連載第四十九回「源流」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。
糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
だいぶ暑くなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ボクのほうは、アニメスタジオにて毎日溜まっていくカットの処理に追われつつ、演出勉強させていただく毎日を送っております。
前回は梅雨時期ということで、「雨」から話を派生させて頂きましたが如何だったでしょうか?
ひょっとしたら「この人一人でブツブツ何を言ってるんだ?」なんて感じた人もいるかもしれません。
じゃあどうしてあんなことをボクが考えたのか?について今回は語ってみようと思います。
まず結論から単純明快に申し上げますと、「それは立ち止まって物事を深く考えてみたから」です。
なあんだ、そんなことか。って流してしまう前に一応今から書く説明を読んでみてもらえると嬉しいのですが。
ボクも含めて、平成という現代に生きている人にとって「情報」は放っておいても次から次に入ってくるものです。
家などではテレビやインターネット、新聞などから。街を歩けば看板やポスターなどから。学校や職場に行けば友人や同僚などから。
とにかく引っ切り無しに何らかの情報が、望む望まないに関係なく入ってくるはずです。
ニュース番組などを例に挙げると、そこから得られる情報は身を守って生きていく上ではとても良いことである反面、そこに頼りきってしまいます。
また簡単に情報が得られてしまう為、ありがたみが無くなり、それら一つ一つの価値が薄れていっているようにも思えます。
まさに情報の使い捨て現象ですね。これはとてもマズイことです。
つまり現代人の多くは情報そのものが簡単に扱われて日々当たり前のように流れていくので、一番大事なことである「何故その情報が得られたのか?」「何故その情報が生まれたのか?」という根源を考えなくなっているのです。
「今地球がヤバいらしいよ」「なんで?」「テレビでやってたもん」「こわーい」
なんて会話、よく電車などで聞きます。他にも
「A子、先輩と付き合ってるんだって」「まじ?」「ホントホントうちのクラスで噂になってるもん」「やるねー、A子」
なんてことも。
「テレビでやってたら正しいの?」「噂になってたらホントなの?」……んなアホな。
こんな単純に物事信じる人が増えてたら、そりゃ情報操作もしやすくなる筈です。もっと色んなことに疑いを持った方がよいのではないかと思うわけです。
別にすぐ信じるのが悪くて、信じないのが良いとか言ってるわけじゃないですからね、念のため。
どちらにしろ、何か情報を手に入れた際に簡単に鵜呑みにせず、その情報の源流を探っていくと色んなものが見えてくるはずです。
それを知った上で信じるか信じないかを決めるのも悪くないように思うのです。
ちなみに、その見えてきた情報源を図に描いてみると、まるで「ドーナツ」のように真ん中だけがすっぽりと抜けていたりします。
実はその穴こそが「真実」で、且つ情報発信者が隠そうとしているものだったりするので、実に趣深かったり。
もちろん、テレビや雑誌を悪く言ってるわけではありません。ボクだってテレビも好きでよく観るし、本だって読みます。
ただ、表の情報だけを信じるのではなく、違う見方もしてみると別の表情が見えるっていうお話しです。
これが例として正しいかどうかはわかりませんが、国語のテストで、文章読んでから以下の問いに答えなさいってのありますよね。
あれも先に問題文から読んで問題制作者の意図さえ読み解いてしまえば、文章読まなくても4択を2択まで絞れたり、不必要なとこは読まなくても正解まで辿りつけてしまうのと同じかもしれません。
世の中を違う角度から見て、物事の理由を考え、そしてその源流を辿った上で自分なりにもう一度考え直してみる。
そうすれば、人にもどうしてそう思うかを説明できるし、考えにも厚みが出てくるような気がします。
それをしてこそ「自分なりの本当の考え」が見えてくるはずなのです。
これを「ものづくり」に関しての話に置き換えてみると、「設定優先」で物事考えちゃダメってことになります。
そんな情報優先の肩書き固める前に、もっと先にすることあるでしょっていう。
さてさて小難しい話を色々書かせていただきましたが、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。
あ、ちなみにこのボクの書いた文章を読んで頂きながら「うざー、そんなこと考えるだけムダ」って思った人も「うんうん、その通り」って思った人も、ボクにとっては両方違います。
だってこれも世に流れている情報の一つなのですから。
お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)