加藤アカツキ:ザンゾウアパートメント201号

第二回「夏の風物詩」

加藤アカツキです、皆さん乗ってますか?(自転車に)

はい、というわけでザンゾウアパートメント201号、連載二回目ということでなんとか無事にペダルを漕ぎ出すことができました。

先日、東京ビッグサイトにて行われた「コミックマーケット74」及び「コミティア85」に、ぼくも出展者として参加をしていたので、今回は“同人イベント”について書かせていただこうと思います。

ともあれまずは暑い中イベントブースに来てくださった皆様、本当にありがとうございました。

何事もなくイベントを終えることができてほっとしています。

コミティア

一応念のために説明をさせていただきますと、コミックマーケットというのは俗に同人誌即売会と呼ばれるイベントで、3日間で3万5千ものサークルが出展者としてブースを並べ、同人誌、ゲーム、音楽CDなどを展示、販売します。さらに、一般来場者の数は60万人近くとも言われています。

一方、コミティアは参加サークル2000、一般来場者1万人ほどと、コミックマーケットほどの規模ではありませんが、一般的な同人誌の主流がパロディ作品なのに対して、販売物がオリジナル作品に限定されているのが大きな特徴です。

同人誌とは、イベント会場や同人誌専門店を主な流通経路とする自費出版の本のようなものです。同人誌の本来の定義は、趣味を同じく共有する仲間が集まって自費で製作する本…といったものでしたが、様々な経緯を経て、最近では世間の認識の多くは前述のもののように変わってきました。

その形態もさまざまで、印刷所を使って商業印刷と変わらぬクオリティを持つ「オフセット本」と呼ばれるものから、コピー機で原稿を印刷し、ホチキスなどで綴じただけの「コピー誌」まで多種多様です。

イベントに参加するのにも、プロ・アマの資格を問わず、何らかのクリエイティブな活動をする人であれば、誰でもブースを出展することができます。

そういった敷居の低さも魅力の一つで、出展者の中にはまだ若い学生さんたちも数多く見受けられ、その中には、ぼくが講師を務める学院の生徒達も何人か参加していました。

オフセット本『少女サイクル』

ちなみに自分が初めてコミックマーケットに参加したのは去年の冬、先日の夏のコミックマーケットでまだ2回目ですので、はっきり言ってまだまだ全然ビギナーです。

以前からイベントに出展している生徒たちのほうがぼくよりもずっと詳しいこともあって、逆に色々と教えていただきました。当日には売り子としてもお手伝いしていただいたりと、本当に助けられてばかりですね。

さて、イベントには数多くの作家さんが参加をしているため、表現の方法も多岐に渡り、こういった同人イベントへの関わり方も人それぞれです。

仲間とイベントに参加すること自体を楽しむ方、創作意欲を高めるために同人誌をつくることを義務として己に課す方、同人誌の売り上げで生計を立て、イベント出展そのものを生業とする方など様々です。

ぼく自身は、イベントに出展することは“個展”を開くのようなものだという位置づけで捉えています。多くの出展者の方々がそれぞれにお客さんを呼び込み合っていることから、”合同展覧会”とう言ったほうが良いかもしれませんね。

さらに、展示スペースなどの制限はあるものの、通常の展覧会に比べて出展料はずっと安く、何より3日間で60万人もの来場者がいらっしゃいますからね、やはりその視認性の高さこそがこういったイベントの一番の魅力ではないかと考えています。

そして作家と同様に、来ていただけるお客さんのニーズも多岐に渡ります。そのため普段の仕事とは異なった、新たな顧客層にアピールできることも大きいと思います。

また、作品を見ていただいた方から直接感想を頂くこともできるのも、こういったイベントの醍醐味です。

ぼくも普段の仕事では読者の方と直接接する機会はほとんど無いので、こういったファンの方々との交流もとても楽しみにしています。

残像アパートメントのブースinコミケ

ただし、こういった多くのメリットがある分、出展者の数も多いので、その中でどうやって自分の作品を見ていただけるかを工夫しなければいけません。

今回ぼくのブースでは、手作りでキャラクターのポップなどを用意してみましたが、いかがでしょう?

色々と制限もあるので、できることは限られてきますが、多くの作品が並ぶ中、どうやって自分の作品を際立たせるか……という点では、普段のイラストレーターとしての仕事にもつながるものがありますね。

そして机の上に並んでいるのが右から、前回のコミックマーケットで作成したイラスト集「SCRAP」、自転車をモチーフとしたキャラクターブック「少女サイクル」、尾道を舞台に描いたカラーマンガ「PLATINA」です。

もし一般的な商業誌を一人で作ろうとすれば、膨大な作業量が必要となりますが、これらの本はページ数も16~32ページほどで、同人ではこういった小冊子程度のものでもつくることができます。

これらの同人誌は先ほど述べたオフセット本というもので、自らイラスト、デザイン、製作の全てを行い、作成したデータを印刷所に入稿しています。当然、商業誌と同じレベルのクオリティで印刷されており、完成した本を手に取った瞬間の感動は筆舌に尽くしがたいものがあります。

このように、印刷所を利用して同人誌をつくることで、印刷技術に対する勉強にもなります。最近では同人誌製作に関する本なども様々に発売されており、また、印刷所でも多くのアドバイスを受けられるので、勉強だと思って一度本格的なオフセット本を作ってイベント出展してみるのも良いかと思います。

それでは今回はこの辺で。

次回があったらまたお会いしましょう。

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加藤アカツキ(かとう あかつき)
加藤アカツキ
静岡県浜松市出身、東京都杉並区在住。
明治大学理工学部にて物理学を学ぶ傍ら、アミューズメントメディア総合学院キャラクターデザイン学科に入学。在学1年目よりフリーランスのイラストレーターとして活動を始める。以後、書籍カバー、キャラクターデザイン等を中心に活躍中。
残像アパートメント(http://www.k3.dion.ne.jp/~zanzo/)
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