「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

連載第三十九回「アニメ演出のお仕事って…06アフレコ」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

だいぶ涼しくなってまいりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

最近のボクの近況はといえば、新しいPV制作が一段落し、テレビ放映用のシリーズアニメの制作がはじまりました。

生まれて初めて女性アイドルのPV(ミュージッククリップと最近は言うみたい)を担当したのですが、ほぼ全てを一人で制作しなければならなかったので、 作業量が多すぎて大変でした。

後半は少しヘルプに入ってもらいつつ何とか納品したのを覚えております。

こちらもそのうち公開されたら、お知らせしようと思っていますので、ご興味ある方は、ぜひご覧ください。

さてさて、演出のお仕事シリーズ6回目のテーマは「アフレコ」についてです。

「アフレコ」というのは、ご存知の方も多いと思いますが映像に声を入れていく作業のこと。

アフレコ

映像ができていれば、キャラの表情や演技もわかるので声優さんも声を入れやすいと思うのですが、実際のアニメ制作においてあまりそんな余裕はなく、 レイアウトとラフに描かれた原画のみで台詞を入れるときもあります(もっと制作が遅れている時は絵コンテを撮影したもので行われたりも)。

テレビアニメの場合、事前に声優さんのスケジュールとスタジオの空きを合わせて日程が組まれていますので、制作が遅れアニメ素材が間に合わないことも多いのです。

そういう場合は、編集担当さんが自分で何度も台詞を言いながら台詞ナビを作ってくれます。

それにより、キャラクターがしゃべってる間は、そのキャラクターの名前などの目印が画面に表示されるので(画像参照)、声優さんたちは脚本にあわせて想像で演技をしながら、セリフをタイミングよくしゃべっていくのです。

このへんはもう見ていていつもすごい技術だなあって感じです。

また、この時点で時間調整して23分(CMなど除くとこれくらいの尺)ほどのムービーに編集されているので、後からカット毎の尺を大きく変えられなく なってしまったり、セリフにあわせて口パクのタイミングを調整しなければならなくなったりということが起こります。

ちなみに以前も書いたのですが、アメリカのアニメの場合は、先に声が上がってきてそれに絵を合わせる感じになるので、日本のアニメでもそれと同じようなことに なるということですね。

ボクの初めてのアフレコ裏話をすこし書かせていただくと、ボクは今まで商業作品にたくさん参加させて頂いていたのですが、演出として初めて仕事をさせて頂く機会を 頂いた際、色々知らないことを色々教えて頂くことも多く、アフレコ前も「サインくださいとか、握手してくださいとかダメですよ」と言われました。

個人的にはアフレコ経験は何度もあるし、あまり声優さんに詳しい方ではないので、余裕ぶっこいて「大丈夫です」と答えていたのですが、 実際スタジオに行くと同時に色々なアニメのアフレコが各々の部屋で行われているので、あちこちで声優さんを見かけます。

「たぶん声優さん好きの人だと嬉しいんだろうなあ」とか思いつつ、落ち着いて自分が入るべき部屋で皆さんの到着を待ちつつ台本を読み返したりしていました。

それで全員到着されたので一言づつ挨拶をさせていただいたのですが、その際何度か「あれっ?」って思いました。

というのも、ボクがまだ学生の頃見ていたアニメの声優さんたちがたくさんいらっしゃったからです。

特に感動したのが日高のり子さんとご挨拶をさせて頂いた時。

アフレコ2

学生時代に「タッチ」などを見ていたボクは、南ちゃんに挨拶された気分になって「おお、すげえ」と思いました。 思わず「何かセリフ言ってください」とか「サインください」とか言いそうになりましたが、その気持ちを抑えたのを覚えています。

そして実際にセリフ収録が始まりました……ってとこで、続きは次回に書かせていただこうと思います。

さてさて、今回もいろいろ書かせていただきましたが、これからアニメに携わろうと思っている方の参考になっていれば嬉しいです。

それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

では皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
次回へ



  最近の記事

  バックナンバー

ぷらちなトップページに戻る ぷらちなへお問い合わせ