「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第八回「撮影」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。
糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
先日まで、『探偵事務所5・薔薇は13で待て』の撮影を川崎で行っておりました。
というわけで、今回は、撮影についてお話したいと思います。
今回の作品は、「影を持たない100歳の少年」の謎を追いかける女性探偵のお話。
主役の探偵さんもすでに死んでいる設定だったりして、何ともファンタジー色の強い実写映画になっています。
西洋の雰囲気で撮りたかったので、主役の奥田恵梨華さん以外は外人さんをキャスティングしたり、照明・美術・衣装の方にこだわっていただいたおかげで、とても綺麗に撮れていて満足。
実写を撮っていていつも思うのは、事前の準備が非常に大事だということです。 小道具や美術、衣装やメイク、役者さんへの演技指導、演出、照明や録音にしても、すべてが一度きりの最高の瞬間を撮影するために作業するので、スタッフ皆が同じ方向を向いていないと絵がまとまらないんですよね。
でも、そのぶん現場では皆が一致団結してとっても仲良しになれるし、充実した時間を過ごした気になれるので、ボクは現場が大好きです。
カメラの機種名を参考までに書いておくと、今回はハイビジョンサイズでの納品ということもあり、撮影はSONY製の「Z1J」というカメラを3台持ち込んで行いました。
個人的にはデザインや、撮れる映像の色味も含めSONY製のカメラは気に入っているのですが、まだまだカメラには詳しくないので徐々に勉強している感じです。
少し話がそれましたが、実写においての撮影というのは、カメラマンが役者の演技を撮ることを言いますが、アニメではどうなっているのでしょうか?
基本的にアニメでは、役者の演技とカメラ位置設定と照明設定を「演出」「アニメーター」が行っています。
そして、撮影というのは完成した動画や背景をタームシートに合わせて合成していくことを言いますので、実写とは意味合いが違ってきます。
もちろん制作体制によっては、微妙に作業内容は変わってくるとは思いますが、共通しているのは、どちらも撮影の腕次第で他のスタッフの頑張りが「生きて作品に映る」かどうかが変わるってところです。
ボクは実写でもアニメでも編集や合成を自分でやる場合が多いのですが、こちらもこれから勉強しなければならないことが多いと思っています。
何より、実写を学ぶことでアニメーションにおいてのカット割りやカメラワークの考え方も変わってきました。 そういう意味で、ボク的には「アニメ」をやりたい方が「実写」を学んだり、「実写」をやりたい方が「アニメ」を学んだりするのって良いことだと思っています。
『探偵事務所5』は現在編集作業中なのですが、これからCG、アニメなどが合成されるので、まだまだ気は抜けません。
ちなみに、編集作業はFinalCutというソフトで行っていて、エフェクトやアニメーションは主にAfterEffectsで制作。
毎日、パソコンに向かっての作業ばかりでバタバタしてはいますが、納得できる映像になれば良いなと思ってスタッフ一同、頑張っています。
公開は2007年予定ですので、ご興味のある方は是非ご覧下さいね。
なんだか、今回は実写のお話が中心になりましたが、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)