか嬉しい気分にもなります。
ちなみに補足ですが、スタジオジブリさんから出版されているジブリ映画の絵コンテ集にはおまけで宮崎監督が新人育成用に描いた絵コンテの基本書が掲載されています。 これは、結構勉強になると思いますので、見たことない人は是非ご一読してみてください。
今回はこの辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
『探偵事務所5』オフィシャルサイト(http://www.tantei5.com/index2.html)
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)