連載第四十四回「じんじゃーまん・制作過程01」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。
糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
実はこれが新年明けて初めてのコラムだったりするんですよね。
ということで、随分遅ればせではありますが……本年も宜しくお願い致します。
ご挨拶も終わったところで、最近のボクの近況はといえば、色々な企画を持って走り回ったり、長編の脚本書いたり、自分のホームページをリニューアルしたりと、マイペースに活動させて頂いております。
いわゆる企画準備中っていう時期ですね。
定期的な仕事はあるのですが、この準備期間は自由な時間が多いので、楽しい反面不安にもなってしまう微妙な時期だったりします。
特に不景気の影響を映像業界ももろに受けているので、PVやアニメの制作予算が減ったり、TV番組なども4月から大改編が行われたりと今後色々大変になってきそうです。
といいつつも、逆に安く映像を制作するシステムさえしっかりしていればハードルが下がる時期でもあるので、個人的には数年単位の計画でTVのシリーズ枠等も狙ってTV局に企画を持って行ったりもしています。
さてさてそんな中、前回ご紹介したFlashアニメ『ことなかれヒーローじんじゃーまん』が各局で放映開始になりました。
ショートアニメなので、誰も観てくれないんじゃないかと最初は不安だったのですが、思いのほかたくさんの方にご覧頂いているみたいで嬉しく思っております。
今後はひょっとしたら、こういう企画が増えてくるかもしれませんね。
新人のオリジナル作品に30分枠を用意するのはリスクが大きいけど、5分枠(実際は5分番組といってもCM除くと4分です)とかにしてしまえば隙間でも流せるし、30分枠を用意すれば6本の作品を試せるし。
それで人気が高かったものを長めにしたりシリーズものにしたりとか、そういう可能性もゼロではない気がします。
そんな『じんじゃーまん』ですが、ボクがこの企画に参加した際には、すでに原案と脚本が用意されている状況でした。
とある日に会議室に呼ばれて「この企画興味ないですか?」って感じで声を掛けて頂き、色々話合った結果、ストーリーはもうあるなら、次はキャラクターのデザイン案を制作しましょうかという方向に決定。
ここで個人的に前から興味のあった制作スタジオさんに電話を入れて、一緒に組んで作品作りませんかってお願いしたのを覚えています。
そして知り合いも含め何人かのイラストレーターさんに『じんじゃーまん』を含めた野菜のキャラクター案を描いてもらったのです。
結局プレゼンに提出したのは「01・少年漫画っぽいテイスト」「02・劇画ギャグ?っぽいテイスト」「03・ファミリー向けっぽいテイスト」の3種類。
このページに掲載されている画像が提出したキャラの一部ですね。
これらをもとに色んな人に聞いて回ったのですが、その結果がおもしろくて、ボクと同年代の女性には「01・少年漫画っぽいテイスト」が一番人気で、ボクと同世代の男性&10台の若い人達には「02・劇画ギャグ?っぽいテイスト」が一番人気だったりしました。
逆に「03・ファミリー向けっぽいテイスト」は年配というか、わりとボクより上の世代の方々に評判がよかった気がします。
結局様々な打合せを経て、プロデューサーを含めた上層部の希望もあり「03・ファミリー向けっぽいテイスト」に決定することになりました。
こういう多数決やアンケートの結果を見ていると、改めてこの業界の大部分は好みで成り立っていて、明確な正解は存在しないことがわかった気がします。
でもこういう機会を頂いたことはすごく勉強になりました。
ちなみにボク的にはどのキャラに決まっても、演出方法は見えていたつもりだったので、わりとどれでもよいと客観視してたのを覚えています。
しいて言えば、動かすの大変なうえ、観る人選ぶけど「02・劇画ギャグ?っぽいテイスト」がインパクトあって良いかなとも思ってました。
で、そうやって決まったキャラたちを「Illustrator」というソフトでパス化してクリンナップ。
パス化するのは面倒ですが、最初にこの作業をしておくと、映像制作の際にどんなにTU(トラックアップ)、したりTB(トラックバック)しても線が荒れないから楽だったりします。
ただ、ボクの場合Photoshopのほうが好きだったりするので、パス化せずPhotoshopで大き目の画像を描いて使用することも結構あったり。
なんにしろ、こうしてできたのが実際に使用しているキャラクターたちだったりするのです。
さてさて、色々書かせていただきましたが、今回お話しはこの辺でおしまい。
次回はキャラクターに動きをつける際のお話をしていくつもりです。
それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。
お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
⇒「ことなかれヒーロー じんじゃーまん」公式ウェブサイト(http://www.amgakuin.co.jp/contents/gingerman/)
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)