「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

連載第四十回「アニメ演出のお仕事って…07アフレコ(つづき)」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

涼しくなってきたと思っていたら暖かくなったりと、微妙な気候が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

最近のボクの近況はといえば、テレビシリーズ用アニメの監督業に追われつつ、中国、北海道へ出張に行ったりとバタバタしておりました。

中国へはAMGの野口校長と毎年同行させて頂いているのですが、今回も色々とトラブルが勃発。

初日から乗換え便の飛行機が出なくて、北京でホテルを探すことになったのですが、時期がオリンピックと重なっていてなかなかホテルが見つからなかったり。

でも、久々に向こうで知合いに会ったり、講演したり、野口さんから色々なお話を伺ったりと、とても充実した時間を過ごさせて頂けました。

北海道には「札幌国際短編映画祭」に作品を出品していたので参加させていただいたのですが、海外から監督さんがたくさん来ていて、面白い映画もたくさん観れたし勉強になった気がします。

海外の短編映画を観る機会は普段あまりないこともあり、感性の違いや視点の違いに驚かされます。

これからももっと視野を広げるために、色んなものを見たほうが良いなと思いました。

スタジオの風景

さてさて、前置きが長くなってしまいましたが、本題の演出のお仕事シリーズ7回目のテーマは「アフレコ」についてです。

前回からの続きとはなりますが、念のため説明させて頂くと「アフレコ」というのは、映像に声を入れていく作業のことを言います。

アフレコは基本専用のスタジオで行われるのですが、音量などを調整したり音響監督や演出さんなどがチェックする部屋と、声優さんたちが演技をする部屋の2つがガラスで仕切られていて、監督さんや音響監督さんが意見を伝える時は専用のボタンを押すと、それを押している間だけ声優さんのいる部屋に声が伝わる仕組みになっています。

実際の収録は、マイクが5本くらい用意してあり、自分の担当のセリフが近づくとマイクに寄り、自分のセリフが終わるとマイクから離れというのをすべての声優さんが行います。

街のガヤガヤした声を取ったりするときは、全員でマイク前に集まり色々喋ったりするのですが、遠くの方でガヤガヤ聞こえる時などはマイクから全員が離れたところで喋ったりなんてこともします。

30分のアニメを収録する場合は、基本OPから中間に入るCMまでのAパートの映像を流し、通しで一気に収録。

それを聞いてイントネーションがおかしいとか、ノイズが入ったとか、演技を変えてとかの説明を音響監督が行い、もう一度通して収録したり、部分的にセリフを収録して前のデータと差し替えたりし、音声データを仕上げていくのです。

AR台本

ベテランの声優さんは、瞬時に色々な要望に応えて頂けるので、すごいなあと感心し聞き入ったりしてしまいますが、こういった作業工程をふむことでキャラに命が吹き込まれていくわけですね。

Aパートが終わると、同じようにBパートの収録が始まるのですが、中には一人で二役やったりする方も出てきます。

台詞が被らなければ、通しで二役やるようですが、その2キャラが掛け合いなどをする場合は2回に分けて収録。

分けてやってるのに、掛け合いしてる感じのテンションで喋っている声優さんをみると、これまた感心して聞き入ってしまったのを覚えています。

そして、こういった声の収録作業が終わると、音関係はBGMや効果音の作成に入り、作画方面はチェックなども佳境を向かえてまいります。

さてさて、今回もいろいろ書かせていただきましたが、これからアニメに携わろうと思っている方の参考になっていれば嬉しいです。

それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

では皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

札幌国際短編映画祭公式ウェブサイト(http://www.sapporoshortfest.jp/)


糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
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糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
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